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 それより遡るは二刻(一時間)ほど。

 いかなり息を切らして番屋へ現れたのは


「おいどうした、与太? 何、慌ててるんだ?」


 朝番の桜殿、突然の来訪者に目をパチクリさせている。


「さ、さ、桜の旦那! じ、実は、ご、ご……」


「ちょっとは落ち着かんかい」


 そこへ奥より姿を見せた菊やん、水の入った器を相手に渡し


「ほら与太さん、これでも飲んで」


「あ、こりゃどうも」

 礼を述べるや否や、グイッと飲み干し


「ご主人が、部屋で倒れていなさって!」



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