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第三十九話 与太の窓 一
その時、遠くより
「旦那あ! てーへんだあ!」
見向きもしない旦那、ガクリとうなだれ
「たまにゃ台詞くらい変えろっちゅうんや」
「では、私はこれで」
さっさと去りゆく冷奴さん。その背に
「見境なく、頼んまっせ!」
この男、心底お馬鹿である。
「何やねん、ったく」
これに喜助、辺りを見回し
「ちょいとばかしお耳を」
「どないしたっちゅねん」
「実は、ひそひそひそ……」
これに目の玉を左右に動かしつつ
「うんうん……う、嘘やろ?」
*再びカーター・ディクスン「ユダの窓」への、ほんの1%のオマージュ