二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

三十一

　思わぬ事のなり行きに、呆然と立ち尽くすお鈴。来た道をとぼとぼと引き返している。

　ちょうどその時、蕎麦を食って戻ってきた若き同心二人。この光景を目にし

「藤殿？　あの娘、何しに来たんだろう？」

「何だか深刻そうでしたね？　菊殿？」

　急いで中へと入った二人

「菖蒲様、今の娘って？」

　これに相手が、首筋を掻きながら

「いやね、鈴と名乗ったとたん、屋形船とか口に出してきてね。まったくもって意味不明だったんで追い返したわけ」