二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

三十

　やっとのことで出てきた同心だが、相手を一瞥し

「何だ小娘か……で、何用？」

　相手の高圧的態度に、そら怯む。

「す、鈴と申します」

「名を聞いてるんじゃなくって、用を聞いてるの！」

「あ、申し訳ございません。実は屋形船の件で参ったのですが……」

　だが、この男ときたら

「それなら舟屋にでも行きなさいよ。ここは番屋なのよ、ば・ん・や！」

　そう吐きながら寄ってきた同心、娘を力ずくで追い出し、おまけに戸まで閉めてしまった。