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第三十七話 消えた屋形船 一
ここはいつもの橋の上。二人して欄干にもたれかかっている……が、珍しくも夕暮れ時。
して、その視線の先には
「ホンマ、屋形船に乗りたかったわ」
「時節柄、致し方ないですねえ。満員御礼は」
「はあー」
深くため息をつく破近だったが、すぐに
「ほな、長月の初っ端でも押さえますわ」
これに冷奴姐さん、ニコリと
「そうしなされ。きっと同心さんらも喜びますよ」
「そうでんな。皆の喜ぶ顔が目に浮かび……って、何言うてまんねん!」
*西村京太郎「消えたタンカー」への、ほんの1%のオマージュ