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三十五

 着物を脱いで、早速風呂場へと足を踏み入れたお富さん。その肩に手拭を掛け、まさに威風堂々たるお姿。


「お? 貸切かいな」


 機嫌良く、ザブンと地獄温泉へと飛び込んだ鬼。手拭を頭の上に乗せ、鼻歌なんぞ歌っている――その時、離れたところにいる白き肌が目に入った。


「何や、先客がおったんかい」

 だが、どうも様子がおかしいので


「もしもし? 湯船の中、何をお探しで?」


 確かにその女、うつぶせのまま湯船の中を覗き込んでいる――


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