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第五話 タイルに死す 一
「さすがに師走となれば、日の落ちるのも早いですねえ」
いつもの橋のたもと。山へと吸い込まれそうなお天道様に目をやっている冷奴姐さん。
「ホンマやわ。にしても、今年一年いろんな事があったわ」
破近、川面に小石を放りながら
「お江戸までとんぼ返りし、おまけに与力にまでなってしもうた」
「そうですねえ……ん?」
相手を見やった姐さん、その視線の先に飛び込んできたのは
「旦那。走るのは、何も師ばかりじゃないようですよ」
*アガサ・クリスティ「ナイルに死す」への、ほんの1%のオマージュ