二百字掌編シリーズ 『青き目をした与力』

百十

「すでに仏がいないのに、何故に医者がしゃしゃり出てくる？」

「ああ、この吟味方に頼まれたからじゃ」

　ここでなりきっている姐さん、眉をひそめ

「頼まれただと？　何をだ？」

「畳に付いた赤い染みを調べてくれ、とな」

「あっはっは、これは傍ら痛いわ！　血に決まってるだろが！」

　だが疑似先生、首を左右に振り

「確かに、周辺はまぎれもない血じゃがな。真ん中辺りはのう、実は血ではなく紅花から抽出された赤なんじゃよ」

「何だと？」