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第二十一話 喜助よ欺かるるなかれ 一
ここはいつもの橋のたもと、今朝も一人たたずむ冷奴姐さん。
そこに、そっと近寄る――そっと、だ。やはり先日目の当たりにした酒乱ぶりが、男の足取りを重くしている様子。
「あら、旦那! おはようございます!」
いたってご本人さんは、こう明るく挨拶をしてきたものの
「お、おはようさんです」
早速噛んでしまった情けないやつ。
「どうされました? お元気ないみたいで?」
それに無理して繕い
「こ、このとおり、元気も元気でっせ!」
*カーター・ディクスン「読者よ欺かるるなかれ」への、ほんの1%のオマージュ