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四十六
そして夕刻、とうとう――
一つの棺桶の前には今、初老の男女が。
「お触書を目にし、よもやとは思いましたが」
そう申し出た男だが、一方の女は棺桶にすがりついて嗚咽するばかり。
「お名前、よろしいやろか?」
「はい。私は錦町にて骨董品屋を営む仁左衛門と申し、そしてこいつが」
亭主、傍らで泣き叫んでいる女を指し
「女房のお兼でございます」
その方を憐れんで見た吟味方
「さいでっか……で、今更なんやけんど、この仏はんって」
そして夕刻、とうとう――
一つの棺桶の前には今、初老の男女が。
「お触書を目にし、よもやとは思いましたが」
そう申し出た男だが、一方の女は棺桶にすがりついて嗚咽するばかり。
「お名前、よろしいやろか?」
「はい。私は錦町にて骨董品屋を営む仁左衛門と申し、そしてこいつが」
亭主、傍らで泣き叫んでいる女を指し
「女房のお兼でございます」
その方を憐れんで見た吟味方
「さいでっか……で、今更なんやけんど、この仏はんって」
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