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三十九

「ん?」

 聞きなれぬ挨拶を訝って、顔を上げた初老の男だが


「お、お役人様?」


「はいな! ちょっとばかしお信ちゃんにご挨拶を、って思いましたんや!」


 唐突に吐かれたこの言葉、ましてや名前まで出され、驚きを隠せない相手


「お、お信に? す、すでに仏と……」


 破近、これに掌を左右に振り


「うんにゃ、知ってて来てまんがな」


「ご、ご存知の上で?」

 男は首を捻るも、相手が相手だけに断れず


「で、では、どうぞ。汚くしておりますが」


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