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過労死デバッカーの異世界デバック学院無双 〜魔力0だけどバグさえ使えばなんとかなります!〜  作者: 甘い肉うどん
第一章 第一クール 伝説のデバッカー、転生する

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第六話 増殖バグ

おもしれえええええ

王立学院の学生寮。特待生であるアレンに与えられたのは、最上階にあるスイートルーム並みの広さを誇る一室だった。

 本来なら男子寮に女性を連れ込むことは厳禁だが、アレンが学院の入居管理システム(名簿データ)に侵入し、リーゼロッテの性別判定フラグを一時的に『不明』に書き換えたため、何の問題もなく同室が許可された。


「アレン様、見てください! このベッド、雲のようにふわふわです! 森で硬い地面に寝ていたのが、まるで前世の出来事のようです!」

「リーゼロッテ、前世があるのは俺の方だ。……まあ、拠点が安定するのはいいことだな。まずは生活基盤の最適化だ」


アレンは部屋の隅々を点検した。魔法の灯り、水道の魔導回路、冷暖房の術式。どれもアレンからすれば「最適化の余地(無駄な魔力消費)」だらけだったが、今のところは動作している。

 問題は食事だった。

 特待生には専用の食堂が用意されているが、そこへ向かったアレンとリーゼロッテを待っていたのは、見た目こそ豪華だが、味の概念が欠落したような「クソゲーの飯」だった。


「……なんだ、このパン。岩石のオブジェクトをテクスチャだけパンに張り替えたのか?」


アレンは目の前の白いパンを手に取り、テーブルに叩きつけた。カツン、と乾いた音が響く。

 隣でリーゼロッテが申し訳なさそうに、その固いパンを全力の筋力で噛み砕いている。バキッ、ボリッ、と、およそ食卓には相応しくない破壊音が鳴り響いた。


「アレン様、これはこれで、歯ごたえがあって……あ、奥歯が一本欠けました。でもすぐ生えるので大丈夫です」

「大丈夫じゃないだろ。……仕様がねぇな。飯のクオリティまで前時代的かよ。これ、アイテム増殖デュプリケーションでなんとかなるな」


アレンは鞄から、かつてロードライト伯爵家の厨房から「デバッグ用サンプル」としてくすねてきた、最高級の燻製肉と、旅の途中で見つけた伝説の果実を取り出した。

 彼はそれらをテーブルに置くと、精神を集中させた。

 アレンが行うのは、前世のバグゲーで多くのプレイヤーを熱狂させた伝説の裏技――「インベントリ同時操作によるアイテム分裂」の再現である。


「アイテムをカバンから取り出す瞬間に、別のスタック可能なオブジェクトと座標を重ね、一フレームだけ同時に『存在』させる……。これを物理的に再現する」


アレンの指が、光速に近い速度でパンと肉を交互に叩いた。

 カチカチカチ、と小刻みな音が響く。

 次の瞬間、ボフッという音と共に、テーブルの上が溢れんばかりの最高級食材で埋め尽くされた。それも、ただの食材ではない。アレンが「鮮度」パラメータを最大値で固定し、「味覚ブースト」のバフを直接書き込んだ特製料理だ。


「……えっ、アレン様。肉が……肉が分裂して増えています! パンも、今焼きたてのようにホカホカです!」

「アイテムの衝突判定を利用したデュプリケーションだ。一セットあれば、無限に増やせる。ほら、食べろ。好きなだけな」

「はい! 美味しい……美味しいですアレン様! 私、生きててよかったです!」


リーゼロッテが涙を流しながら肉にかぶりついていると、食堂の入り口から、こちらを恨めしそうに見つめる視線があった。

 シルヴィア・フォン・ベルシュタイン。試験の屈辱を晴らすためか、あるいはアレンの正体を見定めるためか、彼女はストーカーのように彼らの後を追ってきていたのだ。


「……な、何をしているのよ。学院の食堂で、勝手に食材を持ち込むなんて校則違反だわ」

「お、公爵令嬢。埋まってた時の泥は落ちたか? 校則違反って言われても、これは俺がその場で『生成』したものだからな。所有権は俺にある」

「生成……? そんな無茶苦茶な魔法があるはずないわ! それに何よ、その美味しそうな匂いは……」


シルヴィアの腹が、ぐぅ、と情けない音を立てた。

 アレンはニヤリと笑い、増殖させたばかりの黄金色のクロワッサンを一つ差し出した。


「食べるか? これ、特定のステータスが恒久的にプラスされるバグ……じゃなくて、隠し要素付きだぞ」

「だ、誰があなたの施しなんて! 私は公爵家の令嬢よ! こんな出所不明の食べ物なんて……」


五分後。

 シルヴィアはアレンの隣の席に座り、両手にパンと肉を持って、リスのように頬を膨らませていた。


「……んぐっ。美味しい……悔しいけど、家の専属シェフが作ったものより数倍美味しいわ……。ねえ、これ、どうやって作ったの? 魔力回路はどうなってるの?」

「教えないよ。これは俺だけの企業秘密(デバッグ権限)だからな」


アレンは、必死にパンを詰め込むシルヴィアと、笑顔で肉を噛みしめるリーゼロッテを眺めながら、自らもお茶を啜った。

 前世のデスマーチでは、コンビニの冷めた弁当が最高のご馳走だった。それに比べれば、この「バグ飯」生活は、まさに天国のようなバカンスだった。

 だが、アレンは知っている。この平和な「遊び場」の地下には、この世界の物理法則を司る不気味な巨大サーバーが眠っていることを。そして、そこへアクセスすることが、真のニート生活への第一歩であることを。

ブックマークこいやあああ

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