第二十五話 もう一人のデバッカー①
面白すぎるやろ!
アレンたちは王都の外れにある森へ向かっていた。依頼内容は“魔法異常の調査”。普通の冒険者なら警戒して慎重に進むところだが、アレンはむしろ楽しそうに歩いている。シルヴィアは呆れながらも、彼の横を歩いていた。
「ねぇアレン。あんた、ほんとにAランク依頼を初手でやる気?」
「当たり前だろ。魔法異常ってことは、バグがあるってことだ」
「その“バグ”って言い方やめなさいよ……」
リーゼロッテは微笑みながら後ろを歩く。
「アレン様は魔法の裏側が見えるのですから、むしろ適任です」
「だよな。俺にとってはただのデバッグ作業だし」
シルヴィアはため息をついた。
「……冒険者ってそういう仕事じゃないのよ」
森の奥へ進むにつれ、空気が変わっていく。普通の人にはただの“魔力の濃い場所”に感じられるが、アレンには違った。
「……おい、見えるか?」
「何がよ?」
「魔力の流れがぐちゃぐちゃだ。コードが絡まってる」
「コードって言うな!!」
アレンは立ち止まり、森の奥をじっと見つめた。
そこには、他の誰にも見えない“魔法の裏側”が広がっていた。
魔力の線がねじれ、色が反転し、構造式が破損している。
まさに“バグ”そのものだった。
「……これはひどいな。誰が触ったんだ?」
「触ったって……魔法が勝手に暴走しただけでしょ?」
「いや、これは自然発生じゃない。誰かが魔法をいじって失敗した痕跡だ」
シルヴィアが眉をひそめる。
「そんなことできる人、いるの?」
「俺以外に? まぁ、いないとは言い切れないな」
アレンは森の奥へと歩き出した。
その先に、魔力が渦を巻く“異常地点”があった。
「……あれか」
「な、なにあれ……魔力が……歪んでる……?」
リーゼロッテが静かに言う。
「魔法陣の残骸……いえ、構造式が崩壊しています。誰かが高度な魔法を試したのでしょうか」
アレンは近づき、指先で空間をなぞった。
その瞬間、魔力が暴走し、風が吹き荒れる。
「アレン!!」
「大丈夫だ。ちょっと触っただけだ」
アレンには、暴走の原因がはっきり見えていた。
魔法陣の“根本構造”が破損している。
まるで――誰かが裏側のコードをいじったように。
「……これ、俺と同じことができる奴がいるな」
シルヴィアが息を呑む。
「え……?」
「魔法の裏側を触れる奴。俺以外にもいる」
リーゼロッテが表情を引き締めた。
「アレン様。それはつまり――」
「そうだ。誰かがこの世界の魔法を“改造”してる」
アレンはゆっくりと立ち上がり、異常地点を見渡した。
「……面白くなってきたな」
シルヴィアが叫ぶ。
「面白くないわよ!!」
アレンは軽く笑い、いつもの調子で言った。
「いっちょデバッグ続けるか」
こうしてアレンは、初依頼で“自分と同じ能力を持つ存在”の痕跡を見つけた。
それは、世界の魔法体系を揺るがす巨大な事件の始まりだった。
評価してくれると幸いです!




