第二十二話 リモート
次回から新クールです!(はやくね!?)
アレンのリモート出席が始まって数時間。学院の魔導ネットワーク――つまり魔法体系そのものは、すでに限界ギリギリで悲鳴を上げていた。教室の時計魔法は逆回転し、廊下の照明魔法はランダムに点滅し、購買部のパン生成魔法は暴走して無限にパンが補充され続けている。原因はもちろんアレンの存在同期だが、生徒たちには“魔法暴走”としか認識されていない。アレンは隠れ家のソファで寝転びながら、ホログラム越しに学院を観察していた。
「ふむ……学院の魔法、処理落ちしてるな。魔力回線の帯域が狭すぎるんだよ」
シルヴィアが怒鳴る。
「当たり前でしょ! あなたのせいで学院中の魔法が暴走してるのよ!」
「俺は何もしてないぞ。存在してるだけだ」
「それが問題なのよ!!」
リーゼロッテが静かに言う。
「アレン様。学院の生徒たちが、あなたの魔力投影を見ようと集まっています。廊下が渋滞しています」
「なんでだよ。授業受けろよ」
「英雄を一目見たいのでしょう」
アレンはため息をついた。
「記憶改竄パッチのせいで、俺の顔を覚えてないくせにな……」
その時、教室の扉が勢いよく開いた。生徒会長のエレナ・フローレンスが現れる。金髪の美少女で、学院の象徴のような存在だ。
「アレン・ロードライト! あなたに正式な要請があります!」
「誰?」
「生徒会長のエレナ・フローレンスです!」
「知らん」
「知らんじゃないわよ!!」
エレナは机を叩き、アレンの投影に詰め寄る。魔力投影なのに、まるで本物に触れられるかのような勢いだ。
「あなたのせいで学院の魔法体系が崩壊寸前なの! 生徒会として放置できないわ!」
「いや、俺は何もしてないって。存在してるだけだって」
「その“存在”が致命的なのよ!!」
シルヴィアが口を挟む。
「エレナ、生徒会の魔法もバグってるの?」
「ええ! 生徒会室の書類魔法が全部“未定義”になってるのよ! 昨日の議事録なんて、文字化けして『フォーマットエラー』って出てきたわ!」
アレンは小さく笑った。
「へぇ、面白いな。学院の魔法体系、構造が古すぎるんだよ。ちょっと見てみるか」
「やめろ!!」
エレナとシルヴィアの叫びが重なるが、アレンは聞かない。指を弾くと、学院全体の魔法陣構造が空中に展開された。生徒たちには巨大な魔法陣が浮かんでいるように見える。
「うわああああ!!」「学院の魔法陣が空に浮いてる!!」「魔法体系ってこんなに複雑なの!?」
アレンは真顔で言う。
「……ひどいな。魔法陣の構成式が“a”“b”“c”しかない。誰が書いたんだよ、この魔法」
エレナが震える声で答える。
「……初代学院長です」
「古代文明かよ」
アレンは魔法陣をスクロールしながら呟く。
「このままだと学院全体がクラッシュするな。仕方ねぇ、軽く最適化してやるよ」
「やめろって言ってるでしょ!!」
だがアレンは聞かず、魔法陣に指を触れた。瞬間、学院全体に“ピッ”という音が響き、照明魔法が安定し、時計魔法が正常に戻り、黒板の文字魔法が整列する。
「直った……?」「すごい……」「魔力の流れが軽くなった……!」
エレナは呆然とアレンを見つめた。
その瞳には、恐怖でも怒りでもなく――
ほんの少しだけ、興味と、ときめきが混じっていた。
「……あなた、本当に何者なの?」
アレンは笑った。
「ただのバグ遊び好きだよ」
その瞬間、エレナの頬がわずかに赤く染まった。
シルヴィアがそれを見逃すはずもない。
「……ちょっとエレナ。今、顔赤くなってない?」
「な、なってないわよ!!」
「ふーん……?」
アレンは気づいていない。
だがこの日、学院の魔法体系だけでなく――
恋愛フラグまで、アレンのせいで暴走し始めた。
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