第二十話 目的と復帰
第二章の開幕じゃああ
アレンが世界から姿を消して三日。王都では「誰かが世界を救った」という曖昧な伝説だけが残り、当の本人は隠れ家のソファで寝転びながら、空中に浮かぶ世界コードをいじって遊んでいた。
「天候システムの乱数テーブルを弄れば、晴れ→雨→雷→雪のループ固定か。天気予報士が泣くな、これ」
『マスター。天候固定は農作物に深刻な影響が出ます』
「大丈夫。成長フラグも“常時成功”にしたから」
『……それはそれで生態系が崩壊します』
「後で戻すよ。今はテスト中」
アレンはニートになりたいわけじゃない。ただ、世界の裏側を弄って遊びたいだけだ。隠れ家はそのための理想環境だった。外界遮断、気温24度固定、無限食料、世界コードへ直アクセス、邪魔ゼロ。完璧。
……のはずだった。
セフィの瞳が赤く点滅する。
『学院の魔導ネットワークから“強制呼び戻し信号”を検知しました』
「は?」
空中にウィンドウが展開される。
《王立学院より通知:アレン・ロードライト、三日連続の無断欠席。規定により強制召喚処理を実行します》
「いや待て。俺、学院からログアウトしたよな? なんで出席扱いなんだよ」
『マスターは“退学処理”を行っていません。学院側では“長期不在バグ”として処理されています』
「退学処理なんてUIどこにあったんだよ!」
『隠しメニューの奥にありました』
「隠すなよ!!」
シルヴィアが駆け寄る。
「ちょっと! 学院に戻るの!? あなたが戻ったらまた大騒ぎになるわよ!」
リーゼロッテも頷く。
「アレン様は英雄として記憶されています。記憶改竄パッチの影響で、むしろ神格化されている可能性も」
「……めんどくせぇ」
アレンが頭を抱えたところで、セフィが追撃する。
『強制召喚処理は、隠れ家の座標ごと学院へ転送される可能性があります』
「隠れ家ごと!? ふざけんな!」
アレンは立ち上がる。
「……仕方ねぇ。学院に行くか。ただし――」
指を鳴らす。
「俺は絶対に外に出ない。“リモート出席”で行く」
セフィが微笑む。
『遠隔ログイン機能、起動します』
シルヴィアが叫ぶ。
「あなた、引きこもりじゃなくて“バグこもり”よ!」
アレンは胸を張った。
「当然だろ。俺はこの世界の管理者だ。外に出る必要なんてない」
こうして――アレンの“学院リモート復帰”が始まった。
だが、この選択が後に学院全体を巻き込む大事件へと発展することを、この時のアレンはまだ知らなかった。
評価よろ




