第二話 出会い
第二話です!アニメかあああああ
迷いの森。そこは、世界の座標データが不自然に重なり合い、物理演算が常に致命的なエラーを吐き出し続けている場所だった。
少女、リーゼロッテは、その森の深部で静かに死を待っていた。かつては教会の聖女候補として「神の加護」を期待された彼女だったが、ある日を境に「呪い」が発現した。魔物を倒し、祈りを捧げ、善行を積むほどに、彼女の生命力は削られ、筋力は衰え、蓄えた魔力は霧散していく。
教会は彼女を「悪魔に魅入られた失敗作」と断じ、この歪んだ森へと廃棄した。
「……あぁ、私はここで、消えてしまうのですね」
薄れゆく意識の中、彼女は自分の終わりを悟っていた。
だが、その視界に、ひどく場違いな男が入り込んできた。ロードライト伯爵家を追放されたばかりの男、アレンである。彼は倒れている彼女の顔を覗き込むなり、感心したように、あるいは呆れたように呟いた。
「なんだこれ。ひどいな。ソースコードがスパゲッティ状態じゃないか。よくこれで今まで動いてたな」
リーゼロッテには、彼が何を言っているのか全く理解できなかった。
アレンの視点では、彼女のステータス画面は真っ赤なエラー警告で埋め尽くされていた。特に致命的なのは、経験値取得のロジックだ。
[Event: On_Enemy_Killed]
[Action: Status_Point -= 10]
「……敵を倒すとステータスがマイナスされる。なるほど、符号の入力ミスか。開発者は寝ぼけてキーを叩いてたのか?」
アレンは迷うことなく、彼女の胸元に手をかざした。
実際には彼女の肌に触れているわけではない。彼は彼女の存在を定義しているデータの根源に、デバッカーとしての指先を沈めていた。
アレンが空中で指を弾くと、空間に不可視のキーボードが現れる。彼は前世で何億回と繰り返してきた、神速のタイピングで修正パッチを打ち込んでいく。
「まずはここをプラスに書き換え。ついでに、今までマイナスされ続けてきた数値を符号反転させて蓄積分を一気に反映。さらに、この森の座標ズレを利用して、周囲の魔力を強制的に吸い込む無限ループ関数を……よし。ビルド開始」
エンターキーを叩く音が、静かな森に響いたような気がした。
その瞬間、リーゼロッテの体が、目を開けていられないほどの黄金の光に包まれた。
「え……っ、あああああ!?」
リーゼロッテは絶叫した。体中を駆け巡る、暴力的とも言えるほどの巨大なエネルギー。
今まで彼女を苦しめていた重い脱力感が一瞬で消え去り、代わりに血管が破裂せんばかりの魔力が充填されていく。
アレンのデバッグウィンドウでは、彼女のレベルが恐ろしい勢いでカウントアップされていた。一、十、百、五百……そして、三十二ビットの限界値でカウンターストップが起きる。
「……あ、やりすぎた。まあ、死ぬよりはマシだろ」
光が収まった時、そこには別人のように生気に満ち溢れたリーゼロッテが立っていた。
彼女が驚き、自分の掌を見つめると、指先から漏れ出たわずかな魔力が、背後の巨大な岩を跡形もなく消し飛ばした。
「な、なんですか、これ……。体が、軽い……いえ、軽すぎて、地面を踏むだけで土が爆発します……!」
「あー、それね。ステータスがカンストしてるから。慣れるまで、あまり力を入れないほうがいいよ。世界の方が壊れるから」
アレンは当然のように言い放つ。
リーゼロッテは混乱した。自分を呪いから救い、神にすら等しい力を一瞬で授けたこの男は、一体何者なのか。
「あ、あの……あなたは、神様なのですか?」
「いいや。ただのデバッカー。……今は無職だけどね。さて、リーゼロッテ。君、これから暇? 俺、これから王立学院に行くんだけど、護衛兼、デバッグの協力者として付いてきてくれないか?」
リーゼロッテは、アレンの言葉の半分も理解できなかった。
しかし、目の前の男が自分を地獄から救い出したことだけは確かだった。彼女は深く頭を下げ、騎士のような礼を取った。
「この命、アレン様に捧げます。あなたが世界の理を壊すと言うのなら、私はあなたの剣となり、その道を阻む全てを薙ぎ払いましょう」
「いや、そんな物騒なことはしなくていいから。俺が遊んでる時に横で敵を散らしてくれればいい。……じゃあ、行こうか。試験開始まで、あと数時間しかないしね」
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