第十七話 決闘祭④
少し短いけど許してクレメンス
もう一方の準決勝では、シルヴィアが他校の猛者と対峙していた。
相手はレムリア騎士学院の筆頭、魔法騎士団の次期団長と目される男。彼は「鉄壁のガルダー」の異名を持ち、金剛石以上の硬度を持つ多重防壁魔法を何重にも展開する。
シルヴィアは公爵令嬢としてのプライドをかけ、正攻法の魔導で挑んでいたが、相手の圧倒的な防御力を突破できず、徐々に魔力を削られ苦戦を強いられていた。
「無駄だ、ベルシュタイン令嬢! 私の防御は、この世界のあらゆる攻撃魔法を無効化するよう設計されている! 君の優雅な魔法では、傷一つ付けられん!」
シルヴィアは膝をつき、肩で息をする。視界の端で、アレンが観客席からあくびをしながら自分を見ているのがわかった。
その瞬間、彼女の脳内にアレンの声が直接響いた。
「(シルヴィア、真面目に戦うのはやめろ。魔法を『撃って壊す』なんて、非効率な手順を踏むな。……『壊れた後の結果』だけを、メモリに直接書き込め)」
「(結果だけ……? 何を言っているのアレン。魔法は手順があってこそ……)」
「(いいか。この世界はプログラムだ。あいつの盾が硬いのは、盾に『硬度:無限』というフラグが立っているからだ。だったら、そのフラグごと、座標を『虚無』で上書きしてやれ。物理演算の裏側を突くんだ)」
シルヴィアは立ち上がった。彼女は杖を捨て、ゆっくりと拳を構える。周囲からは「公爵令嬢が自暴自棄になったか?」と動揺の声が上がる。
「……わかったわ。アレン、あなたのめちゃくちゃな理屈、信じてあげる」
シルヴィアは目を閉じ、目の前の「盾」を見るのではなく、その奥にある「座標」を意識した。アレンから教わった、世界の構造を見る方法――デバッカーの視点だ。
「ベルシュタイン流、デバッグ魔法――『座標重複』!」
彼女が放ったのは、魔力の弾丸ではない。相手の防壁魔法が展開されている座標に、自分の拳という「別の物質」を強引に強制割り込み(インタラプト)させる一撃だった。同一の座標に、二つの異なる物質が存在する。これは物理演算エンジンにとって「致命的な矛盾」である。
――ドォォォォォン!!
最強と言われた鉄壁の防壁が、ガラスが粉々に砕け散るような異音と共に消失した。それどころか、余波を受けた騎士の鎧が「表裏逆」に再構成されるという恐ろしい描画バグが発生。中身の騎士は無傷だったが、物理的に着られない形になった鎧に締め付けられ、「ぎゃあああ! 私の鎧が! 私のプライドが逆転している!」と叫びながら気絶した。
「……できた。私、ついに世界の理を『無視』したわ!」
歓喜して万歳するシルヴィア。観客席のアレンは、隣で驚愕している公爵を見ながら、「あーあ、清楚な公爵令嬢が完全にバグ使いの共犯者になっちゃった。お父様にあとで消されるのは俺かな……」と遠い目をした。
評価してねえええ




