第十話 侵入
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王立学院の地下深部。そこは、建国以来、歴代の国王や学園長ですら立ち入りを禁じられた、完全なる「未定義領域」だった。
アレンは図書館の最深部、埃を被った古文書の影に、不自然にテクスチャがズレている壁を見つけた。
「やっぱりな。ここ、マップの接続部分に隙間がある。いわゆる『壁抜け(ノークリップ)』ポイントだ。普通なら何重もの結界で守るんだろうけど、物理的に壁が『存在しない』判定になってる場所には、魔法なんてかけられないからな」
アレンは躊躇なくその壁に頭を突っ込んだ。
リーゼロッテもそれに続く。
壁の向こう側――そこには、学院の石造りの趣とは一切異なる、無機質な「データセンター」のような空間が広がっていた。
果てしなく続く白い通路。壁一面に浮かび上がる、青白く発光する魔導文字の羅列。
それは、この世界の重力、魔力、生命、死、全ての法則を記述している膨大なソースコードだった。通路の奥からは、心臓の鼓動のような巨大な電子音が聞こえてくる。
「ここが、世界の心臓部(魔導核)。……へぇ、思ったよりモダンな作りじゃないか。魔力を動力源にした生体演算機か」
アレンがそのソースコードの一行に触れようとした、その時。
ギュオォォォォォン!!
空間が突如として深紅に染まり、けたたましい警報音が通路中に鳴り響いた。
『――異常個体を検知。未登録ユーザーによる管理者領域への不正アクセス。』
『プロトコル二〇二に基づき、脅威の排除を開始します。』
通路の奥から、光の粒子が凝縮し、一体の騎士が姿を現した。
その騎士は、人間とは明らかに異なる幾何学的な紋様の鎧を纏い、顔の部分には十字形のバイザーが光っている。右手に持った大剣は、存在自体が空間を削り取るような異様な波動を放っていた。
アレンの目に、騎士のステータスが展開される。
Target: [System_Protector_Alpha]
Level: [N/A] (Infinite)
Trait: [Administrative_Control]
State: [Invincible]
「……おっと。世界のガードプログラムか。前世で言うところの、ゲーム内監視員(GM)みたいなもんだな。レベル表記なしの無敵属性かよ、趣味が悪いな」
「アレン様、お下がりください。……この無機質な気配、気に入りません。私が粉砕します」
リーゼロッテが一歩前に出る。彼女の全身から、地面を溶解させるほどの魔圧が立ち上る。
だが、運営騎士の声は、無慈悲に宣告した。
『不具合個体アレン・ロードライト。および、不整合個体リーゼロッテ。……貴殿らの存在そのものを、一括パッチ適用により消去する。』
騎士が剣を振るった瞬間、アレンたちの立っていた足場の「当たり判定」が消失した。
奈落へと落ちていく感覚。だが、アレンは落下しながらも、不敵に笑って空中に仮想キーボードを展開した。
「ハッ、面白い。運営直々の修正パッチかよ! だがな、神さん。俺はデバッカーだ。あんたの作ったセキュリティなんて、穴だらけなんだよ!」
アレンの指が、光速を超えてコマンドを打ち込み始める。
遊びの時間は終わりだ。
ここからは、最強のデバッカーによる、世界という名のシステムの「管理者権限」を奪い取る、真の戦いが幕を開ける。
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