表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/104

第七十八話 お出かけ計画


「ねぇねぇ、今度の土曜日、みんなでお出かけしない!?」


ある日の午後。

皆が食事を終えて雑談している最中、ウキウキ顔でそう提案したのは、和花だった。


彼女の座っているテーブルは六人掛け。

和花の隣には、その親友である琴音と、ヤンキー少女の美香が座っている。

そして、琴音の隣にはギャルの七海が、美香の隣には最近“転入”してきたリブが並んでいた。


ちなみに、テーブルの空いている場所には、【幻想】で姿を隠したルーナもいる。

このテーブルの中で彼女の存在が見えていないのは七海だけなので、周囲は少し気を遣う。

なお、リブは当初、七海の前でも普通にルーナに話しかけていたので、今では七海に不思議ちゃんだと認識されていた。

……まぁ、リブが天然気味なのは事実なのだが。


「お出かけって……結構唐突だね?」


和花の提案を聞いて、琴音が少し怪訝そうな顔でそう返した。


「うん! この学校でもお友達が増えてきたし、みんなともっと仲良くなりたいなって!」


「そう。いいと思うよ」


にっこり笑う和花に、琴音のクールな表情が緩む。

まぁ、琴音は和花がいればなんでも良いので、彼女と一緒なら海にでも山にでも一緒に行くだろうが。


「おー、いーじゃん! いこーよ!」


予想以上に乗り気な反応を見せたのは、ギャルの七海だった。

ウェーブのかかった明るい茶髪を揺らしながら、弾んだ声で反応する。


「七海ちゃんなら、そう言ってくれると思ってたよ! 行こうね!」


「ねー!」


和花の言葉に、七海が嬉しそうな笑みを浮かべる。


「……お出かけ? 美味しいものを食べられるなら行く」


リブも(ほぼ食い気によるものだろうが)外出には肯定的な様子だ。


「うーん……行きてえのは山々(やまやま)なんだけどよ……」


意外にも乗り気でない様子を見せたのは、ヤンキー少女の美香だった。

彼女は当初、皆に対して刺々しい態度をとっていたが、和花と友達になってから、かなり丸くなっていた。

まだ他のクラスメートには遠巻きに見られているが、和花とは、今ではすっかり仲良しだ。


そんな美香なら来てくれるだろうと思っていた和花は、少し悲しそうな表情で聞き返す。


「……お出かけ、嫌だった?」


「ちょっ、別に嫌じゃねーよ!」


和花にダダ甘の琴音が、彼女を悲しませた美香のことをギロリと睨む。

それを見た美香が、慌てた表情で弁明した。


「今度の土曜日は、みぃの面倒を見てやらなきゃいけないんだ。その日はお袋がいねえからよ」


「みぃって誰?」


説明する美香に対して、きょとんとした顔でリブが聞き返す。


「美香ちゃんの妹さんだよ。3歳くらいかな。すっごく可愛いの」


和花は面識があるし、ちょくちょく会いに行っているが、リブは美奈(みぃ)のことを知らない。

これまで話す機会もなかったし、休日のリブはルーナと過ごすことが多いので、紹介するタイミングもなかった。


ちなみに、琴音と七海は美奈のことを知っている。

会ったことは無いが、和花が美香とちょくちょく外出するので、事情だけは聞いていたのだった。


「ふーん……ミカ、妹いたんだ」


「まぁな」


なぜか感心した様子で美香の顔を見つめるリブ。

美香は少しだけ自慢気に、大きな胸を張った。


「そっか……美奈ちゃんとの予定が先にあるなら、仕方ないよね……」


和花が、しょんぼりと肩を落とす。

その悲しそうな様子を見かねた琴音が、ぼそっと呟いた。


「……じゃあ、妹さんも一緒に来ればいいんじゃない?」


「……それだ! グッドアイデアだよ、琴音!」


途端に、パァッと顔を輝かせる和花。

そのまま和花は、美香に詰め寄った。


「ねぇねぇ、美香ちゃん! 美奈ちゃんも一緒に行こうよ! それならいいでしょ!?」


「お……おう。みぃのやつも、きっと喜ぶと思うけどよ……」


「……? どうかしたの?」


「いや、白石とリブはともかく、東海林(しょうじ)はそれでいいのかと思ってよ」


美香は、少しだけ言い淀むと、チラリと七海に視線をやった。

友だち同士の外出に一番乗り気だったのは、七海である。

そんな場所に妹を連れて行ってもいいのだろうか……と、美香は気にしているのだった。


七海に皆の視線が一斉に集まるが、当の本人は全く気にしていないようだ。


「桐生院、気にしすぎ。別にウチは気にしないし。……その妹ちゃん、アンタみたいにクソガキじゃ無いんでしょ? じゃあ別にいーよ」


「みぃは良い子だぜ! ……って、誰がクソガキだコラァ!」


「ちょっ、美香ちゃん、落ち着いて!」


七海に向かって吠える美香を、慌てて和花が宥める。

そんな和花の反応をよそに、七海は言葉を続けた。


「だって最初に会った頃の桐生院ってば、けっこー酷かったよねー?」


「まぁ、確かに酷かったね」


七海の返事に、琴音も大きく頷く。

リブも「へぇ、そうなんだ」と漏らし、ルーナも『確かにね……』と小声で呟いた。


実際、美香とのファーストコンタクトは酷いものだった。

何せ、和花たちが談笑しているところを、いきなり怒鳴りつけたのが美香である。


今でこそ和花のことを友だち(マブダチ)だと認識しているし、同じ魔法少女である琴音やリブ、そしてルーナのことも、大事な仲間と思っている。(七海のこともまぁ……嫌ってはいない)

しかし、それ以前の美香は荒んでいて、家族以外の全てを敵視しているような状態だった。

そう考えれば、今のこの関係は、奇跡的なものなのかもしれない。


「チッ! ……まぁ、みぃのことを連れて行ってくれるなら、アタシも行くぜ。みぃも和花が一緒なら喜ぶだろ」


大きく舌打ちをする美香。

彼女は機嫌を損ねつつも、和花のお出かけ計画に同意した。


「ありがと、美香ちゃん!」


「……ふん」


満面の笑みを浮かべる和花を見て、美香が照れくさそうにそっぽを向いた。

その様子を横目に、琴音が話を進める。


「……それで、どこに行く? 桐生院の家から近い方がいいよね」


「ああん? 別にどこでもいいだろ」


何も考えていないのが明白な美香の返答に、琴音は呆れたような視線を向けた。


「あのねぇ……妹さんはまだ3歳なんでしょ? あんまり連れ回したら可哀想でしょうが」


「ああ……まぁ、確かにな……」


正論で返されて、美香がポリポリと頭を掻いた。

美奈は活発な子なので、美香はあまり行き先を気にしていなかったのだが……。

琴音の言っていることも尤もだと思い直したらしい。


「美奈ちゃんは、どこか行きたがってるところとかあるの?」


和花の言葉に、美香はうーんと考え込む。

色々と大きい彼女が腕を組むと、Gカップの胸が殊更に強調される。

それを見たリブが、「おお……」と小さく感嘆の声を上げた。


やがて美香は、何かを思いついたのか、ポンと手を打った。


「そういえば……水族館に行きたいとか言ってたな。浅草スカイタワーの」


その言葉に、思わず和花と琴音は顔を見合わせた。

姿を隠蔽していたルーナもぴくりと身体を動かし、それを見たリブが微かに首を傾げる。


浅草スカイタワー。

それは、和花が初めて公衆の面前で魔法少女として戦った場所だ。

そして同時に、琴音がマギア・ローズの正体が和花だと知った場所でもある。

ある意味、今の和花たちのスタート地点とも言える。


「……何でスカイタワー? 水族館ならどこでもよくねー?」


七海が首を傾げると、美香が口ごもりながら返答した。

その際、美香がチラリと和花のことを見たので、和花も首を傾げることになった。


「ああ……。みぃはマギア・ローズの大ファンなんだよ。あそこは最初にマギア・ローズが怪人と戦った場所だろ? だからずっと行きたがってたんだ」


和花は慌てて動揺を飲み込んだ。

ポーカーフェイスの苦手な彼女であったが、幸い、動揺したことは七海にバレていないようだ。

まぁ、琴音にはバレバレだったが。


「あーね! あそこがマギア・ローズのデビュー戦だったもんねー!」


魔法少女のことに詳しいといえば、七海もそうである。

隠れファンである彼女もまた、魔法少女が最初に戦った場所であるスカイタワーのことは、きちんと把握していた。


「いーじゃん! スカイタワー水族館に行こーよ! ウチも行ったことないし! ね、みんなもいいっしょ?」


七海がキラキラした目を和花たちに向けてくる。


「い、いいと思うよ!」


「……いいんじゃない? 私も行ったことないし」


スカイタワーには少し特殊な思い出があるとはいえ、二人とも特に文句があるわけではない。

和花も琴音も(少し困惑しつつも)七海の提案に頷いた。


当時の琴音は、魔獣兵に襲われた後遺症で車椅子だった。

そのため、混みやすい水族館は候補から外していたので、二人ともスカイタワーの水族館には行っていないのだ。


「すいぞくかん? 行ったことない」


どうやらリブも、行ったことはなさそうだ。

というよりも、そもそも水族館がどんな場所かも分かっていない様子である。


そんなリブの様子に、七海が不思議そうな表情を浮かべる。


「リブちゃん、水族館に行ったことないんだ? リブちゃんの国にはなかったのー?」


「うん、なかった。……その“すいぞくかん”には、何がある?」


「キレイなお魚がいっぱいいるところだよー」


「なら良いところ。魚は美味しいから好き」


「……いや、そーゆーところじゃないから。水族館は」


リブの天然発言に、七海はやや引き攣った表情を向ける。

彼女を水族館に連れて行ってもいいか、不安に感じ始めたのだろう。


「と、とりあえず行き先は決まったね! それじゃ、細かい予定を決めよ?」


慌てて和花が取りなす。

それと同時に授業5分前のチャイムが鳴ったので、ひとまずリブの天然発言は流された。



「詳細は、放課後にでも決めよっか」


「分かった!」


「りょーかーい」


「おう!」


「うん」


琴音の言葉に、言葉を返しながら、一同は慌ててお皿を片付けて教室へと急ぐのだった。


***


「ふふーん♪ ふんふふんーん♪」


「なんだぁ? バカに機嫌がいいじゃねぇか、和花」


寮の自室で鼻歌を歌っていた和花は、ルームメイトの美香にツッコまれた。

和花は、キラキラした目を美香に向ける。


「だって、みんなでお出かけだよ? みんな集まっての外出は、中々できないし!」


「あー、まぁな」


「美奈ちゃんも来てくれるって言うし、きっと楽しいよ!」


「おう。みぃも喜ぶぜ。……えっと、その……アリガトな」


歯切れ悪くお礼の言葉を口にする美香に、和花がきょとんとした顔を向ける。


「え、何が?」


「いや……ほら、アタシのことも誘ってくれたろ? だから……」


今回の外出計画は、本来なら美香は参加できないはずだった。

そこを、「妹と一緒に」と誘ってくれたのは、他ならない和花である。


「……? だって、美香ちゃんも友だちだもん!」


「……チッ、相変わらずお人よしなやつ」


にこにこ笑う和花を見て、忌々しそうな表情で舌打ちする美香。

言動は荒っぽくても、その口元がニヤけている辺り、彼女が喜んでいることは明白だった。


「ふふっ! きっと楽しい1日になるよ!」


そんなふうに目を輝かせる和花。

しかし、このお出かけが新たな波乱の幕開けになることを、彼女はまだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ