第七十三話 僕は新メンバーを祝福したい
「せっせっせーの、よいよいよい!」
僕は踊り狂いながら、自室の中を駆け回った。
嬉しい、楽しい、大四喜!
全くたまらないね!
これだよこれ、これを待ってたんだよ!
僕が何に狂喜乱舞してるかって?
もちろん、新たな戦乙女の誕生イベントさ!
マギア・ローズとマギア・リリィ。
友達同士だから相性もいいし、二人組ユニットも面白いかもと思ったけど……。
やっぱり、魔法少女はチームじゃなくちゃね。
そう思って、新メンバーを追加することに決めたんだけど、これが大正解だった。
桐生院 美香と、オリヴィア・ユースティティア。
どっちも個性的だし、チームが一層華やかになった気がするよ。
もちろん、新メンバーは僕が推せる子じゃなくちゃダメだ。
可愛くなきゃイヤだし、いい子じゃなきゃもっとイヤだ。
だってさ、考えてもみてごらんよ。
新しいメンバーがゴミクズみたいな子だったらどうすんの?
せっかく和花ちゃんと琴音ちゃんがてぇてぇ雰囲気なのにさ。
それをブチ壊すような子が加入したら、もうオシマイダー……!
だから、新加入メンバーは、それなりにちゃんとした子じゃなきゃいけない。
また候補者を探すため、魔獣兵を駆り出す羽目になる……。
……かと思いきや、そうはならなかった。
和花ちゃんと言う主人公を探し当てる過程で、その候補となるような子も見つけていたのよね。
僕ってば流石! ベリーグッド僕!
まぁ、主人公としては基準を満たしてない子たちなんだけどね。
チームメイトとしてなら悪くないだろう。
でも、ここである障害が立ち塞がった。
単純に、距離の問題である。
どう言うことかって?
和花ちゃんは、僕が全国的に実施したヒロイン選抜テストの合格者だ。
その過程で何人か面白そうな子を発見したわけだけど、その場所がバラバラだったんだよね……。
つまり、チームメイト候補者たちが、日本のあちこちに散らばってしまってるんだ。
まぁ、これは仕方ない。
和花ちゃんの周りにだけ面白い子が集まるわけじゃないし。
個人的には、魔法少女たちは同じ学校に在籍していて欲しかった。
欲を言えば同じ学年が望ましいし、同じクラスだと、なお良し。
なんでかって言うと、同じクラスなら、同じイベントを最大限に共有できるからである。
例えば学園祭とか、社会見学とか、修学旅行とかさ。
もちろん、チームメイトが別の学校でも、それなりに面白いとは思う。
「他校に遊びに行く」みたいなイベントも、それはそれで美味しい。
でもさ。
魔法少女たちの日常生活、これも見逃せないよね?
むしろ、平凡な日常とシリアスなバトル、この行ったり来たりが醍醐味だよね?
さっきまでクラスで駄弁ってた子たちが、数秒後にはヒロインとして悪と戦ってる、この緩急がたまらないよね?
まぁそんなわけで、新しいメンバーは、和花ちゃんや琴音ちゃんと同じクラスから出したかった。
でも、彼女たちのクラスメートは、なんていうか……平凡だったんだよね。
和花ちゃんみたいにステータスを「善」に振ってる子とか、琴音ちゃんみたいに重い過去を持ちつつも親友ポジションについてる子とか、そう言う子がいなかったのである。
もっと言えば、僕がそそられない子たちばっかりだったんだ。
ここまできて、妥協はしたくない。
かと言って、全国から和花ちゃんの学級に編入させまくるわけにも行かない。
あまりに不自然すぎるし、全国に候補者が何人いると思ってるんだい?
候補者たちを和花ちゃんと同い学級にしたい、でも彼女たちは全国に散らばってる。
さぁ。どうしよう?
そこで僕の考え出した解決策は……「みんなを同じ学校に集めてしまう」。
考えてみれば、候補者として僕が見込んだ子たちは、どの子も魔獣兵の襲撃を生き残った子たち。
つまり、一度はリ・ヴァースに狙われた子たち、と言うことでもある。
と言うことは、政府がこの子たちを一か所に集めて保護しても不思議じゃないよね?
そんなわけで、僕は日本政府に働きかけ、候補者たちを一つの学校に集めることにした。
こうなれば、色々な地域から魔法少女の資質を持つ子たちが、同じクラスに所属することになる。
わざわざ和花ちゃんと琴音ちゃんを転校させたのは、新たな仲間に出会えるようにという、僕のありがたーい配慮だったわけだね。
そうして出会った最初の仲間、それが桐生院 美香だった。
……いや、ぶったまげたよね。
美香ちゃんは、身長170cm強のヤンキー少女だ。
そんな子が和花ちゃんと仲良くなって、しかも魔法少女になるって?
そんなのあり得んだろ、って思ってたら……。
まさか、この子が新メンバーになるとはね。
当初、美香ちゃんは所謂「イロモノ枠」のつもりだったんだ。
不良が魔法少女だったら面白いかな、くらいのつもりで。
そしたら和花ちゃん、仲良くなっちゃうんだもんな……。
あの子の善良さというか、人懐っこさというか。
そういう資質を、ちょっと甘くみていたかも。
こうして美香ちゃんは、マギア・デイジーとしてチームに加わることになった。
結論から言うと、彼女が入って大正解。
なんというか、ペアがトリオになるってだけで、バランスが良くなるもんだね。
しかも、とっつきにくいキャラかと思えば、意外にもイジられ属性もあって、それもまたいい。
琴音ちゃんとは意外にも相性が悪くなくて、時折、面白い掛け合いもしてくれる。
チームがぐーんと明るくなった気がするよ。
そして、オリヴィアちゃん。
この子の加入イベントには、かなり労力をかけた。
そのおかげで、所謂「光堕ちイベント」を生で見ることができた。
ブラボー!
いや、ここまで漕ぎ着けるまでに、マジで苦労した。
いや、マジで。
最初はちょっとした思いつきだったんだよね。
敵の幹部に、人の心を残した美少女戦士がいたら面白いかなって思ったんだ。
それで、ライト・ヴァースから子供たちを誘拐してきた。
そうして奴隷として管理しながら、将来、いい感じのキャラに育ちそうな子を探したわけ。
過酷な訓練や、魔導十姫としての血生臭い任務を実行できる子をね。
やっとオリヴィアちゃんを見出した時は、嬉しかったなぁ……。
IQや身体能力、そして意思の強さやストレス耐性、それら全てをクリアしたのが、オリヴィアちゃんだった。
外見はちょっと平凡だけど、まぁそれもまた良し。
これで見つからなかったら、危うく、さらってきた子達を全て廃棄しなくてはならないところだった。
そうなってたら、ルーナちゃんがリ・ヴァースを裏切るタイミングが早まってしまうかもしれなかったので、そこは運が良かったかな。
で、魔導十姫のサヘラちゃんに働きかけて、ルーナちゃんの下にいるオリヴィアちゃんを素体に人体実験させた。
人間を魔族に変える実験や、人間に魔術機構を刻み込む実験だ。
で、それは成功した。
サヘラちゃんは自分の力で成し遂げたと思って喜んでだけど、実際はほとんど僕の手腕だね。
あの子に任せてたら、数日も保たずにオリヴィアちゃんは死んでただろう。
つまり、僕はオリヴィアちゃんの命の恩人ってわけ。
しかもサヘラちゃんってば、真っ先にオリヴィアちゃんの肉体を人型じゃない怪物にしようとするんだもん。
それは困る。マジで困る。
人の心を残した悪の女幹部、って設定なのに。これじゃ悲しきモンスターになっちまう。
ありとあらゆる手を尽くして、オリヴィアちゃんを人の形を保ったまま改造するように仕向けたよ。
その甲斐あって、彼女は無事、人狼に生まれ変わった。
いや、マジで良かった。将来的に魔法少女になるんだから、パッと見でも人間じゃないと困るのである。
ルヴィアちゃんみたいに、ツノだの尻尾だの翼だのがあったら目立ってしょうがない。
人狼なら平時は人間そのものだし、魔法少女になっても違和感がないよね。
で、そっからも調整が大変だった。
サヘラちゃんが折角の実験台を自分から手放すわけないから、道化師の姿で接触して説得したり、それっぽい【神託】を魔皇に降させたり。
そんなこんなで、オリヴィアちゃんを魔導十姫の座につけることに成功したのだった。
いやーマジで骨が折れたね。
実力は伴ってるんだけど、なかなかどうして元人間っていうハンデが大きかった。
そして何より、上手いこと敵役をさせて、かつ上手いこと光堕ちさせないといけない。
どうしたもんか悩んだけど、幸いオリヴィアちゃんは、ルーナちゃんに依存してる。
それを利用しようと考えたわけだね。
でも、ルーナちゃんにあんまり早い段階で正体が「リブ」だとバレちゃうと、機が熟す前に離脱される恐れもあった。
そこで、サディストのサヘラちゃんを利用した。
オリヴィアちゃんとルーナちゃんとの接触を禁止させたり、「ルーナちゃんの顔を見たら人狼に変身する」っていうトリガーを仕込ませたり。
思惑通り、オリヴィアちゃんは仮面をつけて、ルーナちゃんにバレないように動いてくれた。
んで、タイミングを見計らって、ルーナちゃんに裏切らせた。
このタイミングも難しかった。
あまり早く離脱してしまうと和花ちゃんと出会わないし、遅すぎると和花ちゃんがお婆さんになってしまう。
この辺りは、我ながらうまく調整できたと自負している。
まぁ、ルーナちゃんが離脱すれば、そのうちオリヴィアちゃんも裏切るだろうと、そう思っていた。
ただ、これも結構、手間取った。
僕はオリヴィアちゃんが、もっと早くルーナちゃんのために動き出すかと思っていたんだ。
だって「死の呪い」だよ?
いち早く解除に動くと思ってたんだよね。
でも、思ったよりも、サヘラちゃんや【魔導四妃】への恐怖心があったみたい。
正直、そこは誤算だったよ。
そこで、無理やりオリヴィアちゃんをけしかけることにした。
オリヴィアちゃんに、「あの子は長く保たない」って言って焦らせたり。
「仮死状態にすれば死の呪いは解ける」とかテキトー言って焚き付けたり。
解呪アイテムを持つモルガナちゃんの研究室の鍵をくすねて手渡したり。
ほんと、色々やった。
モルガナちゃんに捕まって操り人形にされてたけど、そこも計画通り。
和花ちゃんに解呪させて、ルーナちゃんとも和解する機会を作らせた。
人懐っこくて善良な和花ちゃんの性格もあって、オリヴィアちゃんは上手いこと馴染んでくれた。
で、最後にトドメ。
ルヴィアちゃんを使って、襲撃させた。
なんのためかっていうと、もちろん光堕ちイベントのためである。
強敵をぶつけて、ルーナちゃんを守るために魔法少女として覚醒!
いやーたまらんですな。
ルヴィアちゃんにも助演女優賞をあげたいくらい。
まぁ、本人は真面目に任務に取り組んだだけなんだけど。
……よく考えたらルヴィアちゃんも可哀想だよね。
結構強いのに、当て馬というか、かませ犬というか、そういうポジションにつけられちゃったんだもん。
ライバル枠として作り出した子だけど、正直、貧乏くじだよね。
取り敢えず、ここまで計画はある程度は順調に運んでいる。
今の所、魔法少女は四人。
七人ユニットを予定しているから、あと三人だ。
なんとなく候補は決めてあるけど、それも今後の展開次第。
面白くなりそうだ。
僕は次の計画に取り掛かり始めた……。




