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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第七十二話 新たな仲間

ルヴィアの放った真紅の斬撃と、オリヴィアの放った翡翠の剣戟。

その二つが正面からぶつかり合い……強烈なスパークと共に、二人が吹き飛ばされる。


やがて、周囲を覆い隠していた白煙が晴れていく。


そこに……よろよろと立ち上がる影が、一つ。


オリヴィアだった。

とはいえ、余裕があるというわけではない。

むしろ立っているのがやっと、という有様だ。

少なくとも、これ以上の戦闘には耐えられないだろう。


一方、ルヴィアは。

荒く息を吐きながら、コンクリートの上に横たわっていた。


肩口から脇腹まで斜めに切創が入っており、そこから真っ赤な血がとめどなく溢れ出している。

オリヴィアの斬撃に競り負け、正面から切り裂かれたのだ。


ただし、その傷跡は、それほど深くない。

ある程度は、ルヴィア自身の攻撃で相殺できていたのだろう。

それに、悪魔族は身体機能にも優れている。

この程度の傷なら、二週間もすれば全快するはずだ。


ヒューヒューと息を吐きながら、ルヴィアは呻いた。


「クソ……ッ! クソが……ッ! 許さんぞ、裏切り者めが……ッ!」


口汚くオリヴィアを罵っているが、既に立つことすらままならない有様だ。

やがてルヴィアは、射殺さんばかりにオリヴィアを睨みつけた。


「ちくしょう……覚えていろッ! ……転移指輪(ワープリング)よ、私を運べ……ッ!」


憤死するのではないか、という剣幕で、ルヴィアは指輪に命ずる。

直後、彼女の姿は跡形もなく消え去っていた。


「……勝った」


そう呟いたオリヴィアが、ガシャンという音を立てながら、力なく横たわった。

その手からこぼれ落ちた刀……ザ・ジャスティスが、オリヴィアの身体に吸い込まれるようにして消えていく。


(勝ったけど……ルーナを……ローズを助けなきゃ……)


しばらく(もが)いていたオリヴィア。

しかし、やがて凄まじい虚脱感に襲われた。


そして彼女は、その意識を暗黒に落としていくのだった。



***



「……アさん! オリヴィアさん!」


「……んっ。ーーッ!?」


耳元で呼ぶ声に意識を覚醒させられたオリヴィアは、慌てて飛び起きた。

すると、ごちん!という鈍い音と共に、額に激痛が走る。


「ーーアイタ!」


「……痛い」


オリヴィアの目の前で、額を抑えて呻いているのは……。

マギア・ローズ、和花の姿だった。


「……あれ。なんでいるの。……というか、あの後、私は……ッ!?」


直後、オリヴィアの脳裏に先ほどの記憶が蘇った。

炎上する渋谷。ルヴィアとの死闘。そして……天導衞姫への覚醒。


慌てて周囲を見渡すが、そこは渋谷の交差点ではなく、先ほどまでいた和花の寮の部屋だった。

時計を見ると、時刻は21時30分と言ったところ。

近くには、琴音(リリィ)美香(デイジー)も立っており、心配そうにオリヴィアを見下ろしている。


一瞬、あれは夢だったのでは?と考えたオリヴィアだったが、手の甲に刻まれた白い紋章……聖痕(スティグマ)が、これは現実だと訴えかけてくる。


「……そっか。勝ったんだ」


しみじみとつぶやくオリヴィア。

彼女は、ルヴィアに勝ったのはギリギリだったということを、きちんと理解していた。

ルヴィアは強い。

降格させられて現在は序列八位だが、かつてはヴェリエスの更にその上、第七席に君臨していた人物なのだ。

激しやすい性格をついて、上手く短期決戦に誘導できたから良いものを、持久戦に持ち込まれていたら危険だった。それこそ、薄氷の上を渡るかのような勝利だったのだ。


「そうだよ! 勝ったんだよ、オリヴィアさん! さっきの技もすごかった!」


「……見てたの?」


オリヴィアが和花の方をチラリと見る。

和花は、ちょっと恥ずかしそうに笑った。


「うん。オリヴィアさんがルヴィアさんと戦ってる時の音で、途中から目が覚めたんだ。

 しばらく、動けなかったけど……」


「……そうだったんだ。……ルーナは? ルーナは無事なの?」


オリヴィアがそう尋ねると、彼女の枕元で返事がした。


「安心しなさい。私は無事よ」


慌ててオリヴィアが視線を向けると、そこには五体満足のルーナがいた。

ルヴィアの焔で焼かれた怪我も、すっかり治っている。


和花と会話していたので気づかなかったが、ずっと側にいたらしい。

オリヴィアは、そのポーカーフェイスを少し潤ませると、ぎゅっとルーナに抱きついた。


「ーールーナ!!」


「むぎゅーっ!? も、もう! リブ! 苦しいわ!」


ガバッとルーナに抱きついたオリヴィア。

一時は、もう会えないかもしれない、と思っていただけに、再開できて嬉しかったらしい。

ルーナも形だけ嫌がっているが、おそらく照れくさいだけだろう。

その証拠に、彼女も本気で抜け出そうとはしていないようだ。


その様子を少し羨ましそうに見つめていた和花に、オリヴィアが話しかけた。


「和花が起きてたってことは……もう、みんな知ってるんだね」


「……なんのこと?」


目をパチクリさせる和花に、不思議そうな表情でオリヴィアが言葉を続ける。


「私が、天導衞姫……新たな魔法少女に目覚めたってこと」


オリヴィアがそう言うと……。


「えっ」


「はぁ!? そうなのか!?」


「ええっ、そうなの!?」


琴音、美嘉、そしてルーナまでもが驚きを露わにする。

彼女たちの反応を見て、オリヴィアが首を傾げた。


「……言ってないの?」


「えーっと、そのぉ……うん。実は、みんなを回復するのに夢中で……えへへ」


照れくさそうに、カリカリと頭をかく和花。

一瞬だけ呆れたオリヴィアであったが、直後に考えを改める。


重傷だった和花(ローズ)やルーナはもちろん、琴音(リリィ)美香(デイジー)もルヴィアに吹き飛ばされていたから、それなりの怪我を負っていたはずだ。

それを、この短時間で完治させるには、それなりの時間と、集中力が必要だったに違いない。

オリヴィアの説明などしている場合ではなかったのだろう。


そう考えたオリヴィアは、驚いている三人に向けて、簡単に説明した。


「……取り敢えず、そういうこと。

 もう魔導戦姫としての力は失ったけど、

 ルヴィアとの戦いで、私は天導衞姫の力に目覚めた。

 ……今後は、一緒に戦う」


オリヴィアの言葉を聞いて、ルーナがパアッと顔を輝かせる。


「頼もしいわ、リブ!」


嬉しそうなルーナに向けて、オリヴィアも薄く微笑んだ。


「……うん。私も嬉しい。また一緒に過ごせるなんて、夢みたい」


和花も嬉しそうだ。

にこにこ笑いながら、オリヴィアに話しかける。


「よろしくね、オリヴィアさん!」


「……水臭い。私のことはリブでいい」


「わかったよ、リブ! 実は、前からそう呼んでみたかったんだ!」


少し照れくさそうに、オリヴィア……リブがそう言った。

途端に和花は顔を輝かせながら、彼女のことを愛称で呼んでみせた。

この人当たりの良さは、間違いなく和花の美点の一つだろう。


「よろしくね、リブ」


「おう! よろしく頼むぜ、リブ!」


琴音と美香も、リブのことを愛称で呼んだ。

それは、かつて敵対していた相手に対する、好意と信頼の表れだろう。


敵として出会ったとは言え、もとより、リブはルーナの友人である。

それに、短い期間ではあるが、彼女と話して何となく人となりも分かってきている。

そんな人物に対して、いつまでも敵対的な態度を取るほど、二人とも頑迷ではなかった。


「それじゃ、どうする?」


「……どうするって?」


わくわくした表情で問いかける和花。

彼女の唐突な質問に、リブが小首を傾げる。


「決まってるじゃん! リブも魔法少女になったんだから、名前が必要でしょ!」


「……なるほど」


オリヴィアはちょっと困惑気味だが、何とか頷いた。

この話題の流れでそうなるとは、彼女も思っていなかったのである。


実は早速仲良くなろうと和花が気を回しているのだが、リブはそれに気づいていなかった。


「じゃあ、アイデアを募集します!」


「おう! マギア・スーパードラゴンってのは……」


「美香ちゃん、却下!」


和花が腰に手を当てて、ビシッ!と却下する。


「何でだよ……」


ぶつくさ言う美香をスルーして、今度は琴音が挙手した。


「……というか、リブが変身する魔法少女のメインカラーは何色なの?」


「えっと……速すぎてよく見えてなかったんだけど、確か緑色だったと思う」


「和花の言うとおり。私のドレスは緑色だった」


自信なさ気な和花に対して、リブが回答した。

それを聞いた琴音が、少し思案してから提案する。


「緑色か……。じゃあマギア・ミントっていうのはどう?」


「おー! さすが琴音! ……リブ、ミントはどう? 好き?」


「ミントは好きじゃない。勝手に花壇で増える、臭い葉っぱ。あとスースーする」


リブの言葉に、琴音が苦笑する。

と言っても、本気で苦々しく思っているわけではない。

むしろ、リブの自然な一面を見て、好ましく思っていた。


「他に、花壇に生えてる緑の草なんてあったかしら……。クローバーはどう?」


ルーナの言葉に、今度は和花が苦笑した。


「別に花壇に生えてなくてもいいんだけど……。クローバーも可愛いね」


「ルーナが言うなら、それでいい」


コクリと頷くリブを見て、提案したルーナ自身が、呆れた表情を浮かべる。


「リブったら……本当にそれでいいの? もっとよく考えてみて。好きな花とかないの?」


ルーナの言葉に、素直に考え込むリブ。

やがて彼女は、ポツリと呟いた。


「……コスモス」


四人の視線を受けて、少したじろいだリブだったが、ポツポツと話し始めた。


「……花壇で思い出した。

 家の裏庭に、たくさん咲いてたの。

 昔、家族で住んでいたお家に……。

 お父さんが種を買ってきて、お母さんがお世話してたっけ。

 ……ふと、それを思い出したの」


和花は、琴音や美香、ルーナと顔を見合わせた。


「……いいと思う。すごく可愛いし」


「いいんじゃない? スーパードラゴンよりマシでしょ」


「おい! アタシのセンスに文句つける気かよ!」


「私もいいと思うわ!」


四人からも(おおむね)良い反応が得られた。

それを見たリブは、エメラルドのような目を瞑ると、ゆっくりと考え込む。

そして、覚悟を決めたように口を開いた。


「……決めた。

 マギア・コスモス。

 それが、私の新しい名前」


リブがそう言うと、四人が頷いた。

彼女たちの表情は、新たな仲間が増えることへの喜びに満ちていた。


マギア・コスモス。

魔導十姫の元メンバーという異色の経歴をもつ、四人目の戦乙女(ヒロイン)


こうして、魔法少女たちはまた一つピンチを乗り越えて、新たな仲間を得たのだった。


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