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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第七十一話 四人目のヒロイン


「……バカなッ! 貴様、なぜそれを持っている!?」


姫装神機(トランス・デック)】と呼ばれるそれは、リ・ヴァースの秘宝。

かつて魔導十姫だったオリヴィアも、一時は持っていたものだ。

しかし、モルガナに捕まった際に取り上げられている。

その情報は、ルヴィアにオリヴィア捕縛の任務が与えられた時点で共有されていた。


だから、()()がこの場にあるはずがないのだ。

ルヴィアの叫びはそれを指摘したものだったが、対するオリヴィアは平然としている。

この【姫装神機(トランス・デック)】は、最初から自分のものであったかのように、彼女の手に馴染んでいた。


「わからない。でも……今は、都合がいい」


オリヴィアは、【姫装神機(トランス・デック)】を腰に押し当てた。

緑の光が収束して、彼女の腰の周りをぐるりと取り囲む。

数秒後、そこには美しいベルトが出現していた。


「……《機構(システム)認識(リーディング)》」


オリヴィアが呟く。

それに合わせて、【姫装神機トランス・デック】が激しく発光した。

周囲を漂う緑色のエネルギーも、それに呼応するように明滅した。


いつの間にかオリヴィアの手に握られていたのは、銀灰色のメタルカード。

彼女は、そのカードを前へとかざした。


「……《光 よ(ライト・アップ)》」


オリヴィアの言葉に従うように、緑のエネルギーが一気に活性化した。

腰の【姫装神機(トランス・デック)】も、手にしたメタルカードも……。

それに合わせて、無骨な銀灰色から、鮮やかなエメラルドグリーンへと変色していく。


鮮やかな緑色になったメタルカードの表面。

そこには、オリヴィアの手の甲に出現していた新たな聖痕(スティグマ)と同じ、白い天秤の紋章が刻み込まれている。


「……《魔素(マギ・マテリアル)収束(パイル)》」


オリヴィアの周囲で渦を巻いていた、緑色の粒子。

それが、次々に彼女の身体へと集まってくる。


「……《装束(バトルドレス)展開(スプレッド)》」


収束した光の粒が、オリヴィアの身体を柔らかく包んでいく。


そして……。


「……《変 身(トランス・カード)》」


美香がエメラルドグリーンの美しいカードを、腰のバックルに装填した。

カシュン!! という軽やかな金属音と共に、激しくベルトが発光する。


闇夜を照らす鮮やかな緑の光。

やがてそれは、オリヴィアの身体にまとわり付くようにして具現化し始めた。


絹のような柔らかな光沢と、メタリックな輝きを放つバトルドレス。

そして、頑丈そうながらも無骨さのない、軽やかな全身の装甲。

それら全てが、透き通るような、美しい緑色に染まっている。


美しいエメラルドグリーンの瞳は、一層鮮やかに輝く。

モルガナによって短く切り落とされていた髪が、一気に元の長さまで伸びていった。

緑色のシュシュが伸びた髪を美しく結い上げていき、その耳元ではきらりとイヤリングが光る。


彼女の変身は、瞬きをする間もなく完了していた。

鮮やかなグリーンの光が瞬き、オリヴィアの身体を明るく照らす。


顕現するのは、天導衞姫。

和花(ローズ)琴音(リリィ)、そして美香(デイジー)

彼女たちに続く、四人目の戦乙女(ヒロイン)だ。



「バ……バカな……!」


呆然と変身の様子を見守っていたルヴィアは、ようやく声を絞り出した。

目の前で起こったのは、ありえない現象だった。


魔を導く戦姫であるはずのオリヴィアが、人類の守護者たる天導衞姫に変身したのだ。

これは、彼女の常識から言っても、信じがたい状況だった。


ルヴィアは、オリヴィアが元は人間だったことを知らない。

だから、純然たる魔族がライト・ヴァースの衛士になったのだと、そう思っているのだ。


それは、ルヴィアの常識に反する存在だった。

彼女の信じるもの、それら全てを否定する存在だった。


「……ッ! バカな! バカなバカなバカな! あり得ん! こんなこと、あってはならない!」


ルヴィアはひどく動揺していた。

だからこそ、彼女はオリヴィアの動きに反応できなかった。


一陣の風。


それをルヴィアが知覚できた頃には、彼女は空高く舞い上がっていた。


(ーーッ!? なんだ、これは……ッ!?)


動揺するルヴィア。

ビリビリと顎が痛むことから、おそらく空中に蹴り上げられたのであろうことは理解できる。


ただ、()()()()()()

ルヴィアは悪魔族だ。魔術だけでなく、高い身体能力も兼ね備えている。


そんな彼女が、反応すら許されなかった。

そんなオリヴィアの超速度に、ルヴィアは動揺を隠せない。


慌てて翼をはためかせて、空中で体勢を整えようとする。

しかし、やはりオリヴィアの方が早かった。


一瞬でルヴィアの前まで飛び上がってきたオリヴィアが、空中でグルンと身体を前転させ、彼女に目掛けて全力の踵落とし(ヒールドロップ)を叩き込む。


今度は、なんとかルヴィアにも反応できた。

軍刀を盾のように構えて、オリヴィアの蹴りをブロックしようとする。


しかし、オリヴィアの脚に触れた途端。

バチッ! っという音と共に、軍刀は弾かれてしまった。

無防備になったルヴィアの頭部に、オリヴィアの追撃が叩きつけられる。


脳天から蹴り落とされたルヴィアは、思い切りコンクリートに叩きつけられた。


「ーーがッ……!?」


交差点が大きく陥没し、砕け散った粉塵がもうもうと舞い上がる。


(ーー速いッ! 転移か!? いや……違う、これは……ッ!)


そう、これは転移ではなかった。

その証拠に、攻撃の刹那、ルヴィアは相手の動きに伴う風の流れを感じていた。

転移魔法なら、移動に際して空気が動くことはあり得ない。


つまり、目に追えないほどの速度で移動しているのだ。

しかし、そんな超スピードで動けたのは、かつての第七席、ヴェリエスくらいのものだろう。


この超スピードには、別の術式が関係している。

そう推察したルヴィアは、オリヴィアの動きを見逃すまいと、身体中の意識を集中した。


ヒュボッ! という空気を切り裂く音と共に、再びオリヴィアがルヴィアの目の前に出現する。

その時ルヴィアは、立ち込めていた粉塵が、オリヴィアの身体に沿って動くのを視認した。

まるで竜巻で舞い上がる砂塵のように、オリヴィアの身体の周囲を粉塵が回転している。


(……これは……疾風術式か!)


疾風術式。

それは、空気を操作して風を作り出す魔法だ。


空気は作り出す必要がない。

そんなことをしなくても、そこらじゅうに溢れているからだ。

焔や氷のように魔力で生み出す必要がないため、非常にコスパのよい術式なのである。

それだけに疾風術式は、リ・ヴァースでも比較的メジャーな魔法だと言えた。


しかし、オリヴィアの場合は、やや特殊な使い方をしているようだ。


大抵の場合、疾風魔法は空気の弾丸や鎌鼬(カマイタチ)を引き起こして相手にぶつける、という使い方をするものだ。

しかしオリヴィアは、()()()()()疾風魔法を使用している。


分かりやすく言えば、彼女は今、風の鎧を身につけているのだ。

理屈で言えば、ルヴィアの紅炎纏衣(スカーレット・クロス)と同系統の術式である。


ルヴィアの軍刀が弾かれたのも、オリヴィアを包む暴風の鎧が、剣戟を自動的に防御したからだ。

高速で移動しているのも、全身に纏わせた風を操作して、身体ごと動かしているため。

それにより、鎌鼬を繰るのと同じ速度での高速移動を可能としているのである。


それだけでなく、四肢に暴風を纏うことで、打撃の威力も上がっている。

今やオリヴィアの戦闘能力は、魔導十姫だった頃よりも向上していた。


(……見破ったぞ! しかし……)


ボッ! という風切り音と共に、再びルヴィアの身体が吹き飛ばされる。

今度は翼を使って制動をかけることに成功したが、分が悪い勝負であることには違いない。


確かにルヴィアは、オリヴィアの術理を見抜くことに成功した。

しかし、それと彼女の攻撃に対応できるかどうかは、また別の問題だ。


(ーーくそッ! 魔術を使う隙がない! 獄炎(インフェルノ)さえ撃てれば、こんな奴……!)


「……魔術さえ撃てれば、って思ってる?」


「ーーッ」


内心を言い当てられ、ルヴィアは微かに動揺した。

しかし、それに構うことなく、オリヴィアは言葉を続ける。


「……いいよ、撃っても。撃たせてあげる」


「なんだと……ッ!? 貴様ァ! 舐めるのも大概にしろ!」


額に青筋を浮かべて激昂するルヴィア。

しかし、オリヴィアは平然としている。


「後悔しても……知らんぞッ!」


そういうが速いが、ルヴィアはありったけの魔力を焔に変換し始めた。

彼女が構えた軍刀に、膨大な火炎の魔力が練り込まれていく。


(……勝負に乗ってくれて良かった。この魔法、もう保ちそうにないし)


オリヴィアが相手を挑発したのには、理由があった。

彼女の風の鎧……旋風鎧装(サイクロン・アムド)は、短期戦向きの魔法。

具体的な使用制限は、せいぜい数分間といったところだろう。


だからこそ……この一撃で決める。


オリヴィアは、天秤を模した自身の刻印(タトゥー)を、そっと指でなぞった。

それに合わせて、聖痕(スティグマ)から緑の光が溢れ出してくる。


やがて輝く緑光は収縮し、一つの武器を形作っていく。


(……やっぱり、私の武器はこれでなくちゃ)


それは、一振りの刀だった。

鞘は無いが、その他の形状は、いわゆる日本刀とほぼ同一だ。

鮮やかな緑色に輝くそれは、どんなものでも両断できそうなほどに鋭利な光を放っていた。


かつて彼女が魔皇から与えられた銘である【刀】。

この刀は、その名を体現するかのような一振りだった。

ただし、そこにかつての妖刀のような悍ましさは皆無。

その刀身はどこまでも透き通り、見惚れるような美しさを宿している。


「……聖衛刀:ザ・ジャスティス」


オリヴィアは、その刀を腰溜めに構えた。

そして彼女も、残る魔力を集結させて、手にした刀に注ぎ込んでいく。



ルヴィアの軍刀が、真紅に赤熱し、毒々しく輝いている。

あまりの熱にゆらゆらと空気が揺らめき、ルヴィア自身の手からも煙が上がっていた。


「喰らえ、裏切り者! ーー大獄炎斬撃ヘル・インフェルノ・ブラスト!!」


ルヴィアがそう叫ぶのと同時。

彼女の軍刀から、灼熱の斬撃が放たれた。


闇夜を昼間のように真紅に染め上げた斬撃を、オリヴィアが正面から見据える。


彼女は、居合のような格好で構えていた緑の刀(ザ・ジャスティス)を、全力で振り抜いた。


「……翠の飄風による斬撃エメラルド・ハリケーン・スラッシュ


ザ・ジャスティスから放たれた、翡翠色の斬撃。

空気を……否、空間そのものを切り裂くようにして飛んだ剣戟が、ルヴィアの紅い斬撃と激突した。


直後、凄まじい衝撃波が周囲に吹き荒れた。

紅と緑の光がぶつかり合い、互いを喰らい尽くさんと、正面からぶつかり合う。


数秒の拮抗の(のち)


カッ! という光が炸裂する。

数秒後、オリヴィアとルヴィアは、互いに弾き飛ばされた。

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