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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第五十五話 タイムリミット


「大丈夫かな、ルーナ……」


和花が心配そうに、ベッドでうなされているルーナを見守る。

ベッドの傍には、琴音と美香もいた。


琴音は、そのクールな表情に焦りを滲ませながら、和花に返事をした。


「……分からない。これがただの風邪なのか、魔族特有の症状なのかさえ、私たちには……」


「病院に連れて行けばいいんじゃね?」


シンプルなアイデアを提案する美香のことを、琴音が軽く睨む。


「ばか。医者になんて説明するわけ?」


「そりゃあ……確かにそうだけどよ……」


琴音の反駁に、大人しく引き下がる美香。

彼女に代わって、今度は和花が言葉を紡いだ。


「じゃあ、お薬は? 解熱剤とか……」


和花の言葉に、琴音は首を振った。


「……それもどうかな。見た目はネコだけど、ルーナは魔族なんだよ。この世界の薬が、どう影響するか……」


「そっか……」


しょんぼりと肩を落とす和花。

その肩を、琴音がそっと抱き寄せた。


その時だった。


「うう……」


「ーーっ!? ルーナ!? 目が覚めたの!?」


ルーナに縋り付く和花。

そんな彼女に向けて、まだぼんやりとした様子のルーナが尋ねる。


「何が、起こったの……?」


「ルーナ、突然倒れちゃったんだよ! 心配したんだから!」


「そう……」


どこか上の空の様子のルーナ。

そんな彼女を見て、和花が眉をハの字にした。


「……どうしたの? 具合悪い?」


「……ううん。もう大丈夫よ。心配かけたわね」


「……そう? 大丈夫なら、いいんだけど……」


和花に代わって、今度は琴音が質問する。


「ルーナ、原因は何か分かる?」


「……別に大丈夫よ。ほっといて」


どこかつっけんどんなルーナの返事を聞いて、美香が口を尖らせた。


「おいおい、そりゃねーだろ? こっちは心配して……」


「桐生院、ちょっと黙って」


「ああ? なんだよ白石、お前まで……」


琴音に遮られた美香が、少しだけムッとした顔をする。

しかし、琴音はそれに頓着せず、真剣な表情でルーナを見つめた。


「……それで? 結局、何が原因なの?」


「別に、なんでも……」


「言って」


彼女の目には、韜晦も誤魔化しも許さないと言わんばかりの、鋭い光が宿っている。


琴音に問われたルーナは、しばらく沈黙を貫いていたが、やがて、諦めたような表情で微笑んだ。

それは、どこか自虐的で、儚げな笑みだった。


「……簡単よ。タイムリミットが来たの」


「タイムリミット……?」


ルーナは、淡々と言葉を続けた。


「ええ、そうよ。……私はね、もうすぐ死ぬの」



***



「死ぬ……!? 死ぬってどういうこと!?」


絶句する琴音と美香を押しのけるようにして、和花は叫んだ。

その目には、すでに大粒の涙が浮かんでいる。


そんな彼女の様子とは対照的に、ルーナは冷静だった。

彼女の表情は、冷たく、そして乾いていた。


「そのままの意味よ。……別に驚くことないでしょう? 生き物は必ず死ぬんだから」


何の感情も感じさせないルーナの言葉に、美香が激昂した。


「そうじゃねーだろ! ワケを話せって言ってんだよ!」


そんな彼女のことを、無機質な目で見上げるルーナ。

それを見て、ますます頭に血を上らせた美香が、ルーナに詰め寄ろうとする。


しかし、それを遮ったのは、琴音だった。


「ルーナ。説明して」


その声は、喧嘩慣れしている美香でさえビクッとするほどの圧を含んでいた。


しばらく睨み合う琴音とルーナ。

やがて、先に視線を外したのは、ルーナの方だった。


「……いいわ。説明してあげる。別に大した話でもないし」


ネコの身体で、そっと肩をすくめて見せるルーナ。


「前も説明したと思うけど、私は脱走兵よ」


「それは知ってる」


琴音が続きを促すと、ルーナは語り始めた。


「リ・ヴァースを脱出するときに、設備を壊したり、いくつか物を失敬したりしたの。【姫装神機(トランス・デック)】も、その一つ。これはリ・ヴァースの幹部クラスの中でも、限られた人物した触れられない秘宝なの」


「ちょっと待って」


「……何かしら?」


ルーナが問い返す。

その様子は、いかにも話したくなさそうだった。


琴音は、有無を言わさぬ口調でルーナを問いただした。


「幹部クラスにしか触れられないって言ったよね。……なんでルーナが、そんなものに触れられるの?」


「…………」


ルーナは黙ったままだった。

和花が決まり悪そうに琴音の顔を見上げたが、彼女は顔色を変えなかった。


「この際だから、まとめて話して。ルーナ、貴女は何者なの?」


「……分かったわ」


ルーナは、諦めたようにため息をついた。


「私は、ルーナ・ハイランダー。元は、魔導十姫の末席……第十席よ」


「ええっ!?」


「マジかよ!?」


和花と美香が驚いて声を上げるが、琴音は黙ったままだった。

実のところ琴音は、ルーナがリ・ヴァースでそれなりに高い地位にいたことに気付いていた。


琴音も、既に何度か、リ・ヴァースから送り込まれてきた怪人達と交戦している。

大抵は知能が低く、無軌道に暴れるだけの相手だった。


それに比べて、ルーナは理性的だし、人間と比較しても遜色ない高い知性を持っている。

そんな彼女が、単なる雑兵クラスの脱走兵だとは思えなかった。


それに、ルーナはリ・ヴァースから逃げてこの世界に来たと言っている。

琴音は交戦したことはないが、ルヴィアという強敵が追手だったという。

ルヴィアの戦闘力は分からないが、ヴェリエスと肩を並べるレベルの敵だろう。

そんなレベルの相手が送り込まれるということは、ルーナもそれに準ずるレベルということになる。



ルーナはそんな三人を見上げながら、言葉を続けた。


「元は、この世界(ライト・ヴァース)で捕らえた捕虜の管理・教育を担当していたわ。……軽蔑したかしら?」


「そんなことない!」


和花は、ルーナの手を取った。

ルーナは慌てて手を引っ込めようとするが、逆に和花はぎゅっと強く握りしめる。


「どんな過去があったって、ルーナはルーナだもん! 私たちの、大事なお友だちだよ!」


「そうだね。ルーナは友だち」


「あったりめーよ! ルーナはアタシ達のダチだぜ!」


和花の言葉に続くように、琴音と美香も言葉を重ねた。


「……バカね。本当に」


ルーナはぷいと顔を背けた。

その目には、うっすらと涙が光っている。


ルーナは、少し息を吐くと、再び話し始めた。


「……話を戻すわね。【姫装神機(トランス・デック)】の保管庫に侵入することには成功したのだけど、部屋にセキュリティーがかかっていたの。私も、まんまとアラートに引っかかったわ。それで、そこへ駆けつけてきた二人の魔導十姫と交戦する羽目に陥ったの」


「二人だって!? よく無事だったな……」


美香が驚いたように声を上げる。

声には出さなかったが、和花と琴音も驚いていた。

ルヴィアやオリヴィアと交戦した和花も、ヴェリエスと死闘を演じた琴音も、その脅威についてはよく分かっていたからだ。


「【魔導四妃】クラスまで来ていたら不味かったわね。でも、逃げ出すだけならなんとかなったわ」


「【魔導四妃】?」


疑問の声を上げた和花に、ルーナが目をむける。


「ああ……話していなかったかしら? 魔導十姫の上には、さらに四人の上位者がいるの。権力も戦闘能力も、魔導十姫よりずっと上よ」


「そうだったんだ……」


「……話を続けるわね」


言葉を失った和花を横目に、ルーナは続けた。


「戦った二人の魔導十姫のうち一人は、魔導妖姫:レイナ・ジーン。

 妖魔の中でもトップクラスの実力を持った、序列三位の魔導戦姫よ。

 コイツにかけられた呪いが、〈畜生道〉。 

 早い話が獣化の呪いね。私がこんな姿なのも、そのせいよ。

 ステータスが大幅にダウンして、使える術式に制限が掛かるわ。

 ……だけど、こっちは大した問題じゃないの」


ルーナは、大きく息を吸った。


「……私の交戦したもう一人が、魔導毒姫:モルガナ・スカルフォン。

 悪魔族の中でも特にサディスティックな性格で、序列は二位。

 そして、この女から掛けられた呪いが、〈(モルス)〉。


 ……文字通り、死の呪いよ」



「死の呪い……」


呆然とした様子でつぶやく和花。

その姿をどこか気の毒そうに眺めながら、ルーナは話を続けた。


「そ。至って単純よね。効果も単純で、掛けられた対象を死に至らしめる効果があるの」


「それじゃあ……どうすることもできねーのか?」


美香が顔を強張らせながら尋ねる。

それに対して、ルーナは答えた。


「そうよ。一人しか対象にできないけど、確実に相手を呪殺できるの。私が死ぬまで、この呪いは解けないわ」


それを聞いて、とうとう和花はワッと泣き出した。

そんな彼女のことを宥めながら、琴音が尋ねる。


「……呪いを解く方法はないの?」


解呪(かいじゅ)の方法は、たった一つよ」


「あるんだね!? ルーナの呪いを解く方法!」


期待に顔を輝かせる和花。

それとは対照的に、琴音の顔は暗い。

琴音は嫌な予感を飲み下すようにして、ルーナに尋ねた。


「……それは?」


「簡単よ。術者を殺すの」


それを聞いて、美香は少しだけ表情を和らげた。


「じゃあ、そのモルガナってやつを倒しゃいいんだろ?」


しかし、ルーナは頭を振った。


「そう簡単じゃないわ。暴力一辺倒だったヴェリエスとは違うのよ。

 あいつ(モルガナ)の実力は本物だわ。

 このメンバー全員でかかっても、苦戦するでしょうね。

 ……それに、あいつは用心深いわ。

 少なくとも、私が死ぬまでは、表に出てくることはないでしょうね」


「そんな……!」


息を呑む和花に対して、ルーナは笑いかけた。


「安心しなさい。今すぐに死ぬワケじゃないから。

 まだ数ヶ月は猶予があるはずよ。

 ただし、これから、今日みたいな発作が何度か起きるわ。

 次に倒れたら、また目覚める保証はないけどね」


「嫌……そんなの嫌だよ! せっかく、ルーナとお友達になれたのに……!」


ベッドに突っ伏して泣きじゃくる和花の頭を、ポンポンとルーナが肉球で撫でた。


「……泣かないで。私は、貴女たちと出会えて幸せだったわ」


優しいルーナの声に、ますます和花の泣き声は大きくなった。

そんな和花のことを、困ったような、しかし少しだけ嬉しそうな顔で見つめていたルーナは、やがて、ポツリとつぶやいた。


「それにね。これは、私の犯した罪に対する、正当な報いでもあるの」


「報い……?」



ご安心ください。

胸糞展開にはさせません(盛大なネタバレ、再び)

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