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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第四十九話 命名


「それでは! 新しい仲間の加入を祝って! かんぱーい!」


「乾杯」

「乾杯!」

「カンパイ?」


和花の声に合わせて、3名……琴音、美香、ルーナが唱和する。

約1名、ルーナだけは乾杯の意味がわからず首を傾げていたが。


今は日曜日のお昼で、時刻は14時30分。

美香がトルトゥーガを撃破してから、丸一日が経過している。

ちなみに、ここは琴音の家だ。

寮の部屋では手狭だし、人には聞かせられないような話もするので、集まるのには琴音の家がちょうど良かったのである。


このような会を催すことになった経緯を説明するには、昨日のことまで遡らねばなるまい。


トルトゥーガを倒した美香は、すぐに魔力切れで気を失ってしまった。

美香の妹の美奈を回復させて戻ってきた和花(ローズ)は、美香が単独でトルトゥーガを下してしまったことに驚いたが、彼女が気絶しているのを見て、もっと驚いた。

慌てる和花をルーナが叱咤し、気絶した美香と美奈を二人の家まで運んで介抱してやったところ、幸いにも、すぐに二人は目を覚ました。


二人が無事だったのは喜ばしいが、問題も残っていた。


天導衞姫に目覚めた美香をどうするか、である。


もちろん、自然に考えれば、一緒に天導衞姫として地 球(ライト・ヴァース)の防衛にあたってもらうのが最善だろう。


しかし、もう一つの世界(リ・ヴァース)の存在について知っている和花や琴音とは、事情が異なる。

彼女は和花の友人というだけで、リ・ヴァースのことなど、何も知らないのだ。


既に敵と交戦してしまっているため、もはや無関係とは言えない。

しかし間違っても、命をかけて戦ってほしいなどとは、無責任に頼めない。


取り敢えず和花は、琴音に相談することにした。


和花は寮に戻るつもりだったが、美香は、しばらく妹と一緒にいたいと言った。

あれだけのことがあれば当然だろう。

既に回復しているとはいえ、美奈は衝撃で気を失っていたのだ。

その気持ちも分かるので、寮で勉強していた琴音に、無理を言って美香の家まで来てもらうことになった。


取り敢えず緊急かつ重要な案件だとだけ聞いていた琴音は、大慌てでやってきた。

彼女は和花の顔を見てホッとした表情を浮かべ、次に美香のことを見て怪訝そうな顔をし、最後にソファで寛いでいたルーナのことを、ジッと見つめた。

説明しろ、という無言の圧力に屈したルーナは、その日あった出来事を全て話した。


ルーナの話は、驚きを持って琴音に受け入れられた。

特に、美香が天導衞姫として覚醒した、と聞いた琴音の顔は()()()だった。

詳細は琴音の名誉のため割愛するが、そばにいた美香が小さく吹き出すくらい、クールビューティな彼女に似つかわしくない顔をしていた、とだけ言っておこう。


なお、事情を教えるわけにはいかない美奈は、この場にはいない。

ルーナが事情を話すにあたって、別室で和花と一緒に遊んでもらっているのだ。


この場にいるのは、琴音と、美香、それとルーナだけだ。


琴音は、ため息を一つ吐くと、美香に向き直った。

その真剣な表情に、美香は思わず居住まいを正した。


「まずは、あなたの気持ちを聞かせて。……私たちと一緒に戦うつもりは、ある?」


「ああ? あるに決まってんだろ。最初からそのつもりだぜアタシは」


「……そうだったの?」


疑るような目を向ける琴音に対して、美香は胸を張って言った。


「たりめーよ。みぃが安心して暮らせるようにしてやりてぇからな」


「ふーん……」


少しだけ見直した様子で、美香のことを見つめる琴音。

琴音は美香のことを、粗暴なヤンキー娘だと思っていた。

(まぁ、実際そうなのだが)

和花が美香と親交を深めていることにも、琴音は内心では反対だったのだ。


しかし、美香の言葉は、粗暴ながらも真摯なものだった。

彼女が本気で妹のために戦おうとしていることがわかって、琴音は少し感心していた。


「それによ……」


「……なに?」


先ほどまでとは打って変わって、真剣な表情を浮かべる美香。

それに釣られて、琴音の表情も真剣なものになる。


美香は言った。


「ウチの妹が、マギア・ローズの大ファンなんだよ!」


ガクッと琴音がずっこける。

いや、実際にずっこけたわけではないが、そんな雰囲気だった。


「ねーねもマギア・ローズの仲間なんだぜって言ったら、みぃのやつ、きっと喜ぶぜ!」


「いや、言っちゃダメだから」


呆れ返った目で、琴音が美香を見る。


「ダメなのか!?」


「なんで驚いてんのよ……」


ショックを受けた顔をする美香に、ルーナも呆れたような目を向けた。

二人に冷たい目で見つめられた美香は、気まずそうにポリポリと頭を掻いた。



こうして、取り敢えず美香の気持ちは確認できたが、まだ彼女は何も知らない状態だ。

天導衞姫やリ・ヴァースについて、美香にきちんと説明するために、琴音は急いで寮に戻って外出届を出した。

比較的近くにある自分の家ということで、許可はすんなり降りた。


美奈を残して出かけることに抵抗を示した美香であったが、実のところ日曜日は母親が家にいるとのことで、問題はなかった。要するに、彼女がシスコンなだけである。

それに、自分が世界の命運を担う存在になったという自覚は一応あるようで、渋々ながらも一緒に琴音の家に向かうのだった。



こうして、冒頭のシーンに繋がるというわけだ。


乾杯した一同は、グラスに注がれたオレンジジュースを口にした。

和花はコクコクと、琴音は上品に、美香はグッと一気に。

飲み方一つとっても、それぞれの個性が出ていた。

なお、ルーナはコップを持てないので、少し深めの平皿にジュースを注いでもらい、それを舐めている。


和花は純粋に、一緒に戦う仲間が増えたということを喜んでいた。

琴音は、新たな仲間が美香ということに少し思うところはあったが、彼女も「意外と悪いやつじゃなさそうだし」と美香のことを認め始めていた。

ルーナも和花と同じく


「それじゃあ、決めないといけないよね!」


「……何をだよ?」


和花が元気よく言うと、美香が首を傾げた。

琴音は想像がついたのか、微かにため息をついている。


和花は胸を張って言った。


「もちろん、美香ちゃんが変身する魔法少女の名前!」


「はぁ? んなもん、なんでもいいだろ」


興味なさげな美香に向かって、和花が目を剥いて抗議する。


「そんなのダメだよ! 変な名前だったら、美香ちゃんも嫌でしょ!?」


「そりゃあ、カッコいいのに越したことはねえけどよ……」


「そうでしょ? ちなみに、美香ちゃんはどんな名前がいいとかある?」


「ああん? そうだなぁ……」


「名前はこう、マギア・〇〇(マルマル)って感じで」


「うーん……」


美香は、少し考え込む様子を見せた。

やがて、彼女なりにいい名前を思いついたらしく、ポンと手を打つ。


「マギア・スーパードラゴンってのはどうだ!?」


「ダッ……やめようそれは」


「なんでだよ!?」


珍しく、和花が毒を吐きかけるが、すんでのところで踏みとどまった。

控えめながらも、きっぱりと美香の案を却下する。


「もっとこう……お花の名前とか、果物とか、そう言うのにしようよ」


「ああん? 例えばどんなのがいいんだよ?」


「うーん……マギア・パインとかはどう? 色も黄色で合ってるし、可愛いよ!」


「うーん……しっくり来ねえな……」


首を捻る美香。

そんな美香のことを眺めながら、琴音がアイデアを出した。

ただし、その口元は、揶揄うように口角が微かに上がっている。


「じゃあ、マギア・プリンってのはどう?」


「ああん!? そりゃどういう意味だコラ!」


「見た目通りじゃん」


「テメェ! アタシのこと舐めてんだろ!?」


「そんなことないよ。可愛いよプリンちゃん」


「舐めてるよな!? 完全に舐めてるよな!?」


「ちょっと美香ちゃん、落ち着いて! 琴音もふざけちゃダメでしょ!」


今にも掴みかかりそうな美香を必死に押し留める和花。


口では琴音のことを注意しているが、実のところ、彼女は驚いていた。

琴音は人嫌いで、なかなか他者に心を開かない。

実際はよく笑うし、冗談も言うのだが、和花以外には、あまりそういう顔を見せないのである。

そんな彼女が、不思議なことに美香の前ではかなり素を出せているようだ。


和花はそんな思考をひとまず脇へ追いやると、二人のことをビシッと指差す。


「もう! 真面目に考えようよ、琴音! 美香ちゃんも!」


「うん。分かった」


「アタシは真剣だったんだが……」


頷く琴音と、納得いってなさそうな美香。

そして、その様子を面白そうに眺めているルーナ。

和花は、そんな3名に言った。


「それじゃ、みんなでアイデアを出し合おう! じゃあ、まずルーナから!」


「私!?」


いきなり指名されて、驚くルーナ。

彼女はアワアワしながらも、頑張って考える。

こう言う時、真面目に取り組んでくれるのは、彼女の美点の一つだろう。


「じゃ、じゃあ……マギア・バナナっていうのはどうかしら? 色も黄色いし」


「ふざけてんのか!?」


怒鳴り声をあげる美香。

しかし、ルーナはふざけているわけではないようで、ビクッと身体を震わせた。

そして、悲しそうな顔で美香に話しかける。


「だって……美味しいじゃないバナナ……。そんなにダメかしら……?」


しょげかえるルーナを見て、和花がキッと眦を釣り上げた。


「こらっ、美香ちゃん! そんなこと言わないの!」


「アタシが悪いのかよ!?」


目を剥く美香をよそに、和花は話を進めた。

彼女には、意外とこういうマイペースなところがある。


「それじゃあ……次は私! ……マギア・サンフラワーっていうのはどうかな? ひまわりだよ!」


「なんか……長くねぇ? 語呂も悪いしよ」


「えーっ、ダメかなぁ」


ガックリと肩を落とす和花。

マギア・スーパードラゴンが言うなよ、と思わなかった彼女は、間違いなくいい子だ。


「もっとシンプルで、カッコいい響きのやつ……」


その時、琴音がぼそりと呟いた。


「……マギア・デイジー」


うーんと悩んでいた和花が、パッと顔をあげる。


「……それ、いい! デイジー、いいじゃん! 美香ちゃんはどう思う!?」


「まぁ……悪くはねえな」


美香もまんざらでもなさそうな表情を浮かべている。

ルーナは、驚いたように言った。


「へぇ……コトネって、センスあるのね! すごいじゃない!」


「……別に」


ぷいとそっぽを向く琴音。

どうやら、少し照れ臭かったようだ。


「マギア・デイジーか……! よっし! 今日からアタシは、マギア・デイジーだ!」


なんだかんだ言って、美香も気に入ったようだ。


こうして、三人目の戦乙女(ヒロイン)の名前は、マギア・デイジーに決まった。


「ふう……頭を使ったら、お腹すいちゃった」


「おい、白石! なんか食いもん出せ!」


「……アンタにはあげたくないんだけど」


「なんでだよ!」


「喧嘩はやめなよー」


ぎゃーぎゃーと言い争いをする三人。

それを笑顔で眺めていたルーナが、身体をピクンと震わせた。


「……来たわ! 敵よ!」


「よっしゃあ! アタシのデビュー戦だな!」


美香は力強く立ち上がった。

和花と琴音も、それに続いた。


三人は、取り出した【姫装神機(トランス・デック)】を腰に押し当てて叫んだ。


変 身(トランス・カード)!」


ここまで毎日投稿にお付き合いいただき、ありがとうございました。

今後はしばらく、一週間に2〜3回のペースで投稿していければいいな、と思っています。

毎日更新ではなくなるので、ブックマークしていただけると嬉しいです。

評価ポイントをいただけると、少林拳はさらに喜びます。

お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

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