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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第四十三話 ルームメイト


3名が犀怪人(ナサローク)を倒して戻ると、ちょうど3時間目が終了するところだった。


ルーナの【幻想】はまだきちんと働いているようで、和花と琴音が長時間、部屋を開けて教室に入ってきたことに、誰も気がついていないようだ。二人は、何食わぬ顔で授業へと戻った。


突然リ・ヴァースが出現した3時間目とは違い、4時間目は何事もなく終わった。

4時間目が終われば、次は昼休みだ。

和花がウキウキとした様子で琴音の側に行くと、そこには七海もいた。

琴音の前の席だから当然なのだが、どうやら一緒に食事がしたいようだ。


「やっほー。一緒にご飯食べよー」


「うん! もちろんだよ!」


「へへへー」


ニコニコと和花がそういうと、七海も嬉しそうに笑った。

和花は、最初は七海のギャルファッションに戸惑っていたものの、悪い子ではないと分かったので、すぐに打ち解けている。誰とでも仲良くなれるのが、和花の長所の一つだ。

なお、琴音は和花と二人っきりで食事がしたかったので、少しだけ不満を覚えていたが、大人な彼女はそれを顔に出すことはしなかった。


3人(+ルーナ)で食堂に向かって歩き出そうとした時だった。

ふと、和花の目に、ヤンキー女子の姿が留まった。

琴音の隣の席なので、いやでも目に入ってくる。


お昼になったのに、彼女は顔を伏せたままだった。

その背中が少し寂しそうに見えた和花は、グッと勇気を振り絞る。


和花は、おずおずとヤンキー女子に話しかけた。


「ねぇ……一緒にお昼食べない?」


「ちょっ!」


「…………」


慌てる七海と、黙ったままその様子を見守る琴音。

ヤンキー女子は、むくりと顔を上げると、和花を見て舌打ちした。


「……チッ! アタシに構うな。どっか行け」


「ちょっとあんたさー、せっかく誘ってくれたのに、その態度……」


「ううん、いいんだ! ……さ、早く行こ!」


「あ、ちょっ!」


七海が再び声を荒げかけるが、当の本人である和花がそれを遮った。

彼女と琴音の手をとり、食堂に向かって引っ張っていく。


「…………チッ」


その後ろ姿を見送っていたヤンキー女子は、もう一度、苛立たしげに舌打ちすると、再び顔を伏せた。



***



教室と同じ北棟の1階にある食堂は、混雑していたが、席が取れないほどではなかった。

食事の乗ったお盆を持った3人は、四人掛けのテーブルが空いているのを見つけて、いそいそと座り込む。


ここの食堂では、お金はかからない。

食費は全て、国から出るというから、ありがたい話である。

メニューもそこそこ豊富で、味もそう悪くないらしい。


ちなみに、和花は大盛りのオムライス、琴音は天ぷらそば、七海は生姜焼き定食を頼んだ。

ギャルも生姜焼き定食を食べるんだ……と、こっそり和花は思った。

なお、ルーナの食事は、こっそりと和花が自分の分をスプーンで食べさせている。

だからこそ大盛りにしたのだが、二人で食べると少し物足りない量だったので、あとでコンビニにでも出かけようと思った和花だった。


授業やこの施設の感想を言いながら、和気藹々と食事を楽しむ3人。

と言っても、主に会話は和花と七海によるものだった。

琴音はもっぱら聞き役だが、人嫌いの彼女も、徐々に七海と打ち解けてきたようだった。


意外にも、七海は和花や琴音と話が弾んだ。


七海の見た目は、派手なギャルである。

これまでギャルと話したことがなかったので、なんとなく会話が上手く進むか不安だった和花だったが、完全に杞憂だった。

生活まで派手派手だったらどうしよう、と心配していたのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、七海はきちんとした子だった。

話してみると、中身は普通の女子中学生で、単にギャルファッションが好きなだけだという。

しかも、これだけのクオリティで、中学生デビューだというから驚きだ。

それだけでなく、模試では全国上位に名を連ねるほど、勉強も得意だという。

ギャルは勉強が苦手、という勝手な想像をしていた自分を恥じた和花だった。

和花も琴音も、すっかり七海という子に親近感を覚えはじめてきた、その時だった。


食堂が、一瞬、静けさに包まれた。

生徒たちの視線は、一様に食堂の入り口へと注がれている。


和花がきょとんとして食堂の入り口を見ると、そこにいたのは、先ほどのヤンキー女子だった。

そうやら、朝の一件はクラス中が見ており、既に「関わりたくない人物」として認識されているようだ。


ヤンキー女子は食堂の反応の舌打ちすると、そのまま食堂の列に並ぶ。

列にはまだ何人か残っていたが、彼女たちは慌てて飛び退いて、ヤンキー女子に先を譲ろうとした。

それを見て、苛立たしげな表情になったヤンキー女子は、列を離れようとした生徒たちを怒鳴りつける。


「……何勝手に退いてんだ!? さっさと元通り並べ!」


「は、はい!」

「すみません!」


意外にも、きちんと列に並び直したヤンキー女子。

彼女が注文を終え、空いている席を探している間、周囲は固唾を飲んで見守っていた。

それに合わせて、荷物を置いてさりげなくブロックしたり、席を寄せて距離を離したりする生徒も続出する。

粗暴な彼女と同席したくないのだろう。


それを見て、ますます苛立たしげな顔になるヤンキー女子。


彼女は、誰にも歓迎されていなかった。


しかし、それを見かねた女子生徒がいた。

もちろん、和花である。


「……ここ、空いてるよ!」


彼女は、自分からヤンキー女子に声をかけたのだ。


同席していた七海が、驚いたように和花を見る。

琴音は、クールな表情で状況を見守っていた。

ただし、その目には、強い警戒感が浮かんでいる。


和花の方を見て、少しだけ嫌そうな表情を浮かべたヤンキー女子。

しかし、他に席が空いていないのを見て、ズンズンと和花の元へと歩み寄ってくる。


「……チッ」


舌打ちを一つすると、彼女は四人掛けテーブルの空いている席に、どっかりと座り込んだ。

そして、何も言わずに、注文したカレーをガツガツと頬張り始める。


七海も、琴音も、ヤンキー女子と同じグループであるにも関わらず、何も話そうとしない。


「あ、あの……お名前は……」


「ーーごっそさん!」


沈黙に耐えかねて、名前を聞こうとした和花。

しかし、いつの間にかカレーを食べ終わっていたヤンキー女子は、パンと勢いよく手を合わせると、そのままガタッ! と立ち上がり、ズンズンと食堂を出ていってしまった。


「……感じワリー」


「そんなこと言ったらダメだよ、七海ちゃん……」


ついそうこぼした七海のことを諌める和花。

その表情は、少しだけ寂しそうだった。


***


お昼を食べた後。

授業を2時間挟み、ようやく自由時間となった。

生徒たちは、ゾロゾロと自室へと向かう。

荷解きや、ルームメイトとの顔合わせのためだ。


一方、授業中、必死に眠気と戦っていた和花は、喜び勇んで琴音の元へと向かった。

琴音は、七海と一緒にいた。同じ班だから当然かもしれないが、人間嫌いの気がある琴音が、和花以外の誰かと一緒にいることそのものが珍しいことだと言えた。

琴音に新しい友人ができたことを、素直に喜ぶ和花。


3人は、自室に戻ることなく、食堂でしばらくおしゃべりに興じた。

ルーナがウトウトして和花の肩から滑り落ちそうになるくらい、長々と。

そのまま一緒に夕食をとった3人は、各自部屋に戻った後、20時にお風呂で落ち合う約束をして、解散した。

なぜ少しタイムラグがあるかといえば、部屋で荷物を開けたり、ルームメイトに挨拶したりする時間も込みだからである。


新しくできた七海という友人の存在を喜びながら、和花は自分が寝泊まりすることになる部屋へと向かった。


最初のオリエンテーションで配布されたルームキーには、505と書かれている。

つまり、五階の左から5番目が自分の部屋ということになる。

どの部屋にも、苗字が記載されている表札がかかっており、間違えるということもない。


505の表札には、「桐生院・橋本」と記載されていた。

橋本は和花の苗字だから、桐生院というのがルームメイトの苗字、ということになる。


(桐生院さんかぁ……、どんな子だろ? 名前的に、お嬢様とか? 仲良くなれるかなぁ)


そんなことを考えながら、和花は自室のドアを開いた。


「……ああん!?」


「ま、間違えました!」


中にいた生徒にいきなり怒鳴られ、和花は慌ててドアを閉めた。


(び、びっくりした! 部屋を間違えては……ないみたい)


表札の名前と、職員から配られたルームキーの部屋番号を何度も確認して、もういちどドアを開ける和花。

わくわくしていた最初とは違い、今度はおっかなびっくりだ。


「お……お邪魔します……」


そーっと扉を開くと、そこにいたのは……。


「ああん!? 何の用だよテメェ!」


……そこにいたのは、例のヤンキー女子だった。


***


「……チッ。テメェが同室かよ」


「はい……あの……ごめんなさい……」


「……別に、なんもしねーよ」


身を縮こまらせた和花を見て、ヤンキー女子……桐生院は、ため息をついた。

その様子を見て、和花はおやと思った。

今の反応からして、単に粗暴なだけの子、というわけではなさそうだ。


「あの、桐生院さん……」


「アタシは、苗字で呼ばれるのは好きじゃねぇ。名前で呼べ」


「なんて呼べばいいですか?」


「美香だ。美香って呼べ」


「はい! 美香さん!」


「……それから、敬語もナシにしてくれ。なんか気持ち(わり)ぃ」


「分かったよ、美香ちゃん! 私のことも、和花って呼んで!」


「順応性高いな、お前……」


桐生院 美香(ヤンキー女子)は、呆れたように言った。

実際、和花の順応性は高い。

こうして美香と普通に話せている時点で、それは間違いなかった。


「美香ちゃん!」


「……チッ。なんだよ?」


「20時に、みんなとお風呂に入るんだ。美香ちゃんも、一緒にお風呂、入りに行こ?」


「…………他の奴らが嫌がるだろ」


「そうかなぁ……」


首を傾げる和花。

彼女は(とぼ)けているのではなく、本気で疑問に思っていた。

七海が嫌悪感を、琴音が警戒心を露わにしているのを、和花は明確には認識していなかった。

それどころか、「今はソリが合わないけど、そのうち仲良くなれる!」とさえ思っていた。

和花のこういう部分は美点だが、ある意味、欠点でもあると言えるだろう。


「……チッ。同情なんざいらねーよ」


舌打ちをしてそっぽを向く美香。

その両手を取って、和花は言い募った。


「ねぇ、行こうよ! 美香ちゃん!」


「ーーーうわっ!? なんだテメェ! 手を離せ!」


「一緒に行ってくれるって言うまで、離さないから!」


ぎゅっと繋がれた手を、なぜか美香は振り払おうとしなかった。

思い切り顔を顰めて、観念したように叫ぶ。


「あー、くそ! わーったよ! 行くよ! これでいいんだろ!」


「わーい!」


喜ぶ和花を見て、美香は、深くため息をついた。

クラスメートに振り回されることになるのは、彼女の方かもしれなかった。

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