表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/62

第四十一話 マギア・リリィ


「ーー場所は!?」


「ここから1km! 近いわ!」


和花と琴音、そしてルーナは、新しく招集された学舎で授業を受けていた。

そこに、敵の出現を感知したとルーナから知らされ、慌てて現場へ向かっているところだった。


既に変身は完了しており、それぞれローズピンクとアイスブルーの魔法少女の姿になっている。

現在、飛行術式で上空を高速で移動中だ。

何度か経験している和花(ローズ)はともかく、琴音は今回初めて飛行術式を使用しているのだが、初めてとは思えないほどスムーズに術を行使できた。


この事実に、琴音は若干、不気味さを感じていたが、今は急ぐことが先決である。

二人は、慌ててリ・ヴァースの出現した地点へと向かった。


***


場所は上野。

その交差点で、一体の怪物が暴れていた。


外見は筋骨隆々の男性だが、身長は3mほどもあり、全身を頑丈そうなグレーの皮膚が覆っている。

更にその上から分厚い鎧を身につけており、まさに重装甲という言葉がふさわしい。

最も特徴的なのは、その巨大な頭部だった。具体的には、額から飛び出している一本の角。

体色も相まって、その姿はまるで巨大な(サイ)を思わせた。


「フハハハ! 俺様に敵うものなど、いるものか!」


その怪物が歩くたび、コンクリートが砕け、粉塵が舞った。

怪物の周囲では自動車がひしゃげて潰れており、かなり悲惨な有様だった。

中には、まだ車内に取り残されている人も残っている。

ガソリンが引火したのか、周囲では火の手がちらほらと上がっていた。


巡回していた警官が挑んだようだが、銃弾も警棒も通用しない相手を前に、なすすべもなく蹴散らされてしまったようだ。ペシャンコに潰されたパトカーと、その周囲でぐったりと倒れている警官たちが、その戦いの結末を雄弁に物語っている。


行動が早いというべきか、報道陣(マスコミ)も詰めかけている。

もちろん遠巻きにだが、既にカメラを回している局もあるようだ。

その中には、ローズに命を救われた、例の女性キャスターも混じっていた。


「ご覧ください! サイのような怪物が、上野に出現しました! 現場は大混乱に陥っています!」


「フハハハ! 俺様は鋼角のナサローク! 俺様に勝てる者はおらんのかぁ!?」


交差点の中心に陣取って、高笑いをする怪物。

そいつは、哀れな犠牲者を発見した。


それは、潰れた車内から逃げ遅れている親子だった。

まだ年齢は10歳にもなっていないであろう少年が、母親を必死に車内から引っ張り出そうとしている。

しかし母親は、潰れた車に足を挟まれて、動けないようだ。

必死に息子に逃げるように言っているが、少年は母親のことを見捨てて逃げることができないようだった。


犀の怪物(ナサローク)はニヤリと笑うと、ズンズンと地響きを立てながら、その親子のもとへと向かった。

母親は半狂乱になって息子を逃がそうとするが、少年は逃げようとしない。

最後まで、母親を助け出そうと躍起になっている。


「フハハハハ! なんと哀れな小虫よ!」


「俺様が、一息に踏み潰してやろう!」


少年が母親のことを守るように庇い、母親が悲鳴をあげる。

もう終わりだ。そう思い、周囲で見守っていた人々が一斉に目を背けた瞬間だった。


「ーーまちなさーい!!」


「……グボア!?」


空から急降下してきたローズピンクの少女が、犀怪人(ナサローク)の顔面に、強烈なパンチを叩き込んだ。

凄まじい衝撃音が響き、地響きを立てて怪物が転倒する。


「嘘……マギア・ローズ!?」


その姿を見て、母親は驚愕した様子を見せる。

テレビではその存在を知っていたが、実際に遭遇するとは思っていなかったらしい。

肩に光るネコを乗せたマギア・ローズは、慌てた様子で母親に話しかけた。


「……大丈夫ですか!?」


「あ、脚が挟まって、抜けないんです!」


「マギア・ローズ! 母ちゃんを助けて!」


「今、助けるよ! 待ってて!」


マギア・ローズが潰れた車に手をかけて、ぐいっと力を込める。

それだけで、あれだけ力を込めても動かなかった鉄塊がバキンとこじ開けられ、母親は自由の身になった。


そこへ、安全を確信したのか、例の女性キャスターとカメラクルーが駆け寄ってくる。


「マギア・ローズ! マギア・ローズが来てくれました! なんと、その肩には光るネコもいます! 妖精でしょうか!? これは密着取材! 密着取材しかない!」


「ああもう! ここは危険なので、下がってください! ……お二人も、早く逃げて!」


いきなり現れたキャスターたちに、ローズが避難するように指示を出す。

潰れた車から解放された二人にも逃げるように伝えるローズ。

しかし、立ち上がって逃げようとした母親は、すぐに倒れてしまった。


「ありがとうございます! 逃げ……痛っ!」


「母ちゃん! あ、脚が!」


潰れた車に挟まれた母親の脚は、大きく紫色に腫れ上がっていた。

もしかすると、骨も折れているかもしれない。

実際、母親は満足に立ち上がることすらできない様子だった。


「た、たいへん! すぐ治します!」


それを見たローズは、慌てた様子で母親の足に手をかざした。

そこから桜色の光が溢れ出し、傷ついた母親の脚を癒していく。


その様子を、元気よく女性キャスターが実況する。


「ご覧ください! 我々は今、奇跡を目にしています! あれだけの重傷が、あっという間に治っていきます!」


「……危なくなったら、すぐに逃げてくださいね」


ローズは困ったような視線をキャスターたちに向けているが、追い払うこともできずにいるようだ。


その時だった。


「ローズ! 後ろよ!」


母親を回復している最中のローズ。

その背後には、先ほど殴り倒した犀の怪人が迫っていた。

どうやら、先の一撃から立ち直って、背後から攻撃を仕掛けるつもりらしい。


ローズの側にいた光るネコ(ようせい)が声を上げて警告するが、犀の怪人は高笑いをあげてローズに向かっていく。


「フハハハ! 油断大敵なり、マギア・ローズ……ホブゥ!?」


再び顔面を殴り飛ばされ、思い切り転倒する犀怪人。

しかし、今度はローズではない。

そこにいたのは、アイスブルーのバトルドレスを身に纏った魔法少女だった。


「なんということでしょう! 青の魔法少女! 青の魔法少女が現れました! 今ここに、二人の魔法少女が揃ったことになります! これは激アツ展開だぁ!?」


何やら興奮しっぱなしの女性キャスターを置いて、青い魔法少女はマギア・ローズに話しかけた。


「ローズ、油断しすぎ」


「あはは……ごめんごめん」


「なんと!? お二人は友人同士なのか!? これはてぇてぇ! てぇてぇの予感んんんん!!」


「うるさいなあ、もう……」


二人の魔法少女は、呆れたように女性キャスター一行を見つめた。


と、そこへ、復活した犀怪人が立ち上がった。

そして、青い魔法少女を見つけて、大声を出す。


「フハハハ! 見つけたぞぉ! 青い天導衞姫!」


興奮する犀怪人(ナサローク)

それを見て、慌ててローズは回復を終えた母親に言う。


「足は治しました! さぁ、逃げてください!」


「は、はい! ありがとうございました、マギア・ローズ!」


「母ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」


口々にお礼を言いながら、親子が慌てた様子で逃げていく。

空気を読んだのか、女性キャスターを含めたカメラクルーたちも避難する。


しかし、ナサロークはもはや、そちらの方を目で追ってすらいない。

彼の目は、完全に青い魔法少女のことをロックオンしている。


「我は、ナサローク! 鋼角のナサローク!

 魔導獣姫ヴェリエス様の、忠実なる(しもべ)よ! 

 ご覧くださいヴェリエス様! 今、仇を討って見せますぞぉ!」


「……くるよ」


「うん!」


「サポートは任せなさい!」


「うおおおお戦いが! 戦いが始まるぅぅぅ!」


アイコンタクトし合う二人と一匹。


そして、少し離れたところで興奮しながら実況する女性キャスター。


戦いの火蓋は、ナサロークの先制攻撃によって、切って落とされた。


「ぬおおおおおおお!」


ナサロークは、青い魔法少女に向かって突進した。

ナサロークによる、凄まじいタックル。

犀を思わせる巨大なツノと、3mを超える巨体、そして全身に着込んだ分厚い鎧もあいまって、その突進は装甲車のそれに匹敵する。


「……ふんぬぅ!!」


その一撃を、青い魔法少女に前に回り込んだローズは、正面から受け止めてみせた。


「ぬおおおお……!」


「ぐぬぬ……!」


ギャリギャリと踵がコンクリートにめり込み、コンクリートのひび割れが大きく広がっていく。

拮抗する二人。しかし、青い魔法少女と光るネコ(ようせい)も、決して遊んでいたわけではなかった。


「ルーナ、拘束!」


「分かったわ!」


光るネコから光の鎖がジャラジャラと広がり、ナサロークを縛り上げる。


「ーーぬうう!?」


動きを止めたナサローク。

そこに目掛けて、青い魔法少女は両手の平を向ける。


「……蒼き猛吹雪サファイア・ブリザード


そこから放たれた蒼い光の渦が、ナサロークを直撃した。


「ぬおお……こんな……もの……で……」


直撃した先から、瞬時に凍結していくナサローク。

3mあった巨体も、分厚い装甲も、構わず白い氷に覆われていく。


「もうし……わけ……ヴェリエスさ……ま」


わずか数秒後には、あれだけ大暴れしていた犀怪人(ナサローク)は、巨大な氷像と化していた。

やがて、その氷像はビキビキと砕け散り、無数の破片となって完全に消滅した。


「ありがとう、助かったよ!」


「……先走りしすぎ」


「そうよ! 一人で戦ってるんじゃないんだから!」


「……ごめんね」


「まぁ、無事ならいいけど」


「さ、帰りましょ」


そう会話を交わしながら、ふわふわと飛翔を始める魔法少女たち。

戦いが終わり、元いた場所に帰ろうとしているのだろう。


そこに飛び込んで行ったのは、例の女性キャスターである。


「ちょーっと待ったぁ!」


「……なんですか」


どこか冷ややかな目を向ける青い魔法少女に対して、女性キャスターは必死に話しかけた。


「お名前を! どうか、貴女のお名前を教えてください!」


「……別に名前なんて……」


「この子は、マギア・リリィだよ!」


「ーー!?」


ローズの言葉に、激しく反応する青い魔法少女(マギア・リリィ)

しかし、その様子に気づかず、女性キャスターは興奮した様子で口を開いた。


「マギア・リリィ! 今回も街を守ってくれて、ありがとう! もちろん、マギア・ローズも、妖精さんも!」


「ありがとう!」


「ありがとうございました!」


キャスターだけでなく、一部始終を見ていた群衆からも、お礼と賞賛の言葉が投げかけられる。

その中には、先ほど助けた親子の姿もあった。


「えへへ……」


「……マギア・リリィ?」


「妖精さん……?」


はにかむローズと、ぶつぶつとつぶやくリリィ、そして首を捻る妖精。

3者は、それぞれの反応を見せながら、空を飛行して、その場を立ち去っていった。



***


「……マギア・リリィってなに……?」


「いい名前でしょ! 私が考えたの!」


飛行しながら学校に戻る途中、困惑した様子で尋ねる琴音に対して、自信満々に和花が答える。


ふと、昔、それほど仲の良くなかったクラスメートから、一緒にいる時に「白石さんたちって……百合の花、って感じだね、アハハ」と言われたことがあるのを思い出したのだ。

なぜか琴音はムッとしていた様子だったので、和花はその場面をよく覚えていた。

先ほどの名 前(マギア・リリィ)は、その時の記憶を頼りに発せられたものだった。


なお実際には、琴音が和花と常に一緒にいるので、それを揶揄った言葉だったのだが……。

純真な和花は、そのことに気づいていなかった。単純に、容姿を花に例えた、褒め言葉と思ったのである。


「マギア・リリィ……」


満足げな和花と、呆然とした様子でつぶやく琴音。

そんな二人とルーナは、そんな調子で、抜け出してきた授業へと戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ