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僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


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第三十七話 目覚め


「ーーッ!?」


がばりと身体を起こすと、そこは自分の部屋だった。

壁にかかっている時計の針は、既に夕方に差し掛かっている。


琴音がベッドの脇を見やると、そこには自分の親友……和花が、突っ伏すようにして眠っていた。

その隣には、ルーナもいる。

見たところ、どちらも大きな怪我はしていないようだ。


そのことにホッと息をつきながら、琴音は和花の肩をそっと揺すった。


「……和花、和花」


「んぅ……っ!? 琴音! 目が覚めたんだね!」


目覚めるやいなやガバッと抱きついてくる和花を、琴音はそっと抱きしめた。

ヴェリエスとの死闘で、もう2度と会えないかもしれないと思っていた親友。

そんな彼女に再び出会えて、琴音は嬉しかった。


「全く……。私は忘れられる運命なのかしら?」


ルーナも目を覚ましたようだ。

ベッドの上で拗ねた表情を見せているルーナを見て、琴音は微笑んだ。

彼女に向けて、そっと手を伸ばす。


「ルーナもおいで」


「バッ、バカ! そういう意味じゃないわよ!」


「いいじゃんルーナ! むぎゅーっ!」


「わぷぷっ!? ちょっと! せめて了解を取りなさいよね!」


「ふふふ。抱きしめられること自体は嫌じゃないんだ」


「〜〜ッ! もう! 勝手にすれば!」


素直な二人と、素直じゃない一匹。

死闘を潜り抜けてきた3名は、しばらくベッドの上で団子になっているのだった。



***



「……ねぇ、教えて。あの後、どうなったの?」


琴音の質問に、和花はきょとんと首を傾げた。


「えーと……目が覚めたら、琴音とルーナが倒れてたから、二人を回復させて……。それから、近くにいた他の怪我をしてた人も回復させて、ここまで飛んで戻ってきたんだよ」


「…………それ、あの姿(ローズ)のまま?」


マギア・ローズの格好のまま、この家まで飛んできたのか?

敵にもマスコミにも、この家のことがバレてしまったのでは……。

遠回しにそう尋ねた琴音の疑問に対して、和花の代わりにルーナが答えた。


「そうだけど、安心しなさい。ちゃんと私が【幻想】で隠しておいたわ」


「そう、よかった」


つまり、和花(ローズ)が回復させた段階で、ルーナは目を覚ましていたということだ。

ヴェリエスに思い切り蹴り上げられていたので、少し心配していたのだが、どうやら大丈夫だったらしい。


「……というか、なんで二人は新宿にいたの? むしろそっちの方が気になるんだけど」


和花が尋ねると、琴音とルーナは気まずげな表情で顔を見合わせた。

しばらく視線で役割を押し付けあった挙句、琴音の圧に負けたルーナが渋々口を開く。


「……アンタがピンチだったから、飛んで行ったのよ」


「……琴音をここで守ってるって、約束したよね?」


ジト目でルーナを睨む和花。

ルーナは、そっと視線を逸らした。


やがて和花はため息をつくと、諦めたように言った。


「……まぁ、いいや。ってことは、ヴェリエスはルーナが倒してくれたってことだよね?」


「……えっ? 違うわよ。ノドカが倒したんじゃないの?」


「えっ?」


「えっ?」


顔を見合わせる和花とルーナ。

そこへ、琴音が爆弾を落とした。


「あ、それ私」


「「…………ええええええ!?」」


琴音の部屋に、2名の絶叫が響いた。



「ど、どういうこと!? 説明して!」


「そうよ! どうやってあのヴェリエスを倒したわけ!?」


掴みかからんばかりの2名に対して、琴音は困ったように返した。


「うーん……。私もよく分からないんだけど、なんか変身できたから、弓で倒した」


「わかんない! 全然わかんないよ! 変身!? 琴音も天導衞姫だったの!?」


「ちょっと、何それ!? 聞いてないわよ! なんで言わないのよ!?」


「和花と同じ……天導衞姫? になったのは、新宿に着いてからだよ」


「どういうこと!? 後から目覚めたの!?」


「天導衞姫がふたり……!? でも【神託】では……ッ!? そうか、一人とは明言されていなかったわ……!」


混乱する2名に対し、琴音は言った。


「とりあえず……夕飯食べない?」


「「それどころじゃないでしょ!」」


2名の絶叫が、再び琴音の部屋に響き渡った。


***


説明に苦慮した琴音が選んだのは、ネットやテレビの映像を2名に見せることだった。

琴音は、カメラクルーがいることに気づいていた。

そこで、ネットに映像が残っているかもしれないと考えたのである。

自分の顔が写っていたら困るから確認したい、という合理的な理由もそこにはあったが。


一連の映像は、しっかりネットに残っていた。


ヴェリエスと戦い、吹き飛ばされる和花の姿。

一時的に相手を拘束するも、思い切り蹴り上げられるルーナの姿。

瀕死の重傷を負いながらも、必死に抗い、和花を守ろうとする琴音の姿。

そして……彼女が蒼い魔法少女に変身して、ヴェリエスを撃破する姿も。


「〜〜〜〜ッ!! 琴音の、ばか!」


自分の顔が明瞭に写っていなかったことにホッとしていた琴音は、いきなり和花に怒られて目をパチクリさせた。

和花の方を見ると、目に涙を浮かべながら、プルプルと震えている。


反射的に「可愛い」と思ってしまった琴音は、もう手遅れかもしれない。


「なんで逃げないの!? なんで一人で戦っちゃうの!?」


「和花がピンチだったし……」


「そういうことじゃない! あんな……あんな大怪我で! あのままだったら、死んじゃってたかもしれないんだよ!? もっと自分を大切にして!」


「自分のことよりも、和花のことが大切だよ」


「〜〜〜〜ッ! 琴音のばか!」


顔を赤くして、ぷいとそっぽを向く和花。

それを見て「やっぱり可愛い」と思ってしまった琴音は、はっきり言ってもう手遅れだ。


その様子を、どこか呆れた表情で見ていたルーナが、ここで口を挟んだ。


「それにしても……コトネが天導衞姫だったなんてね。正直、かなり驚きだわ」


「……リ・ヴァースから地球を(まも)る戦士、だっけ?」


「そうよ。天導衞姫だけが、地球を守ることのできる唯一の存在なの」


「ルーナの言い方から、天導衞姫は和花だけだと思ってたんだけど」


「……そこは、私も反省してるわ。【神託】では、侵攻を阻止する唯一の存在、としか語られていなかったから、てっきり一人だけなんだと思い込んでたの。まさか2人いるなんてね」


「……2人だけ、とは限らないんじゃない?」


顔を赤くしてそっぽを向いていた和花だったが、ここで会話に参加してきた。

チラチラと琴音のことを見ているが、どうやら怒りはおさまったようだ。


和花の言葉を聞いて、ルーナは驚いたように和花の顔を見た。


「……その発想はなかったわ。アンタ、まともなことも言えるのね」


「ちょっと!? それ、どういう意味!?」


プンスカと怒る和花を見て、琴音は思わず吹き出した。

それを見て、ルーナもつられたように笑う。怒っていた和花も、自然と笑顔になった。

いつの間にか、3人は大きな声で笑い合っていた。


「……はーあ。笑ってたら、なんだか疲れちゃったわ」


「……お腹すいた。琴音、なんか作って!」


「カレーでも作ろうか」


「琴音のカレー、久しぶり! 楽しみだなぁ!」


「カレー? って、この間ホノカが作ってくれたやつ?」


「うん! ママのカレーも美味しいけど、琴音の作ってくれたカレーは絶品なんだよ!」


「じゃあ、お買い物に行かないとね」


ベッドから降りた琴音をみて、和花は慌てて立ち上がった。


「わわっ!? 今、車椅子持ってくるね!」


「ううん、平気。なんか、変身した時に治っちゃったみたい」


「そ、そうなの!? よかったじゃん!」


自分のことのように喜ぶ和花。

それを見て、自然と琴音の頬も緩む。


「私も行くわ!」


ぴょんと和花の頭に飛び乗ったルーナ。

こうして3人は、仲良く近所のスーパーマーケットに出かけるのだった。


***


少し遅い夕飯は、琴音の特製カレー。

ニンジンやトマトをペーストにしたものを加えているので、旨みとコクが段違いだ。

彼女本人は辛口が好みだが、和花の子ども舌に合わせて、甘口をチョイスしている。


死線をくぐり抜けてきた後だからか、3人は腹ペコだった。

夢中でスプーンを動かすうちに、あっという間にお皿は空になった。


「ご馳走さま! ふいーー、お腹いっぱい!」


「ご馳走様。……美味しかったわ」


「お粗末さま。片付けてくるね」


立ちあがろうとした琴音を、和花がぴょんと立ち上がって制した。


「あっ! 片付けとお皿洗いは私がやるから! 琴音は座ってて!」


「そう? じゃあ、お任せしようかな」


少しだけ危なっかしげにお皿をキッチンへと運んでいく和花。

その背中を見送った琴音は、ソファーで丸まっていたルーナに話しかけた。


「ねぇ、ルーナ」


「ん? 何よ、コトネ」


「今日から、私も天導衞姫の一員だね」


「……そうね。一緒に戦ってくれると嬉しいわ」


「うん。和花が戦っているんだし、何もしないわけには行かないよ」


「ありがと、コトネ。……正直、ノドカだけだと危なっかしくて」


「ふふ」


「あはは!」


静かに笑い合う2人。

そこへ、和花がにゅっと顔をだす。


「……? どうしたの?」


「なんでもないよ、ふふ」


「そうよ、なんでもないんだから……ふふっ!」


「もう! 何で笑ってるのか、教えてよ〜」


そんなふうに戯れていた、その時だった。


ブウン! という不吉な音と共に、テレビが勝手に起動した。


「えっ!?」


「……?」


「……」


三者三様の反応で、起動したテレビを見る3人。

そこには、例のピエロ姿の怪人……道化師(クラウン)が写っていた。


『おーほっほ! こんばんは、地球の皆さん! 毎度お馴染み、ワタクシですよ〜!』


「この人……」


道化師(クラウン)……!」


「今度はなんだろう」


琴音の疑問に答えるように、道化師(クラウン)はテレビの中で言った。


『勝手に、全世界の電波を受信できるデバイスに干渉させていただきました!

 強制視聴となりますゆえ、ご容赦願います! さて』


道化師(クラウン)は、ここで一息入れた。


『本日の各国の首都への侵攻、いかがでしたか〜? 

 リ・ヴァースの実力、わかってもらえましたか?

 本日、侵攻させて頂きました7カ国につきましては、

 6カ国の首都を陥落させることに成功いたしました!

 わーパチパチ拍手! 皆さんお疲れ様でしたねぇ! おーほっほ!』


画面の中で笑い転げていた道化師(クラウン)が、急に笑い止む。


『……侵攻に失敗したのは、日本だけです。

 それもこれも、魔法少女……マギア・ローズと、その仲間のせいです。

 こっそり少女たちを襲撃して、天導衞姫……つまり魔法少女のタネを持つ者を

 根絶させようとしていたのに、失敗しました。悔しいですねぇ……。

 念のため、生き残りの子たちも順次始末していくので、ご容赦を』


ここで再び、道化師(クラウン)が笑い始めた。


『おーほっほ! マギア・ローズさえ殺せば、地球は我らのもの! 

 地球の皆さん、できれば協力してくれると嬉しいので、

 マギア・ローズの正体を探ってください!

 謝礼は弾みますよ! おーほっほ!』


ここで、ピエロ服姿の怪人がフェードアウトし、テレビもブウンという音と共に消えた。

真っ暗になった画面には、3人の緊張に満ちた少女の顔が、反射して写し出されていた。

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