表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は黒幕になりたい〜戦うヒロイン育成計画!〜  作者: 少林 拳


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/61

第二十九話 琴音の部屋


「……はっ!?」


和花(ローズ)が目覚めると、ベッドの上だった。

あたりを見回してみると、清潔感があり、よく整頓されたマンションの一室であることが分かった。

何度も遊びに来たことがあるから、ここがどこか、和花もよく知っていた。琴音の部屋だ。


壁にかかった時計は、午後19時30分を指している。

そして部屋の主は、和花の寝ていたベッドに寄りかかるようにして眠っていた。


「あっ、琴音! 大丈夫!?」

「ん……和花!? 目が覚めたんだ! よかった……!」

「ひゃう……っ!」


和花が揺すって起こすと、目覚めた琴音がガバッと抱きついてくる。

いつもクールな琴音とは思えない反応に、思わず目をパチクリする和花。


「この、ばか……! あまり心配させないで……!」


「……ごめんね、琴音」


琴音の目にうっすらと涙が浮かんでいるのを見て、和花はそっと彼女の頭を抱き寄せた。

微かに震える親友の背中を、ぽんぽんと優しく叩く。


「……私もいるんだけどね」


「わわっ!? ルーナ!?」


枕元から突然聞こえた声に、和花は思わず身体をビクッと震わせた。

慌てて目をやると、そこにはどこか不機嫌そうなルーナの姿があった。


「全く……お友達同士、仲良しで良かったわね」


「……? ルーナも友達だよ?」


「……ふ、ふん!」


照れたように、ぷいとそっぽをむくルーナ。

それを見て、和花はそっと微笑んだ。


そして、片腕で琴音を抱きしめたまま、もう片方の手でルーナを抱き寄せた。


「ーーむぎゅう!? ちょ、ちょっと!」


「ふたりとも、ありがとね」


「……うん」


「……ふん!」


二人と一匹は、しばしの間、ベッドの上で抱き合っていた。


***


「って、そうだ! 戦いは!? パウークはどうなったの!? 人質のみんなは!?」


ふと先ほどまでのことを思い出し、取り乱す和花。

それを見て、ルーナは呆れたようにため息を吐きながら言った。


「落ち着きなさい。戦いは無事に終わったわ。人質も無事。貴女のおかげよ、ノドカ」


「ホント!? 良かったぁ……!」


「アンタ、朦朧としながら人質をタワーから下ろして、全員に回復魔法をかけて回ったのよ。幸福なる光の奔流ハッピーライト・ストリームを撃った後に、回復術式の重ね掛け……倒れるのも当然だわ」


「……もしかして、みんなの前で変身解除されちゃったり……?」


「ちゃんと【幻想】で隠しといたわよ。傍目には、アンタがいきなり姿を消したように映るはずよ」


「ありがとう、ルーナ! 助かったよ!」


「あのねぇ! 私は貴女の運搬係じゃないの! 戦いのたびにぶっ倒れるの、いい加減やめてよね!」


「うん……ごめんね、ルーナ」


「……ふん! 分かれば良いのよ!」


そっぽを向くルーナ。

それを見て微笑ましい気持ちになっていた和花。

しかし、その隣で琴音が真剣な表情を浮かべているのを見て、そっと姿勢を正した。


「和花……さっきのあれは、なに? なんで和花がドレス姿に変身したの?」


「……ルーナ、話してないの?」


「アンタの口から聞きたいって。だから、何も話してないわよ」


「そっか……。あのね、琴音……」


和花は、全て説明した。

襲われた夜のこと。ルーナとの出会い。

もう一つの世界、リ・ヴァースのこと。そこに住まう、魔族のこと。

自分が天導衞姫としての素質に覚醒して、魔導戦姫と戦う宿命にあること。

そして、魔獣兵やルヴィア、オリヴィアといった刺客との戦いのこと。


和花が知っている全てのことを話し終えた時、琴音はそっとため息をついた。


「和花……これまでもずっと、そうやって戦ってきたの?」


「え? いや、戦うようになったのは、ホント最近からだし……まだよく分かってないっていうか……」


「……そんな状態で、あの化け物に挑んだわけ?」


「い、いや、その……」


ちょっとだけ琴音の目が怖くなってきたので、しどろもどろになる和花。

昔から、琴音は怒るとすごく怖いのだ。


冷や汗をかきまくる和花を見て、琴音は再度ため息をついた。


「……分かってるって。困ってる人がいたら動かずにいられない性格だもんね、和花は」


「えへへ……まぁね」


「全く……褒めてないっての」


「あうっ!?」


琴音がペチンとデコピンを喰らわせると、和花は痛そうにのけぞった。

額をさする和花を見て、フッと微笑んだ琴音は、気を取り直したように言った。


「……なんだか疲れちゃった。夕飯は……出前でいいや」


「ピザ! 私、ピザが食べたいな!」


出前と聞いて、目を輝かせる和花。

昔から彼女にとって、ご馳走=デリバリーピザという認識なのである。

少ないお小遣いでやりくりしている女子中学生にとっては、そんなものかもしれない。


「あのねぇ……お昼もイタリアンだったじゃん」


「えー!? だって美味しいよ、ピザ! ……ルーナも食べたいよねー?」


「……ちょっと面白そうじゃない。お昼のいたりあん? も悪くなかったし、食べてみたいわ」


「ほら、ルーナもそう言ってるよ! ……ねぇ、いいでしょ?」


子犬のような視線で自分のことを見つめてくる和花に、琴音は思わず苦笑を漏らした。


「……いいよ。好きなの選びな」


「わーい!」


無邪気に喜ぶ和花を見て、琴音の苦笑は微苦笑に変わった。

最初から、琴音は夕飯のメニューなんて、別に何だって良かったのだ。

彼女にとっては、和花と一緒に食べる、ということそのものが重要なのである。

恥ずかしいから、絶対に口にすることはないが。


スマホの狭い画面に顔を寄せ合いながら、楽しそうにメニューを選ぶ和花とルーナを見て、琴音は笑みをますます深くするのだった。


あれこれメニューを眺めているうちに時間が経ってしまい、結局ピザが届いたのは21時過ぎだった。

注文したのは、夏限定のクオーターピザとシーフード。

お昼から怪物(パウーク)の出現やらタワージャックやらで何も食べていなかった二人と一匹は、Mサイズのピザ2枚を綺麗に平らげた。


お腹も満たされ、ダラダラとテレビを見る3名。

和花の家に来たばかりの時は、ルーナはこれまで見たことがなかったテレビというものに興味津々だったが、今では普通に楽しんでいる。何気なくニュース番組をつけると、やはりというべきか、話題は昼間のスカイタワーでの戦いで持ちきりだった。パウークによるタワージャックと、そこへ現れたマギア・ローズの活躍は、ヘリに乗っていたキャスターとカメラマン、そして不特定多数の野次馬によって余すことなく記録されており、無料動画配信サイトでも繰り返し再生されているようだ。


恐る恐る確認してみたところ、マギア・ローズに関しては、ネットでもおおよそ好意的な反応で、和花は思わずホッと息を撫で下ろした。もし炎上していたらと考えると、ちょっと怖いものがある。

もちろん人気取りのためにやっているわけではないが、それでも天導衞姫であること以外は平凡な女子中学生である和花にとっては、不特定多数に叩かれるのは精神衛生上キツいものがあっただろう。


「……なんだか恥ずかしいや」


「まぁ、良いんじゃない? 私は和 花(マギア・ローズ)のせいでタワージャックが起こったんだ、とかって言い出す奴がいるんじゃないかって思ってたし」


「ホントにバカなことよね。和花がいなければ、ニホンなんてあっという間に攻め込まれてお終いだってのに」


そんなふうに、テレビを見ながら会話していた時だった。


『おーほっほ! 地球の皆さん、こんばんは!』


テレビの画面が急に切り替わり、ピエロ姿の怪人が大画面で映る。


「……えっ!? 何これ?」


「……どこのテレビ局も同じ映像だから、局側のトラブルじゃなさそう。……電波ジャック?」


どこか緊張感のない会話をする二人に対し、ルーナの顔色は真っ青だった。


「これ……道化師(クラウン)!?」


「ルーナ、知ってる人?」


「……コイツはリ・ヴァースのメッセンジャーよ」


「メッセンジャー?」


「魔皇陛下や魔神様の言伝を運ぶのが役割よ。つまり、神の代理人ね」


ルーナの説明に、琴音はわずかに顔を顰めた。

彼女の言っていることの意味が分かったからである。


「……かなりの大物ってことね。そんなヤツが出てきたってことは……」


琴音の言葉に答えたわけではないだろうが、テレビの中の道化師(クラウン)は言った。


『おーほっほ! この放送は世界中に、多言語にて放送されています!


 ワタクシはリ・ヴァースの代理人! 端的に言えば、侵略者(インベーダー)です!


まぁ、エイリアンみたいなものだとでも思ってくださいな!』


道化師(クラウン)は言葉を続けた。


『本日、日本の首都、東京にて、デモンストレーションを行いました! タワージャック、楽しんでもらえたでしょうか? そして、デモンストレーションの後は、いよいよ本番! 明日の12時に……』


ここで、道化師(クラウン)は言葉を切った。

そして、もったいぶりながら、得意げに話し始める。


『……世界の7大国、その首都に一斉に侵攻します! 対象となるのは、ライス合衆国、ブライテン王国、カイナ人民共和国、アフィリカ連合、インディ帝国、フイード連邦、そして日本です! ……あ、ちなみに、ラサー共和国連邦は、既に滅ぼしちゃいました、てへ♪』


道化師(クラウン)は言った。


『我らリ・ヴァースは、地球……すなわち、この世界に対して、宣戦布告します!


せいぜい、足掻いて見せなさい! おーほっほ!』


映像は、道化師(クラウン)が高笑いするところで終わっていた。

テレビ局の番組が再開されるが、即座にキャスターが謝罪文を読み上げる映像へと切り替わる。

やはり、電波をジャックして放送が行われたようだ。

先ほどの言葉が本当なら、今頃、世界中で混乱が生じているに違いない。


「ねぇ……これ、本当かな?」


すっかり顔を青くした和花が、恐る恐るそう尋ねると、ルーナは苦々しい表情でそれに答えた。


「……間違いないでしょうね。ふざけたヤツだけど、ウソをついてるのは見たことがないわ」


「これがマジなら、明日、東京に敵が攻めてくるってことになるけど。……そんなこと可能なの?」


琴音の疑問に、ルーナは答える。


「不可能じゃないわ。リ・ヴァースには、転移装置があるもの」


「そんな!?」


思わず腰を浮かせる和花に、ルーナは冷静に返した。


「安心しなさい。転移隧道(ワープトンネル)が復旧していたらまずいけど、今リ・ヴァースが稼働できるのは精々転移門(ワープゲート)が数機ってところね。侵攻は限定的なものになるはずよ」


ここでルーナは、和花のことを見据えた。


「……いい、ノドカ。明日の12時、東京は未曾有の大災害に見舞われるわ。でも、アナタだけが、それを救えるの。ーーノドカ、東京を、守るわよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ