3 期待を込めていざ会談へ
イルミナ王国の島の大きさは四国より小さいと思ってくださいな
「まさかこんなにも早く接触できるとは」
「ええ、日本語も通じましたしラッキーです」
「ところで明日、どうするんです?」
「防衛大臣の私が説明いたします。まず入港するのは第6護衛隊のおおなみと巡視船みずきです。そして離れたところに護衛艦いずもとまや、あまぎりを配置します」
「外務省としては優秀な人物を派遣する予定です。主に双方に敵意はないことと、互いの国についての情報交換などを行います」
「・・・後は任せる」太田首相は会議から退出する。
太田首相は内心「面倒くさい」と思っていた。今回の出来事で国内外からいろいろと連絡があるほか、中国による影響で有事の可能性が高くなってきているのだ。ここで中国が介入してくればさらにややこしいことになる。他国が介入しないように自国だけで問題を片付けたいところである。
そして今日の記者会見で島に国があること、そして明日、島で会談が行われることを正式に発表した。
このニュースには世界中が注目し、各国のテレビ局がヨウチューブにあげた記者会見の動画は多いところで3億回以上再生された。
「父上。どうするの?」
「う、うーむ。相手は魔法の使えない劣等種、敵の艦船を見るに、負けないことはないと思うがな」
「父上、私はあの国の人たちと仲良くすべきと思っています」
「何故だい?」
「女の勘ってやつです」
「しかしな、こちらが下に出ると相手は調子に乗り出すだろう。相手は魔法が使えない。勝ち負けはすでに決まっているのだ」
「確かにそうだけど・・・」
「もう、外務省に伝えてある。心配せずに見守っておこうではないか」
「うん」
イルミナ王国会議
「国防大臣と外務大臣、受け入れ態勢は整っているのじゃな」と右大臣が声をかける
「もちろんであります。下船後海軍司令部に誘導する予定です」
「えぇ、こちらも優秀な人物を連れていきます。魔力がないみたいですしあちらの技術力を知りたいですからねぇ」
「くれぐれも相手を怒らせるようなことはするなよ」俺は警告する。怒らせて戦争状態になれば、我々軍が動かなければならないのだ
「もちろん。どちらが上か教えてやるだけですよ~」
外務大臣エマーソンが悪魔のような笑みを浮かべる。この外務大臣は厄介だ。王がヤマルになった直後、いち早くヤマルの方針に賛成し、外交によって大国との衝突をかわしながら、小国を脅す。野心的だ。今回魔法が使えないと知ったことで調子に乗っているのであろう。それに、昨日の会議に出席していないため相手を見たことがないのだ。ヤマル王は少し敵対派に傾いている。イザイナ王女は協調派だ。
王国は現在、協調派と敵対派で分かれている。軍内には昨日の映像やハーグレーの証言によって協調派が多いが、外交や国の方針に強い権力を持つ外務省や貴族では敵対派が多い。プライドが高いやつらが多いのだ。明日の会談に私は出席することができない。どうか問題を起こさないでくれ…と願うばかりだ
巡視船みずき
港が近づくとそこは中世ヨーロッパ風のいかにも異世界って感じであったが、軍艦を見てみると第二次世界大戦期のような軍艦が多く、戦艦とみられる艦もあった。
小型艦に誘導されながら岸に船を近づける。おおなみは何かあった時のために岸には近づいていない。
船から降りると現地の軍人に歓迎される。降りる際には艦長に「頑張ってください」と声をかけてもらった。非常にありがたい。そして今回派遣されるのは私、大月悟と外務省職員3人と防衛省の職員1人だ。
「こちらへどうぞ」と部下が海軍省の施設にある会談室に案内する
先ほど窓からさせてもらったが、わが国の艦船と比べて大きくない。白い船はともかく、奥の灰色の船も全長は駆逐艦と同じぐらいだろう。ここで下に出れば相手は調子に乗ってくる。相手は3人。まったくと言っていいほど魔力は感じられない。しかも耳の形が我々とは全く違う。服装は我々とは違い紺や黒などと言った落ち着いた感じの服装だ。だが魔力をもってないやつは劣等種。そんな奴らに譲歩などありえない。まったく軍の奴らは何をやってるのかねぇ。
「お会いできて光栄です。私は外務省の黒田と申します」
ちゃんと礼儀がなっているではないか。ここはちゃんとした振る舞いをしよう。
「どうも、外務大臣のエマーソンといいます。よろしくお願いいたします」
「外務大臣自らですか、ありがたい」
「いえいえ」
相手方の顔が少しだけ緩む。緊張が解けたのだろう。
「で、本日はどのようなご用件で?」
「はい。我々はここから北に約230キロメートル先にある国、日本国からやってまいりました。今回接触した理由についてですが、数日前に我がEEZ内に島が出現し、調査を行っていたところ、貴国の艦隊と接触し現在に至ります。我々としては貴国の情報について詳しく聞きこむとともに、この星について少しばかりの説明等を行いたいと思っております」
いくつかわからない単語が出てきたが、ここは我が国についてきちんと教え、上下関係をはっきりさせようではないか
「えぇ、わが国についていくつか説明をさせていただきます。国の名前はイルミナ王国。現在は島ですが、ここに転移する前は大陸の一部でした。国王にヤマル様が即位してから、急激な発展を遂げ世界ランクは3位と列強に上り詰めることができました」
「なるほど、それは素晴らしい王様なのでしょうね」
「ところであなた方の世界には魔法がないとか・・・」
「えぇ、魔法という言葉はありますが、現実には存在せず空想のものと思われています」
「なるほど、あなた方はこの世界における魔法について詳しく知っておられるでしょうか?我々の魔法と、あなた方の世界で語られる魔法について少し比べて観たく思いましてね」
答えたのは黒田という人物の右にいた体格が少し大きい男だった。
「私なら少しは答えられます。例えばけがを一瞬で回復出来たり、手や杖から火球や風など様々な魔法を生成できるという風に語られています」
「それとほとんど同じですね。他にも様々な魔法があります。私も魔法が使えるので今ここで見せてあげましょう」
私は掌をだして魔力を込める。すると掌の上に火球が生成される。そして彼らの前で大きさなどを変えて見せる。うふふふ、驚きすぎて口があきっぱなしじゃないの。
「どうでしたか?」
「す、すごいですね。本当にあるとは」
「では、我々は次のことを日本国に対し申し上げます」
「はい?」相手はさらにポカーンとしだす。ここで追い打ちをかけてやらねば
「まず、日本国は我が偉大なるイルミナ王国の従属国になること、そして、国民の一部を奴隷として我々に無償で提供することだ」
先ほどまでしっかりした態度だったが、いきなり態度が変わり、何かと思えば日本が従属国?奴隷?ふざけるな。
「すみませんが、その件について一度我が国に戻り検討させていただきます」
「ほう?このイルミナ王国を待たせるのか?魔法も使えない劣等種が調子に乗るな」
「では、こちらからも言わせてもらいます。わが日本国を下に見るな」
「フフフ、言うではないか。明日、艦隊を引き連れてそちらに向かう。我々の要求に応じるならば反撃せずに白旗を上げて待っておけ」
「それは宣戦布告ですか?」
「ああ、そうだ」
「そうですか。残念です」
我々は黙って退出し、ささっと巡視船に乗り込み出港するのだった
アハハハハ!さっさと要求をのめばいいものの、拒否した上に言い返してくるとはな。流石劣等種だな。あの国が手に入れば私は国の英雄と拝められるだろう。
「ええ、そうですね」
「早く次の日になってほしいものだな!」
外務大臣のエマーソンは部下と話しながら上機嫌で海軍省の施設から出ていく。
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12月17日一部修正しました。




