平凡な男と平凡な女
220813
かつて人間は神に本を捧げ、神はその中から三冊に魂を宿したと言われている
そして選ばれた作家の土地には豊穣が約束される
一面のラベンダー、魅惑の鉱石、滝のような水源
数千年毎に入れ替わるが、神はその土地のものを神物として取り扱い奪い合う人間に辟易もしていた
「莫大な力さえあればこれは収まるのだろうか」
三冊の本に宿された魂に、一人の無邪気な女がいた
白い髪に、可愛らしい薔薇の眼を添えて
青い蛇の神は、彼女を愛してしまった
彼女の回りでは魚がよく捕れた
蛇の神は何とか彼女を天界に保護していたが、彼女と共にあることは出来ずにいた
それは彼が神で、神が消えてしまえば下界には大きな影響を与えてしまうからである
天には門が二つあり、ひとつは転生の門
転生の門は神以外の魂しか通ることは出来ない
次の魂を紡ぐ門だからである
もうひとつは太守の門と言い、神が死ぬ時にその力を地上へと分け永劫の、復活のない眠りにつく門である
勿論、人間や他の魂もそこを通ることが出来るが、神と同じようにエネルギーとなり消えていく
「もっと体力のエネルギーがあって全てが安定すんならこんなことしなくてもいいんだがな」
気だるげな門番はそう零していた
地上には未だ争いが蔓延っている
白い女は、今日も無邪気に蛇の神に寄り添っている
蛇の神は何も言わなかったが、彼女に最高の魚を咥えさせて、その肩をそっと抱いた
彼だけが太守の門へ向かおうとした時、隣には何故か女がいた
少しだけ目を丸くした神は、そのまま彼女の事を抱きながら門を通って行った
「神の供物と神が消えた時、ようやっと本の魂も報われたのだ」
車の音がする
騒がしい日常の中で、平凡な男と平凡な女が楽しそうに笑って




