こんなの聞いてないよ……。
250312
「残念!彼は元からおかしいのです!こんな私を仲間に引き入れてるのですから!」
それは同感だ。僕だってこんなことになると思っていなかったんだから。
俺はタダ適当な大人を見繕っただけだと言うのに……。
「主。次に狙われるとしたら私です。既にもう色が見えない。視覚を失った影など捨て置いてください」
「…………」
ああほら、こっちもまた死の匂い。
本当に、本当に適当に選んだんだ。
思い返せば数ヶ月前。僕は旅の仲間を探していた。
大広場で演説をすれば、僕に目を惹かれるのは必至。
短い黒髪を整えた僧侶、手下を連れた異国風の男。金髪の青年、虹色の怪異。
儀式をして旅立たねばならなかった。
パールを縫いつけた薄桃の絹を敷き詰めた地面。
僕は生贄としてこの地を後にするんだ。
だからこそ意表を突いて怪異まで連れてったのに。
「まさか怪異が一番まともだとは思わなかったな……」
ピアノに乗り移った虹色が心配そうにこちらを気遣っている。
金髪の青年はせっせと落とし穴を掘っているし、僧侶の子はアーマーぶん殴りスタイル。
異国風の男は何?なんでそんな強いの。
もう……もう…………………………。
「はぁぁぁ……」
まあ、こんな旅も悪くはないか……。