146/152
ぼんぼり
250227
吊るされたランタンのように視界が揺れている。
空は赤黒く、もう夜にさしかからんとしている。
早く帰らなきゃ。
友人宅のマンションの前で、ぼんやりと空を眺めていた。
あまりに帰りたくないものだから、アイス屋で買ったアイスを持って思わず戻ってきてしまったんだ。
学生服の私は何を思っていたのだろうか。
コンビニの前ではあの子にそっくりな誰かが立っていて。
でもそれはあの子じゃなかったから声はかけないでいたの。
可愛い恋人のLINE。相変わらず変わらない。
友人は社会に絶望している。
空は変わらず赤黒い闇を呈している。
私は変わらず駅に向かわねばならなかった。
帰りたくないと、思っていた。
私の帰る場所はもうそこでは無いのだろう。
私の帰りたい場所はもうそこにはなかった。
私の帰る場所は。