ツクール1.07
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お化け屋敷の話を聞こうか。
目の前には黒革の手帖。
とある少女の体験記。
古びた屋敷だった。旅館にも見えるし、美術館にも見えるし。
本館一棟、別館はその隣。
なんで入ったんだろう。
ごちゃごちゃとしていて落ち着かなかった。
それぞれに意思がある気がして。
絵画には絵画の、カレンダーにはカレンダーの。
それぞれに何かがあったんだ。
沢山のマネキンがあった。整えられた警備員のような。
おはじき、そろばん、おてだま、あやとり。
幼い子が楽しむように。植物は見守っていた。
地下のプールには主が潜んでいる。
グランドピアノののある部屋はカレンダーを用いた壁パズル。
目の配置の狂った少女の楽しみな場所。
奥の部屋では魔物が眠る。
嗚呼、折角立て直していたのに。
パズルは崩されて、少女の身体も崩された。
マネキンの配置はバラバラに。館長の男は恨めしげに白い顔を晒して。
絵画は全部黒くなった。女はそれを黙って見ていた。
料理長は何処にもいなかった。
逃げなければ。
古き良き魔物。古き良き遊び。
その全てが襲いかかる。それでも壊したくはなかった。
一匹のネズミが叫んだ。この手を取れと。
私はガラスのお猪口を抱いて、駅のホームに飛び込んだんだ。