ナルシズムの本質
240710
春夏秋冬髪の色
水鏡
今の私の髪は赤なのだから、それに緑を混ぜたらどうなるのだろう?
夏の精はキラキラとした目で私を見ていた。
「おお、綺麗な金になりました!色ムラがありますからもう少し綺麗にしましょう」
髪長の長は夏にそれを任せると愉快そうに笑った。
「次は赤と金を混ぜましょう。その後に冬の青を」
春の精は朗らかに微笑んだ。
長は言う通り混ぜ込んだ。
「俺の青は上手く混ざるだろうか」
それは分からないと笑い、美しい髪を染めていく。
「見ろ!こんなにも漆黒!お前の髪まで黒く透き通っている!」
長は嬉しそうに笑う。
癖毛の毛質がある冬までそれが無くなるのはどういう原理なんだろうか。
「泡霊が苦しんでいます。できるのはあと一度のみかと」
神官が我々に忠告を放ったので、泡霊に会いに行った。
彼は人頭の巨大な金魚で、その身体はゆうに人のそれを超え、空を覆う。
「ううん、ううん」
脂汗を浮かべて泡霊は悶える。
「男の髪ばかり、男の髪ばかりだ。嗚呼、」
我々は顔を見合せた。
「香水仙の花は癒しの香りだ」
私の口の中に咲き誇る一番大きな花を水槽に植え替えて、長は満足そうにしている。
泡霊はずっとその香りを嗅ぐために張り付いているし、これでよかったのだろう。
全く……。
白と黒の幕は何時だって、人の死の中にあるというのに。