119/152
水竜の槍
240703
お気に入りの本を読み返す夢を見たんだ。
茜。
その村では女は全て面をつけられ、男もまたそれに従い面を付けさせられていた。
白毛に顔の赤いヒヒが村を牛耳っており、男が住む社にヒヒの群れも居た。
女は男を誘惑せぬ様に。
男は女に騙されぬ様に。
契りを結んだ男女も離され、腹の子を撫でながら泣いていた。
「(なんだそれ。私の村では女は全ての源だ。)」
茜はそう、怒りを燃やした。
全ては女からい出、男は種であり、女は地であった。
茜の村ではそれが絶対だったのである。
まず、考えた。
ヒヒは酒をよく好み、深酒をしては寝静まる。
白毛のヒヒだけは警戒心が強く、差し入れ棚のものしか食わぬ。
茜は身体が小さい。
であれば、
「女は臭くて堪らんな!やはり過ごすなら男であろう。」
ヒヒの酒盛りの声が聞こえる。
「(ふざけてんな。)」
茜はまた怒りを燃やし、時を待ち続けた。
全てがね静まり、白毛のヒヒが差し入れ棚を開けるその時まで。
この村は装飾と、美しい女と、美味い魚のある土地が本来なのだから。