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幸せな話
240620
世界が夢に塗れて、それで。
盲目の狙撃手は頼まれ事をしていたの。
それを私の手で殺すはずだった。
けれど彼は、目が見えなかったのね。
私の肩を抱いて親しげに話しかけて。
その温もりが何となく心地良かったのを覚えている。
彼女が暗殺者なのは知っていたよ。
僕は見えないけれど勘が良いんだ。
でも僕は彼女の事を気に入ったから。
それ以外を殺してやろうと思ったんだ。
警察署の前に連れていかれて、そこに隠れていろだなんて馬鹿げたことを言うのよ。
私に頼み事をした人はきっとこの近くにいるはずなのに。
大丈夫。
全部もうわかってるからさ。
川の辺でガンに化けた男を殺したよ。
リスに扮したネズミは僕を見て手を上げていた。
大丈夫。
僕が全部やってあげる。
一人の男を連れた彼が帰ってきたの。
何があったのか全然想像もつかないけれど。
彼はまた私の肩を抱いて。
平穏の中に消えていったわ。