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幻夜
240601
幸せ、幸せ。
幸せ。
幸せに浸ったまま、ここで。
彼と出会ったのはいつだっけ
彼の胸にはいつも月のようなペンダントがぶらさがっていて、それが酷く印象に残っている
彼の一族は有名な神族で、彼の強さもピカイチの証明がなされていて
私なんかは手の届かない、雲の上の人
私ね、いつも死にたかったの
誰も救ってくれないなら、誰かの為に散ってしまいたかった
彼が私に手を伸ばした時、私は迷わずその手を取った
彼の心臓は月で出来ている
彼は結婚なんかしたくなかった
成人の義を迎えれば、彼の魂は真に神と同化しひとつになる
そんなの、彼は耐えられなかった
いいよ。
私の肉と貴方の心臓を混ぜて、砕いて。
ひとつになろう
そうして、そのまま
月が瞬く。
幻影の宿で、桃の花を待つ
幸せだね
幸せだわ。
朝日が昇る前に。