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熱病
240510
息を潜めて。崩れ掛けの社と、下卑た笑い。
「重箱法師が出たぞォ」
黒い巨体。分厚い皮膚。赤子のように地を這い。
袈裟を着て、ずりずりと。
私達を。
私だけじゃなくなってしまった。
「静かに。声は出さないで」
私と貴方、猫の親子と。
まだいる、まだいる。
「火の家系の家族は多方人喰いになってしまった」
「あれは味方では無い」
嗚呼、目を見開いた法師が手を伸ばしている。
狭い入口から一生懸命に。
早く、破られる前に。
早く、早く。
「ンァ、カズォだよォ。父さんをナ、父さんをナ、」
「喰っちまったンだァ、」
可愛らしかったはずの子供が泣いている。
息を飲む彼の手を引いている。
「振り向いて欲しい人には振り向いて貰えないのね」
「どうでもいい人ばかりで」
彼女の嘆きが聞こえる。
どうしてこんなことになったのだろう。
どうして、