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愛を知らない魅了の魔女は、王太子に復讐する  作者: ぷよ猫


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11 有力候補の令息

本日7回目の投稿です。

 アリーは、無闇矢鱈と魅了をかけることはしなかった。

 ジェラルドやポリーヌに『お願い』して誕生日パーティを開くこともなかったし、一族の誰かに蔑まれても無視した。

 メイドの何人かと老執事のギヨームを取り込んで、今までよりも少しだけ快適に過ごせるようにしただけだ。


 ――――魅了を使う相手は選んだほうがいい。


 パメラの忠告を忘れたわけではなかった。派手なことをすれば怪しまれると、アリーにも想像できたのである。


 この頃のアリーは、一族の令息たちと接する機会が増えた。

 十三歳になったミシェルを目当てに、婚約者候補の令息たちが訪れるようになったからだ。二人きりにさせないようにと、茶会に同席させられているのだ。

 ミシェルを妻にする者が、いずれ一族を支配する。夫の座をかけた戦いが本格化したのだった。

 優秀なだけでは足りない。ミシェルに気に入られなくてはならない。

 候補の令息は皆年上で、十五歳から二十歳まで六人もいる。

 アリーからすれば、二十歳の男が十三歳の少女を口説くなんて「気持ち悪い(キモイ)」の一言である。


「年の差婚は、よくあることです。ギャロワ伯爵夫妻なんて二十二歳差ですからね」


「ほとんど親子じゃないの」


「再婚ですよ。愛妻に先立たれ、ご子息がいらしたのですが病でお亡くなりになったのです。跡を継げる者がいなくなり、若い後妻を娶られました。家が断絶しないように」


 血を残すための政略結婚だと、ギヨームは言う。

 直系の嫡男に限るなど、爵位継承に細かい制約を設けている国もあるなか、この国では嫡出子、庶子ともに継承が可能だからまだよい。

 ボージェ家に至っては、爵位はまた金で買えばいいという考え方だから、血統よりも実力重視だ。


「わたくしでも跡継ぎになれるかしら?」


「難しいでしょうね。ボージェでは本家に娘しかいない場合、一族から優秀な男子が選ばれます。とはいえ、奥様(ポリーヌ)のご実家も無視できませんので、やはりミシェル様が、一族のなかから婿を取られるのが最善でしょう」


「そうなのね。ちなみに婿の最有力候補はどなたなの?」


「バジル・ガルニエ様ですよ。ミシェル様のお気に入りで十七歳と年回りも近く、学園では学年トップの成績です。このままいけば首席で卒業なさるでしょう」


「わたくしの髪を引っぱった、あの意地悪な人ね。最悪だわ」


 以前、庶子だと髪の色をバカにした長身の子息である。誰が当主になろうとアリーには興味がない。しかし、バジルがその座に就くのは癪に障った。

 それに令息たちからチヤホヤされているのをミシェルが見せつけようとするので、いい加減うんざりもしていた。

「わたくしに会いにいらっしゃるのだから、お義姉様は隅っこで静かにしていてね」「その服、派手じゃないかしら」「シモンやエリクに色目を使わないで!」と、身に覚えのないことまで文句を言うのだから堪らない。

 アリーは義妹のことが苦手になっていた。



「どういうつもりなのよ、お義姉様!」


 ある日、いつものように茶会に出席したあと、アリーはミシェルに絡まれた。


「どう、って?」


「紺のワンピースを着るようにお母様に言われていたはずよ」


「直前に汚してしまって、慌てて着替えたの。ブルーだから華美ではないでしょう?」


「でも……」


 ミシェルが口惜しそうに唇を噛んだ。

 鮮やかなブルーに白い刺繍の入った清楚なワンピースは、華奢なアリーの可憐さを際立たせていた。

 それだけではない。

 茶会には二人の令息のほかにバジルもいたが、アリーは積極的に話しかけた。

 場が盛り上がり、今までどこか見下すような態度だった彼らが、明らかにアリーに見惚れミシェルよりも気にかけていた。

 ミシェルはそれが不満なのだ。

 アリーは彼らに魅了をかけた。二人の令息には弱く、バジルにはそれよりも少し強めに。

 その後も茶会のたびに同じことが繰り返され、令息たちは熱のこもった瞳でアリーを見つめるようになった。


 そして、とうとうミシェルが癇癪を起した。


「お義姉様は、もう茶会に来ないでっ!」

 

 あまりの剣幕に使用人たちは驚いて足を止め、ある者は手を滑らせて皿を割った。


「どうしたの? わたくし、何かしたかしら」


「お義姉様なんて……お義姉様なんて、庶子のくせに出しゃばらないでよ」


「悲しいわ。そんなふうに思っていたのね」


 アリーが長いまつ毛を伏せると、周囲から同情的な視線が向けられた。と同時に、ミシェルを見る目が批判的なものへと変わる。

 令息たちと過ごすうちに、日に日に傲慢になるミシェルは、使用人たちから快く思われていなかった。


「一体、なんの騒ぎなの?!」


 ポリーヌが駆けつけ、ミシェルを抱きしめる。そして、アリーをキッと睨みつけた。


「わたくしは、お茶会に出席しようとしただけです」

 

「もう結構よ。あなたは部屋に戻ってちょうだい。茶会にはわたくしが顔を出しますから」


「はい、お義母様」


 アリーは大人しく踵を返した。


 以来、茶会に呼ばれることはなくなったものの、魅了の効果は続いた。

 バジルを始めとする婿候補の令息たちは、アリーに会おうとして何度も屋敷に足を運びポリーヌに阻まれていた。

 そして彼らは、成績の順位を大幅に落とした。恋わずらいで何も手につかず、ぼうっと呆けているのだと分家の夫人たちが噂している。

 

「婿の最有力候補が、エルノー家のマルク様に変更になったそうですよ」


 候補者六名のうち五人も脱落してしまったため、ほとんど決まりだとギヨームが言う。

 唯一魅了をかけなかったマルクは小太りなので、ミシェルは嫌っている。

 ちょっとした意趣返し。アリーは胸のすく思いがした。

 


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