夏、星が散る夜に美しい花の情熱を。
夢が出来た日。私の人生に色が与えられた日。あの日は、みんなが華やかに着飾っていた。
お姉ちゃんは、ガラスみたいに綺麗な瞳に、空に咲いた花が写して、頬を赤くして楽しそうに笑っていた。
私は、慣れない浴衣に戸惑いながら、それでも、お姉ちゃんと上を交互に見ていた。
夏祭り。家族と行って、両親と二人、はぐれたときだった。
和が町中を美しく仕立て上げてた。珍しく外に出れたお姉ちゃんと一緒に見れたのも相まって、色鮮やかに記憶されてる。
花を模した髪飾りと、くすりとお上品に、でも少女のあどけなさを含んでいたお姉ちゃんが、とっても綺麗だった。家族としてではなく、ただただ美しいものに見とれる人間として、お姉ちゃんを見ていた。
私は、今に至るまで、あの時以上に心臓がバクバクした時がない。好きな人と結ばれた時も、緊張と不安と恐怖で心と体がぐちゃぐちゃになりそうな時も、あそこまでドキドキしなかったんだ。
花柄の見事な浴衣を着こなしたお姉ちゃんが、花火にはしゃぐ姿を見て、胸が苦しくなった。
涙がこぼれそうになって、お姉ちゃんを心配させないようにこらえた。がんばった。
柵に小さくて白い手を添えてた。その一方の手を、空に浮くカラフルな火に向け、人差し指を精一杯空に近づかせた。
「見て! 夏夜奈。すっごい大きいよ!」
「うん! すっごいきれい!」
夜なのに、昼間のように輝く空に照らされて、お姉ちゃんの顔が明るく灯る。
久しぶりにお姉ちゃんの本当の笑顔を見た気がして、私は絶えず笑っていたと思う。お姉ちゃんと二人きりの夏は、ひっそりと、今も脳の中に根付いていて、私の全てに影響を及ぼしていた。
例えば、性格。大切な人が輝いていると、自分も笑顔になる。たとえば、選択。将来の夢に、必ず私は夏祭り関係の仕事を書いている。
そして、中三の進路についても、例外ではなかった。
「私の夢は、髪飾りを作る職人になることです。その為には――」
現代で、この夢は参考資料も少なくて難しいだろうけど、お姉ちゃんの濡れ羽色の髪、そして顔を彩った髪飾りを忘れられなかった。
悩んだ。浴衣、花火、そのほかにも沢山、あの夜を飾るものはあった。でも、真っ先に思いついたのが髪飾りだった。
周りはきっと、静かだけど、私の夢なんか聞いちゃいない。現にほら、私の方をしっかりと見ている人なんて数えられるほどしかいない。二、三人くらい。
でも、それでいい。これは私が私に向けて発表するもの。
ちかちかと、瞼の裏であの景色が蘇る。
緊張していた発表は、やけにあっさりと終わった。
次に、あの夏を思い出したのは、専門高校に通っていた時だった。
職人の方のイベントや、授業を聞いて、見ていく中で、何度も目にすることになった。髪飾りによって、小物によって、身に着けた方の魅力が何倍にも増え、笑顔が映える瞬間。
素晴らしい思い出に寄り添う、繊細で美しい小物たちが、人の手によって細かく作り上げられていく。
一目見て、ぱっと表情が明るく灯る。小物を見つめる目が、きらりと星にも負けずに光を帯びる。
その、一連の流れに、それを可能にする技術と職人に、すっかり私は魅入られてしまった。その流れに、お姉ちゃんの綺麗な姿を思い出した。それに、より、将来の夢に熱が入った。
毎日毎日、勉強をして、家では実際に作り、たまに学校でもやって。そんなある日、私はクラスメイトに話しかけられた。
「ねえ、一ノ瀬さん。一ノ瀬さん、とってもうまいから、僕に教えてくれないかな?」
それが、彼との初めての会話だった。
主語がなくても、簡単に伝わる。分かる。だからこそ、
「先生の方が教えるのも、技術もうまいでしょう?」
なんで私? そう思って出た言葉だった。でも彼は、質問に答えず、ただ、お願い、とだけ言った。
「いいけど……じゃあ、とりあえず、貴方の名前を教えて?」
「え? ああ、僕は桐ケ谷 凛久」
「へえ。えっと、じゃあ、今週末、あの、……学校から一番近い工房、あそこで。なんていうんだっけ?」
えーと、えーっと、と頭の中から全力で名前を探すけど、思い出せない。
「……とにかく! あそこ、私今週末借りてるからあそこでやろう」
私の頭は、全てお姉ちゃんと髪飾りについてで埋まってるから、工房の名前を覚えておけるほどがらがらじゃあないんだな。
うん。ありがとう。そういって彼は席に戻っていった。なんだろう。妙に疲れた。
私は、参考書を開いた。
窓からは、夏特有の元気な太陽の光が教室に届いていた。
あっという間に時間は経って、週末。
準備完璧な私と桐ケ谷君。工房内で、一から揃えたらいくらになるのだろうか、というぐらいにはパーフェクトな用具たちが整頓されていた。
私の知識が詰まったノートも、全部持ってきた。何冊だろ。小4くらいからだから……めっちゃぶ厚いノート五冊分? まあ、そんなことはどうでもいい。
「うへへ。本格的に作れるや。桐ケ谷君桐ケ谷君。具体的になにを教えてほしいの? 今の私なら、何でもどんとこいよ!」
一週間ぶりに触る器具たち。うひょー。この感覚癖になるー。
ニヤニヤと気味が悪いほど笑っていたのだと思う。困りと引きが混ざった顔で、桐ケ谷君は口を開いた。
「ああ、一ノ瀬さんの作品は、いつも――」
そこからは誉め言葉の嵐だった。形が綺麗で、とか、デザインももちろんすごいんだけど、そのあと、実物はもっと繊細に、数が多くて、でも全体のまとまりは失ってなくて、コンセプトとかもきちんと伝わるようになってるし……など。
そこまで褒められると、恥ずかしくなるけど、それよりも、桐ケ谷君の目がエグイ輝いてた。うーん。
嬉しいんだけど。嬉しいし、なにより。
「桐ケ谷君は、やっぱり髪飾りが好きなんだね」
私の声に、桐ケ谷君は驚いたように口を閉じた。そしてまた話す。
「……うん。まあ、小学生の頃とか、それこそ中学の時とかは、クラスメイトにからかわれたりしてたんだけどね。好きなものは、胸張って好きだって言いたいから、そう言えるだけの実力をって、逆に燃えてたから、それはそれでよかったのかもしれないけど」
でも、と桐ケ谷君は言葉を繋いだ。
「やっぱり、悲しいかったかな。それに、専門来てから、僕以上にすごい人が居たから」
「え? だれ?」
「この流れで気付かないの……? 一ノ瀬さんのことだよ。いつも先生に褒められてるし。成績もいいでしょ」
なんとなく、静けさのある声にあきらめが混ざった気がして、いつの間にか黙ってた。
「ごめん。時間取らせちゃったね。それで、どうすればあんなに綺麗に出来て、細かいものが作れるのかって気になるんだ。僕は、どうしても少し歪んじゃったり、同じ形の花びらにできなかったりするから」
すぐにさっきの声に変わって、私は普通に教えた。久しぶりの道具はサイコーでした。
それから、暗黙の了解のように、私たちは月に一度、工房で一緒に作品を作るようになった。
今年も暑い真夏が過ぎ去っていった。そろそろ、秋の気配がしてくる感じ。
私が一番好きなのは夏だからかな。すっごく短く感じた。今年も、夏休みは楽しかったし、お姉ちゃんはあの夜と同じように綺麗だった。
夏の見事なサルスベリが、窓の外でさらりと風に乗って流れていく。
それが、あの夜の空に打ちあがった花火に思えて、笑みがこぼれる。
視界の上側に黒いものが見えて、そろそろ前髪切らないとなー、なんて考えながら、手元のノートはどんどん文字で埋まっていく。
先生の言葉を一言一句聞き漏らさず、そして忘れないように、忘れても見返せるようにシャーペンを動かす。
このために文字を早く綺麗に書く練習もした。
早く学ばなきゃいけない。早く完成されなきゃならない。時間なんて限られてる。学生のうちにできることはやっとかなきゃ。
汗でノートが濡れた。もう少し、涼しいと過ごしやすいんだけどね。
チャイムが鳴った。今日はこれで終わり。分からないところはなし。ならさっさと帰って復習予習しよう。
「あ、待って。一ノ瀬さん。あのさ」
勉強道具を鞄に突っ込んで、急いで教室を出ようとした私はその声に振り返った。
「どうしたの?」
なにか、声をかけられる要件があっただろうか。首をかしげた私に、いつもの淡い笑みを浮かべながら、桐ケ谷君は言った。
「今度、一緒に夏祭り見に行かない? 普段、着物とかと合わせてもらった髪飾りとか、あんまり見ないでしょ。だから、全体の雰囲気とかを考えながら、どんな風にすればよりまとまりつつも彩りを加えられるか、とか、結構為になることもあると思うんだ」
長いまつ毛が、細められた瞳に薄く被さって、まるで髪飾りのラインストーンみたいだと思った。あんなにキラキラ輝いてはないけど。輝き具合で言ったら、ちょうど蜘蛛の糸ぐらいかな。
「……一ノ瀬さん? 生きてる?」
きれー、って思ってぽけーって見てた。
まじまじと、桐ケ谷君の目を見る。
桐ケ谷君の目は、困惑で彩られていて、その中に、不安と呆れが混ざっている感じだった。
「ごめん。桐ケ谷君て、蜘蛛の糸みたいだね」
「どういうこと?!」
不安が消えて、困惑と呆れが強くなった。人の目って、面白いな。帰ったら、今作ってるの仕上げて、その次に髪飾り作ろっと。桐ケ谷君用に作るのもいいかもしれない。
「いいよ。一緒行こ! 今週末ね!」
髪飾りのことを考えてると、ついワクワクして、ニヤニヤしちゃう。桐ケ谷君から見て相当気持ち悪いと思う。
そんな私とは大違いの綺麗な笑顔で、うん、と桐ケ谷君は頷いた。
「了解。じゃあ、BDって分かる? あそこで、髪飾りも売ってるらしいから、BDでいい? 後、五時ぐらいから始まるライトアップも綺麗らしいから、そのぐらいの時間にしよう?」
「うんうん。合点承知の助~」
「……もしかして昭和に生きてるの?」
まあいいや、と桐ケ谷君は話を丁寧に置いといた。素晴らしい。ベリーグッドだね。
「引き止めてごめんね」
「全然いいよ~。誘ってくれてありがと!」
「……うん。こちらこそ、ありがとう。じゃあ、また明日」
「またねー!」
体を少し右に傾けながら右手を振って、視線は廊下の壁に。
静かに微笑む桐ケ谷君は、やっぱり綺麗だと思った。
具体的に言うと、私的綺麗さランキング、お姉ちゃんと髪飾りが同率一位で、夏が二位。その次にお母さんとお父さんが同率三位。その次ぐらい。小学校の頃から、三位以降埋まってなかったのに、桐ケ谷君のおかげで四位が埋まった。
帰り道、いつもなら髪飾りの事ばかり考えているはずなのに、桐ケ谷君の目ばかり思い出して、綺麗だったなーと頬をニマニマさせてた。多分私が中年のおっさんだったら、キャー変態! って叫ばれてもおかしくないレベル。まあ、年齢と性別で気持ち悪さが変わることがおかしいんだけど。
私、若干遠巻きで見られた気がする。あと、苦笑いの人が多かった気が……。年齢も性別も関係ないかもしれない。ごめんよ。
そうしているうちに、気づけば家は目の前に。
専門に入ってから一人暮らしを始めたんだけど、すぐにゴミがたまるし近所に怒鳴られるし、正直めっちゃ後悔してる。
ただいまー! と元気にあいさつして、鏡を見てびっくりした。
私の顔、すっごい赤い。
なんでだろう。暑かったからかな。残暑が厳しいもんね、最近。
……原因が、あっさり分かった。
「あー! これ真冬用じゃん! そりゃ、街の人もあんな顔になるよねー」
あちゃー、と私は頭を抱えた。
そんなことより髪飾り作りません? と職人気取りの私が言った。
「……よし! 髪飾りつっくろー!」
真冬用の上着を脱ぎ捨てて、複雑で音がうるさくてでかいやつを使わなくても出来る作業をコツコツとする。
勉強して、知らなかった知識を知るのも楽しいけど、やっぱり作ってる時が一番楽しい。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、はっと我に返って時計を見たときにはもう夜の六時だった。
急いで作業をやめて、自室からリビングに移動する。
昨日のうちに、面倒なご飯作りは終わらせてあったから、それをレンジで温めて、お箸をとって、手を合わせる。
ああ、もちろん、テーブルでね。
「いただきます!」
気持ちと誠意をもって言葉を発し、お箸でつつく。今日は魚。普通にばっと焼いてぴゃって味付けしたやつ。普通に美味なのですよ。
「はふっ。熱っ」
当たり前だけど、温めたばっかりだから熱いよね。
白いご飯を口に突っ込んで、ベロと魚の間に入れてクッションにする。白いご飯は冷た目にしといてよかった。
ご飯を食べ終わったら、雨戸を閉めてお風呂に入る。
びゃばーって汗と疲労を洗い流したら、パジャマに着替えて勉強開始。
「今日がここで……明日ここかな」
復習をするときにノートをざっくり見返す。大体のニュアンスが伝わってればいい。重要なとこはペンで線引っ張ってあるから、そこを音読したり、流し読みして理解を深めたり。
これが大体二時間かな。次に予習。
予習は、明日も復習するし、先生に明日習うし、ほんとさわりだけ。その方が理解が早い。
参考書を読んだり、ノートに本文を書き写したり。ここで大事なのが、授業で使うノートと書き写しようのノートを分けておく。じゃないと、私は読みづらかった。
これが大体一時間。
その他に課題やったり、学校で配られてない参考書とかやる時間が二時間。
合計五時間。これで、七時から始めるから、深夜十一時。眠い日は早めに寝ることもある。
勉強用具を片付けて明日の準備をしたら終わり。
布団に戻っても、いつも目が冴えてる。今日も、楽しかった。本当に、時間がすぐに去って行く。
毎日楽しい。大変さも一日をやりがいに変えるもの。
一週間が、あと三日で終わっちゃう。土曜日は桐ケ谷君と夏祭り行って、日曜日はお姉ちゃんのところに行こう。
暗い部屋の中で、頭は絶え間なく動いていて、結局寝たのは深夜の十二時くらいだったと思う。
「あのさ」
と、桐ケ谷君は前置きした。
「なんで、そんな、なんか、凄い、暑そうな格好しているの?」
あっという間に時間が過ぎて週末。夜、待ち合わせたところで、開口一番そう言われた。
私は自分の服装に目を向けた。
マフラー、ぶ厚いパーカー、普通のスカート、めっちゃ暖かいレギンス。
「うーん。なんでだろ。なんとなく?」
「僕に聞かないでよ。まあ、いいや。一ノ瀬さんが変人なのはわかってたことだし」
「失礼な偏見持たないでくださる? あれ、これ使い方あってる?」
「僕の方が聞きたいんだけど」
呆れたような笑顔が、やっぱり、やっぱり、すっごく、綺麗だなって思った。
「桐ケ谷君てさ」
「……嫌な予感」
「今にもかれそうな花みたいだよね」
「ああ、予感はあってた。完全にそれ、誉め言葉じゃないでしょ」
儚い雰囲気と、見ていると罪悪感が刺激される感じと、花みたいに綺麗だね的な意味でいったんだけど。
「うん。ライトアップ、評判通り綺麗だね」
「綺麗なのは君ですよ桐ケ谷君」
「なんて言ってほしい?」
「別にい? ただ感想言っただけですけどー?」
「小学校低学年男子みたいな……」
えっそうなの。今度からやめようかな……。
横に並んで、桐ケ谷君の顔を見て、相変わらず綺麗だな、とか、本当の事言っただけなんだけどな、とか思った。
楽しい時間は、当たり前だけどすぐに過ぎていくもので、気づけばもう、夜の七時になっていた。
「あのさ」
と、桐ケ谷君は今日、顔を合わせたときと同じ話の切り出し方をした。
「僕らって、付き合ってみてもいいと思うの」
「あははっ! いいよ~。青い春のページが真っ白とか、笑えないしねー。大人になってから、あの頃に戻りたいなーとか思っても無駄だし」
そんな軽い感じで付き合えるほど、桐ケ谷君と私は、別に大切でたまらないものがあるから。
私はお姉ちゃんと夏と髪飾り。
桐ケ谷君は、自分と冬と髪飾り。
互いを利用して、成長が出来るならそれでいい、くらいの付き合いだった。私は人に教えることでよりうまくなっていたし、桐ケ谷君は私に教えてもらうことでよりうまくなっていた。
それでも、互いを傷つけるわけじゃない。相手のことが、どんな意味であれ好きであることに違和感や疑いを持つことはなかった。
だから、上手くやっていた。
あの日の事は、いつだって簡単に思い出せる。夢がつぶれた日。世界が色褪せた日。
その日、私は桐ケ谷君と一緒に、お姉ちゃんのところに行っていた。
「……お姉ちゃん?!」
……真っ白で、何もない、冬みたいな病室。
お姉ちゃんの心臓が視覚化された、ドラマでよく見る変な機械。なんていったか、忘れちゃったけど。
私の手には、確かに髪飾りが握られていて、着物だってお姉ちゃんにあうの、桐ケ谷君に持ってもらっているし、私やっと夢が叶うと思って、急いでこっち来て……。
桐ケ谷君は、いつか見たときと同じ、静かであきらめの声をしていた。
「……一ノ瀬さん。後悔はしないでね」
「お姉ちゃん! 答えてよ!」
桐ケ谷君を無視して、ベッドに近づいた。
痩せて痩せて、あの夜の美しさは、もう、持ってなかった。
「ねえ、私、完成させれたよ。できたんだよ。小四の時、お姉ちゃんが二十歳未満で死んじゃうって分かってたから、すっごい頑張って、みんなが一生で目指すことを、私、に十歳までって、思って、」
「夏夜奈」
本当に、掠れて、ほとんど息だけだったけど、しっかりとした声は、お姉ちゃんで。
「夏夜奈。ごめんね。私、もう駄目。夏夜奈の夢をかなえてあげたか……」
咳き込んだ。もうやだ。私、頑張ったのに。
子供っぽかろうが何だろうが、なんでもいいから。
「お姉ちゃん!」
ああそうだ、名前を思い出した。心電図だ。それが、止まった。変わらなくなった。お姉ちゃん。
お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん。お姉ちゃん
ああ。私の人生は、なんのためにあったの? 私、私、お姉ちゃんに褒めてもらいたくて。
偉いねって。くすりとお上品に、綺麗に、褒めてもらえたら、それでよかったの。ほんと。
ああいや。生きて、生き続けて、それで、私の完成した髪飾りを、着物とかといっしょに着けてもらえればよかったの。
そのために、頑張ってきた。頭が悪いし、そんな時間がないから、医者になろうとは思わなかったけど。
なんで、こうなったんだろう。
お姉ちゃんが見れない後ろの窓で、夜に花が散っていった。
そして今日、あの日に得た本当の恋すらも枯れさせてしまう。
「別れよ。私さ、恋愛にほんと、向いてない」
「……ごめんね。じゃあ、これからはライバルかな?」
「そうだね。お互い、誰かを花咲かせるためにがんばろうね」
夜、花が散っていった。
後味が悪いけど、私の夏は、これで終わり。髪飾り職人としての私なら、もうちょっと後味いいんだけどね。
私の一番は、お姉ちゃんだったから、それ以外のことを愛すことが出来ないみたい。
それが私の、人生だから。
これからの、私の。