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プロローグ

「勇者セドリックの子孫か...よくここまで辿り着いたものだ。」

目の前にいる禍々しいオーラを放つ男は王座に座りそう言った。



かつて、魔界と人間界が相いれなかった時代。魔王は人間界を征服しようと世界を飲み込もうとしたことがあった。

その時立ち上がったのが、私セシリア・ヴァロアの先祖である勇者セドリックだった。

勇者セドリックが魔王を倒したことにより世界に平和が訪れた。


魔王の居なくなった魔界と人間界は平和協定を結び、魔族と人間は現在友好関係を築けている...はずだった...

魔界が人間界に牙を向ける恐ろしい存在だったのも1000年も前のことであるし

平和協定を継続するためにも、聖魔力を持つ人間が魔界に留学に行き交流も続けていた。

人間界で聖魔力を持つのは主に王族や勇者の子孫であるヴァロア公爵家である。

王族やヴァロア公爵家が魔界との交流を終え帰ってくる年には

勇者の帰還を祝うセドリック祭が王都で盛大に行われていたし

今、魔界からの侵攻を疑う国民はほとんど居ない。


(魔族にとって1000年は決して過去の時代の話では無いのかもしれないわ...)

目の前にいる男の禍々しいオーラに負けないよう、聖魔力を纏い聖剣を構える。

セシリアは眉間に皺を寄せ、鋭い目付きで男を睨みつける。

「いかにも、私は勇者セドリックの子孫ヴァロア公爵家長女のセシリア・ヴァロアである!」


1000年前魔王が世界を飲み込もうとした時、最初に魔界侵攻が始まった。

人間界の領域まで魔結界を広げ、魔界に近い村を飲み込み始めたのだ。

1000年間魔結界が侵攻してくることは無かったが、まさかセシリアの時代に魔界侵攻が始まるとは思わなかった。

現在、魔界付近の村が魔素に飲み込まれている。もちろん村に住む民は王都に避難は済んでいる...

だが、魔界侵攻は世界征服の第一歩と考えるのが妥当だろう。

その上、平和協定に向かったセシリアの兄、ジェラルド・ヴァロアが魔界から帰ってこない。平和協定を破り世界征服が始まったということだろうか。

「我が国は現在魔界侵攻を確認している!平和協定に来ていたジェラルド・ヴァロアはどこにいる!」

セシリアは兄の安否を尋ねる。使者である兄の状況によっては魔王との戦争を迎えることとなるだろう。

民に被害が及ぶことを考えると、今ここでセシリアは勇者として魔王に立ち向かわなければいけない。

侵攻を広げて魔王が力をつける前の今、魔王を倒さなければ...

この命に変えても民は守ってみせる...


「くくく...ジェラルド...ジェラルドか...奴ならここに眠っておるぞ...」

王座に座るその男は、玉座の傍に倒れている複数人の魔族たちに混じり、倒れている人間に視線を送った。

セシリアが兄が近くに倒れてるのに気がつかなかったことからも、兄の聖魔力は尽きているのだろうことがわかる。

(少しでも聖魔力が残っていたら、お兄様の聖魔力から漏れ出すオーラの気配を感じるはずだわ

それを感じないということはつまり...)


セシリアは目の前にいる禍々しいオーラを放つ男...魔界の王である魔王を仕留める為、聖魔力を濃度を上げ一気にオーラの出力を上げる。

セシリアの深紅の髪は鮮やかな聖魔力に包まれ靡き。黄色の瞳はギラギラ輝き金色に染まった。

セシリアは16歳にして、勇者セドリックの聖魔力の域に達していた。


「ほう...これは...凄まじい聖魔力ではないか!」

魔王は嬉しそうにくつくつと笑う、なにがそんなに嬉しいというのか

「ジェラルドと比べ物にならないほどの聖魔力!!これは期待ができる!

ああ...!勇者セドリックの聖魔力の様ではないか...!

勇者セシリアよ...

我...魔王であるヴァルフガングから1つ提案がある

『オギャォアァァアァァァア』が終わった暁には

『ヒギャァァアアァアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』の半分をくれてやろう」


『世界征服の暁には世界の半分』

これは1000年前の魔王が勇者に言い放った愚かな言葉と一緒である

もちろんそんな提案に乗るセシリアではないが...

えっと...今の叫び声は何...?まるで赤ん坊の泣き声だけれど何故ここに赤ん坊が...?

まさか赤ん坊の人質でもいるというの...??


セシリアは平和な時代に生まれたとはいえ魔物狩りを日々こなしていたし

他国からの侵略があった際には騎士として人を殺める覚悟もできている。

領地に現れる盗賊とは剣を交え捕縛した経験もある。

魔王が敵対した時は容赦なく切る覚悟は出来ている。

しかし、赤ん坊を人質に取られることは想定出来ていなかった。

(そんな!このまま聖魔力を叩き込めば巻き込まれてしまうわ!)

全身に嫌な汗が流れる。セシリアは魔王に一歩遅れを取ってしまった。

魔王の禍々しいオーラが増し、魔王城がゴゴゴゴと鳴り響く


「起きたか...」

魔王が小さな声でそう言った

起きた...?一体何が...

魔王の膝の上で何かが蠢いた。

その蠢いた何かがモゾモゾと魔王の胸に登っている


「勇者セシリアよ、次期魔王の乳母になってくれないか」


赤ん坊はそこにいたのだ、魔王の膝の上にずっと...

魔王のオーラで隠されていたその赤ん坊は今

魔王の乳を...男の乳を一生懸命吸っている

セシリアは魔王と目が合った

恐ろしい目をしていると思っていたその男は

何もかも諦めたような虚無顔でセシリアを見つめていた


「ワンオペ育児も限界だ...」

そう言い残し、魔王は気絶してしまった。


「へ...???」

セシリアは想定外の事態に唖然としていた

ぽかんと口を開けたその顔は相当間抜け面だったように思う。


赤ん坊は気絶した魔王を気にすることなく

その乳に張り付き吸い続けていた

初投稿です。気長に更新します。

次話更新は明日。

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