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2  贈り物

かなり間が開いてしまいました。

待っていてくれていた方がいたらすみません。

構想は出来てるので、文書化頑張ります!

ガラガラと音を立てて馬車は進む。

その横で俺はピッタリ寄り添うように、馬を小走りさせていた。

今日は街までリーゼンバーグ伯爵のお供をしている。

花祭りもあと3日に迫ってきて、伯爵が夫人の為に用意したものを受け取りに行くのだ。

しかも自ら。

(仲良しなんだよなぁ。)

いつでもどこでもピッタリと寄り添っている姿を見かける。

(あんなふうにいつも居られたらなぁ)

あれこそが俺の理想だ。穏やかな気持ちで、お互いを大事にして思いやって、微笑みあう。

しかしあんな四六時中ピッタリ寄り添っていたら、俺の心臓が持ちそうにない。無理だ。

「…おい。」

バシッと背中を鞭で叩かれた。

「…ったぁ。」

「正気に戻ったか?」

背中をこすりながら後ろを振り向くと、鞭をパシパシと自分の手に叩きつけているスレッド先輩がいた。

「先輩、それは馬を叩くやつです。俺、人間ですから。」そう言うと、先輩はハッと短く息を吐いた。

「今は仕事中だ!気を抜くな!」

背筋がピンとする。

「はい!失礼しました!」

馬上なので、敬礼だけしておく。

「よし!…で何があった?」

ニヤッとスレッド先輩は笑った。

「え?」

「おまえ、ここの所ずっと上機嫌だぞ?」

「…分かります?」

思わず顔がデレた。

「聞いてくださいよ!実はですね、フェリシアが俺のために菓子を焼いてくれたんです。」

馬を寄せながらこそっとスレッド先輩に囁く。

「そりゃあ、すげぇ。」

ピューと口笛を吹いた。

「お前の顔を見ると、苦虫潰したみたいな顔してたのに。えらい進歩じゃん。」

バシバシと背中を叩かれる。

「…って力強いですって。ま…でも、本当に良かったです。」

「だな。」

ニカッと笑うスレッド先輩。

「これまでの日々が報われたじゃん。」

「せんぱ〜い。」

優しい言葉にウルッときた。

「これからは楽しい毎日が待ってるな。」

「そうだといいんですけど…」

「ん?」

「もっと仲良くなりたいとは思ってるんですが、正直何したらいいか分からなくて。」

「あぁ、なるほどな。」

ふむふむとあごに手を当てて、スレッド先輩は頷く。

「なら、菓子の礼をあげるのはどうだ?」

「あっ。」

「それくらいなら、お前でもできるだろ?」

「確かに。」

それなら、俺でも出来そうだ。

「ちょうど店ついたし、警護は任せてチラッと見てみれば?」

先輩の言葉通り、気付けば目的地の日用品店に着いていた。

どうっと馬を止まらせて、ひらりと降り先輩の馬も預かって馬を繋ぐ。

スレッド先輩は恭しく扉を開けて、伯爵様をお迎えしていた。

リーゼンバーグ伯爵は淡い金髪の優しげな顔立ちの男性で、40過ぎても、結婚していても、女性が寄ってくる美男子だ。

「ロイド、中まで一緒に来てくれるかい?」

「はっ!」

ご指名を受けたので中まで同行する。

「いらっしゃいませ。」

中に入ると店主の女性が出迎えてくれた。

「ロイド。」

「はい。」

「ちょっと店主と話してくるから、適当に店を見ながら待ってて貰えるかな?」

「分かりました。」

そういうと、伯爵は奥の部屋に入っていった。

(会話、聞こえてたかもな)

伯爵はやり手で有名なのだ。きっとさっきの会話も聞いていたに違いない。

さりけない心遣いに感謝しつつ、ロイドは店の中を見ることにした。

この店は日常のちょっとした物を取扱う店で、櫛や鏡、ハンカチやちょっとしたバックまで置いてある。

高い物もあったが、比較的買いやすい値段の物まで、幅広く置いてあって、俺でも買えそうな感じだ。

ふと、目にとまるものを見つけた。

それは白いレースで出来ていた物だった。

「これ、フェリシアに似合うかも。」

手にとって、彼女が身に着けた所を想像する。

(いい…めちゃくちゃ…いい)

思わず顔がニヤけた。

「お気に召したのなら、お包みしましょうか?」

ビクッとして横を見ると、いつの間にか店員が側まで来ていた。

「あ…えっと。」

「今は花祭りの時期ですからね。白いレースの商品は売れ行きが凄いんですよ。」

(そうなんだ。でもなんで?)

朴念仁のロイドには分からない情報が流れていく。

そうして戸惑っている間に、店員はさっと商品を受け取りながら、物知り顔で頷いた。

「大丈夫です、お客様。とびきりキレイにお包みしますからね。」

「あ!」

そして止める間もなく奥へ引っ込んで行った。

(なんか、凄い気合が入ってたけど…)

よく分からない状況だが、確かにあれはフェリシアに似合いそうだし、まぁいいかと深く考えるのを止めた。

普通は聞くだろうし、気になるものなのだが。

そこがロイドたる所以なのだが、後でこの時を振り返り、何が何でも確認するべきだったと思うのは、それから数日後の事である。


「ロイド、待たせたね。」

伯爵は軽く手を上げて近付いてきた。

「どう?気に入る物はあったかい?」

(やっぱり聞こえてたんだ)

「…すみません、気を使って頂いたみたいで…」

恐縮して畏まる。

「はっはっはっ。気にするなロイド。」

肩をトントンと軽く叩かれた。

「後でどうなったか聞かせておくれよ?」

お茶目たっぷりにウインクしてみせる。

本当に素敵なお方だ。

(この方が主で良かった)

そんな事を思っていると、ちょうど奥から店員が2つの袋を持ってきた。

「お客様、こちらが品物でございます。」

そういって差し出した物はブルーとピンクのリボンが着いていた。

「ブルーのリボンが伯爵様の、ピンクのリボンがお客様の品物でございます。」

確かにリボンが違わなければどちらか分からなくなりそうなくらい、見た目も大きさもそっくりだった。

店員の気遣いに感謝しつつ、そっとそれらを受け取った。

「じゃあ、また来るよ。」

伯爵は店主に笑顔で告げると店を後にした。


お屋敷に戻ってすぐ、俺はフェリシアを探した。

さっき買ったプレゼントを早く渡したくて、それとプレゼントを受け取ったフェリシアの喜ぶ顔が見たくて、気持ちが抑えきれなかったのだ。


廊下の向こうにカートを押しているフェリシアを発見した俺は満面の笑みを浮かべた。

「フェリシア!」

手をブンブンと振りながら、駆け寄る。

フェリシアは重たそうなカートを止めて俺の方を振り返るとにこっと笑ってくれた。

「ロイドさん。お疲れ様です。」

(やっぱりフェリシアの笑顔最高〜!)

くぅ~と拳を握りしめて幸せに浸る。

「お出かけから帰られたんですね?お疲れ様です。」

「…ありがとうございます。」

こんな俺の事も労ってくれる。

やっぱりフェリシアは優しい人だ。

「あ、あのですね!」

ロイドは腰の巾着から小さな包を取り出した。

「これ、良かったらどうぞ。」

そういって包を差し出した。

「?」

「この前のお菓子のお礼です。」

「そんな!気にしなくていいのに…」

フェリシアは慌てて手を横に降った。

「いや、2人ともかなり喜んでたし。俺も嬉しかったですし、本当にささやかで申し訳ないんですが貰って下さい。」

頭を下げて、グイッと包を差し出した。

クスッと笑う声が聞こえて顔を上げると、微笑みを浮かべた神々しいフェリシアが居た。

「…あ」

「もう。分かりましたから。」

そう言ってフェリシアは大事そうに胸に包みを抱きしめた。

「ありがとうございます。ロイドさん。」

俺の大好きなあの笑顔を、今日この瞬間だけで何度見れただろう。胸がかぁと熱くなり、顔が火照るのを感じた。

「開けていいですか?」

「何となく恥ずかしいので、後で開けて下さい。」

「分かりました。」

渡せた嬉しさと気恥ずかしさに居てもたってもいられなかった俺は「じゃ!」と声をかけた。

そして「よければつけて見せて下さいね〜!」と、

遠くから声をかけて、後は後ろもふり返らずに走り去った。


フェリシアは抑えきれない位に体が熱くなる感覚を覚えて、やり過ごす為に包みをギュッと抱きしめた。

「…もう。ロイドさんったら、可愛いんだから。」

振り返ったロイドの無邪気な笑顔を思い出し、頬が紅くなる。

「何、選んでくれたのかしら?」

包みを破かないよう、大切にそっと包みを開けていく。

そして中身を取り出した瞬間、フェリシアは固まった。

「!」

それは白い物だった。レースが美しいそれは、女性が身につける物だった。

けれど、フェリシアの思考は真っ白に成る程、衝撃的な物だった。

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