第53話 ブレッドの屋敷を買う
【本日】新作を始めます。詳しくはあとがきで。
カリプス王国の王宮の一室。
「それにしてもすごい勢いですな。一部の者は狂子爵のことを、武神と褒めるモノもいるそうですな」
「はん、オークの神の間違いだろ」
「ははは、しかし、笑って済ませれないのも事実。法務大臣も面白い手駒を手に入れたものですよ」
噂になっているそのブレッドは、先のドルーガ帝国との戦いで、最大の武功を挙げ一躍有名となっていた。
少し行き過ぎた略奪もあったが、誰もそれを咎めない。
いや、黒い噂や日頃の言動で、咎められないといったところが本当のようだ。
だがその反面、ブレッドの性格や領地の統治能力の評判によって、政治手腕は鼻にもかけられない扱いだった。
だからそこに目をつけ、法務大臣の権勢を削ごうとブレッドに仕掛ける者もいた。
例えば住民の反乱を助けたり、領地内の経済を破綻させようとしていた。
そうすれば、ブレッドはその鎮圧をするため、国政などに関わっていられないと考えてたようだ。
しかしそれは大きな間違いだった。
そもそも国政には興味がないし、更に反乱などを鎮めるため躍起になるどころか、更に圧政をしき大炎上へと発展させていく。
これには仕掛けた側が大慌て。ブレッドの暴走はヘタをすると飛び火して、国中を巻き込む恐れがあるムチャなモノだった。
それと王家への暴言や人さらい、他領での略奪まがいのこともあったらしい。
普通では考えられない異次元の行動だ。
「ああ、会えば分かる。折り合いという言葉を知らない規格外のバカだよ」
敵対勢力は本来なら、ブレッドを弱らせるため力を注ぐのに、今では被害を恐れてフォローをしている位だ。
「もしや、そこまでいくと本物の英雄ではないか?」
「いやいや、只のバカです」
「高みを目指すあまり、周りが見えないのも英雄にはありがちだ。奴には最大級の警戒が必要だな」
「……ここにもバカがいやがった」
俺様は屋敷を購入するため、王都でも一番でかい商家を訪れていた。
なんせ法務大臣の支払いが思ったより多く、念願であった王都住まいが出来そうなのだ。
希望は色々とあるけど、まず俺様の権威が示せるよう部屋は100ほど必要だ。
モチロン、一番目立つ大通り沿いで、敷地内に小川が流れていること。
店主にこの最低条件だけを伝えたが、相手も王都の大商人。どこまで俺様を満足させる話を、持ってこれるか楽しみだ。
最初に案内されたのは、トラボルタとかいう伯爵家が所有している物件で、王宮にも近い屋敷だった。
こ、これは、一目で気にいったぞ。
屋根の瓦もモダニズムを取り入れ、優しいピンクでキメている。
豪華な内装も高貴な俺様にピッタリで、言うことなしだ。
あとポイントになるのが、ブタ小屋がないのが良い。
最近なぜか、ブタが嫌いになってきた。違う、嫌いなのではなく食べる気にならなくなってきた。
だから豚小屋は必要ない。ナイスだ伯爵家。
「お気に召したようでなによりです。さて、お値段は金貨100万枚となっております」
な、な、なんだと! 金貨100万枚といったら、領地の収入よりもはるかに多いじゃないか。
たったこれだけの土地にそんな価値があるのか? 何も取れない金も生まないのに、オカシイだろ。
はっ、コイツ俺様を騙そうとしているのか? いや、待て、フォックス大臣が紹介してくれた商人だ。
商人は駆け引きで、己の存在の意義を見出すと言う下賤な人種だが、俺様の偉大さを叩き込まれているはず、ここは信じてみるか。
「ちなみに分割は可能か?」
「えっと、それは2回に分けるという事ですか?」
「はぁ? 月々でにきまっているだろ」
「申し訳ございません。先方がそれでは納得されません」
むむ、何が気にいらないのだ。この屋敷に俺様以外に似合うものがいるのか?
わざわざ足を運んで買ってやると言ってるのに、なんて無礼なんだ。
もうよい、壁の色や庭の木々の配置に、部屋数も多すぎる所も気にいらなかったんだ。もう興味はないし他のを紹介しろ。
「えっ! 100部屋は必要なのでは? そ、そうですか。ほ、他にもオススメはありますのでご安心を」
次に紹介してきた屋敷は、さっきの半分ぐらいの広さで、中央から少し外れた所にある。
造りは俺様をイメージしたかの様な、力強い無骨な構えで最高だ。
古風で雰囲気あるし、男が住むならこうでなくてはいけない。
庭にあるこの大木も、俺様の打ち込みに丁度良い。気に入ったぞ、商人のくせにやるではないか。
「今度はご希望に添えてよかったです。それにこちらはお買い得ですよ。なんとたったの金貨60万枚です。
これをご紹介できてホント。あら、どうされましたか?」
何がーお買い得だー。それだけあれば酒蔵がいくつ買えると思っているんだ。
「え、え、申し訳ございません。酒蔵となると手前では分かりかねます」
俺様も知らんわそんな事!
そもそも酒蔵がなんで話に出てくるんだ。俺様は王都の屋敷について言っているんだぞ。こんな古臭い物件を見せるな!
「し、失礼しました。それでは幾つか条件を言いますので、ご判断してください」
うむ、わざわざ足を運ばなくて良いのか。
「まず、立地区域についてですが……」
「つまり、要約しますと貴族が住むに相応しい場所で、王宮に近く、隣人が静かで美人が良い。
それと部屋数が多くモダンな造りでありつつ、古き趣がある新築。
庭で色々出きる程広く季節を感じたいが、落葉が嫌い。
そして、予算が」
「金貨800枚だ」
「えっと、もう一度お願いします」
「金貨800枚だ」
「お客…………そんな所あるかボケーーーー!!」
うわっ、ビックリしたー。えっ、何このプレッシャー。もしかしてこう見えて武の達人か?
「何言ってんだ、クソ狂子爵。商売舐めんじゃねぇぞ。
アホだと聞いていたが、そんな常識もねーのか?」
あ、いや、スミマセン。
「あー? 聞こえねー、もっとはっきりと喋れ」
はいー。
「ったくよー、800枚って庶民の予算だろ。どんなけ貧乏なんだよ。
待てよ。アソコいけそうだな。よし、ついて来い」
着いた場所は王宮が目の前にある、6階建ての大きな建物だった。こ、これはいい。
「コッチだこい。えっと、この105号室だな、入れ」
きれーだー、モダニズムを感じさせ、尚且つ新しく斬新だ。うおっ、アソコの空間は何んだ?
「8畳のワンLDKロフト付きだ。外には2坪の庭があって、セキュリティも万全だ」
なんか知らないが響きがいい。で、いくらなんだ?
「ピッタリ金貨800枚。今決めるなら家具もつけるぞ」
か、か、買いますーーーーー。
俺様の王都での新生活、朝はモーニングティーを楽しむ。
ああ、ここから見える王宮はキラビヤカで、俺様の心を和ませる。
「お頭、ちょっと人数の割に狭くないですか? 10人はさすがに」
そっか? それよりも見ろ。小鳥が屋根に止まっているぞ、ブヒヒヒヒ。
「駄目だコリャ。そうだ、手紙が来てましたぜ」
引っ越してもう手紙とは、ふむふむ、むむむ? ぬおおお、ぐぎぎぎぃぃ!
「お頭、どうなさいましたか?」
は、反乱だ。領地で下級民どもが反乱を起こしやがったー!
急いで戻るぞ、ついてこいーー!
【本日】2月の24日木曜日、夜7時過ぎに、新作をスタートさせて頂きます。(連続投稿で頑張ります)
こちらの作品より読みやすくしたつもりです。
題名
スキルレベル1/神から始まる、従魔なしのテイマーくん~奇跡のユニークジョブなら、その支援効果と従魔が桁違い。最強種族でさえ、僕のチビッ子従魔には勝てないです。それでも追放なんですよね?
よかったら読んでください。




