第51話 Dランククエスト
2月24日木曜日に新作をスタートさせていただきます。詳しくはあとがきで
今回の相手はそんなに強くない。それと依頼してきた村には、温泉がある。だからプラスするジョブは〝温泉ソムリエ〞にしようと思っているんだ。
「ちょっと気を抜きすぎじゃない?」
いやいや、剣王を付けてあるからいいだろ。
それに、あそこの効能は美肌、体調改善、疲労回復と女性にも人気だよ。
リディもその効果を、最大限に楽しみたくはない?
温泉ソムリエなら、凄いことになるぞ~。
「おほん、そこまで熱意があるなら、しょうがないわね。決して、美肌に惹かれた訳じゃないからね」
と言いつつ、ニヤついているよ。
エイダン·イーグル
Lv :36
ジョブ:剣王+温泉ソムリエ
HP :1120
MP :400
力 :900
体力:660
魔力:710
早さ:560
器用:460
運 :5
スキル:覇王剣 縮地 合剣法 地雷震 サバイバル術 気配察知 短弓術 温泉の極意 調える .
温泉ソムリエでステータスの上昇はないけど、2つスキルがきっと役に立つはずさ。
「貴方といるといつもワクワクさせられるわ。でもそれって、メグミンさんには内緒よね?」
事前にマデリンと話しておいたけど、俺たちはあくまでフォローするだけだ。
命に危険が迫ってきたら介入はするが、考えて行動するのはあの子自身だ。
依頼があった場所は、馬車で4日の道のりの山村。
「何か変なニオイがしますね」
マデリンはしかめ面をしているけど、これが硫黄の匂いだよ。
「こんな所で暮らすなんて、ここの人カワイソウだね」
はははっ、未経験だとそんなものか。逆に毎日温泉に入ってるなんて、贅沢な事なんだぜ。
仕事のあとで入るけど、その時自分で感じてみな。
「エイダン様が言うなら、試してみるよ」
依頼主である村長の家を訪れると、ちょうど畑仕事の最中だった。
俺たちに気付いた村長は、帽子のつばをあげ挨拶をしてきた。
「こんにちは、ギルドからの討伐依頼を受けてきた者です」
「討伐……いらい? あ、う」
受託されたのに驚いているみたいだ。
クエストを依頼しても、条件次第で受ける者がいなかったりする。
実はこの依頼も、報酬があまり良くないんだ。
だけど俺たちみたいに、別の目的があったりするから、報酬が適切かどうかは一概に言えない。
「エイダン様、コレ怪しいですね、やっちゃいましょう」
「わわっ、マデリンさん何言ってるの。依頼主殴っちゃまずいでしょ」
「えっ、あれダメなの?」
メグミンが慌てるのも、無理ないか。
いきなりフルスロットルだけど、慣れていないからしょうがないよ。
「はぁ、マデリンさん、あなたいきなり減点ですよ」
うはっ、メグミン手加減してあげてくれ。
そのあと怖がる村長をなだめ、詳しい状況は他の村人に聞く事で、ようやくクエストを開始できた。
モーガモードは南の山からやってきて、作物や家畜だけじゃなく、幼い子供を中心に村人も拐っていく。
人肉の味を覚えて悪いパターンだ。
それに山へ向かう道中、他のモンスターの姿が見当たらない。
たぶんこの近辺の獲物をくい尽くし、それで村を襲うようになったんだろう。
これは一刻も早く討伐しないと、次の犠牲者は確実に出るぞ。
「エイダン様、それはどういう事なの?」
大食漢で知られているモーガモード、だけどたった1匹では、さすがに地域の獲物を食い尽くせはしない。
子育ての時期に入っているから、きっとその分で沢山のエサがいるのだと思う。
それに子育てで、さらに凶暴化しているはずさ。
だから一刻も早く、討伐を終わらせたい件だぜ。
こういった事を考えるにも、それには知識と経験が必要だ。マデリンは一つずつ覚えていきな。
「リディさまー、新しい足跡がありました」
それは随分新しく、獲物を引きずった跡もあり、巣穴に向かっていると考えられる。
そのことにマデリンも気付き、注意ぶかく歩き出した。
うーん、経験は足りてないけど、こうした優秀なところがあるんだよな。
「リディ様、巣穴が近いと思います。気をつけてくださいね」
マデリンには言っていないけど、この時点で俺は6つの気配を感じ取っている。
動きから推測すると、5匹が子供で1匹が親だろう。少し危険が少ない片親のようだ。
いよいよ巣穴に近くなった時、上の岩場に1人の女性が立っていた。
マデリンは腰の剣に手を添え、いつでも抜けるようにしている。
それに対して、女はニコヤカに語り掛けてきた。
「こんな山奥に、人が来るなんて珍しいわね。道に迷ったのなら教えましょうか?」
女の正体はモーガモードだけど、こんなに流暢に喋るなんてビックリしたぜ。
本だけじゃなく、実際に体験してみて分かることって沢山あるよな。
「違います、私たちモーガモードを探しているんです。失礼ですが、耳を見せていただけませんか?」
マデリンは自分の耳を見せながら、相手の出方をうかがっている。
「どうぞどうぞ、それは大変ですね。やつらの被害には困ったものですよ」
近づきながら、髪をかき上げようとしていたその手は、そのままマデリンの喉元を狙って突き出された。
マデリンはというと、警戒していたのにも関わらず、全く反応できていない。
このままでは危険なので、肩を掴み引き寄せた。
「キャッ、えっ、えっ、あー!」
ようやくマデリンは状況を掴めたみたいだ。
モーガモードは変装を解き、本来の白くノッペリとした姿をあらわした。
目や鼻は目立たなく、大きい口だけがギラついている。
「キシャーーーー!」
また反応できていないので、もう1度引き寄せる。
「マデリンさん、危険です。クエスト放棄をオススメします」
メグミンは間違っている。マデリンの出番はここまでさ。ここからは俺たちの仕事だよ。
すかさず俺は剣を抜き、モーガモードの首をはねた。
「こ、これがDランク? ありがとうエイダン様。この盾でも危うかったよ」
自己分析も冷静だな。そういったのも大切だよな。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんたちー、私たちのママ知らないー?」
声のする方を見ると、3~4才の五つ子が立っていた。
マデリンもその正体に気づき、身構えている。モーガモードの子供たちだ。
「ねぇねぇ、ゴハンを探しに行ったんだけど知らないー?」
幼子らしいヨタヨタとした歩きで、近づいてくる。そしてすぐ傍まで来ると、大きな声で笑い出した。
「そっかー、お姉ちゃんたちがゴハンなんだー」
4匹がこちらに向かってきたので切り伏せたが、残った1匹がマデリンにいった。
「こんのー、ちっちゃいクセにやるなぁ」
ポカポカ、ペチペチと、幼児と初心者の殴り合い。リディと2人微笑ましいなって、ツイ見惚れてしまったよ。
「もう、エイダンさん、早く助けてあげなさい」
ハッ、そうだった。カワイイからツイ。その1匹をマデリンから引き離し始末した。
「ふぅ~、リディ様大丈夫ですか? Dランクモンスターも大したことないね」
「マデリンさん、何言っているの。やはり、貴女にはこのパーティーは危険です。ギルドとして加入は認められません」
ウソだろ、マデリンに落ち度はなかっただろ。むしろ、優秀だったよ。
「いいえ、エイダンさん。人の命が懸かっています。軽々しく考えないで下さい」
う~ん、重きをおく所が違うから、相容れないんだよなぁ。
こりゃ、作戦ミスだな。メグミンを説得するのは難しいぞ。
帰るまでに、なんとか言いくるめるジョブでもつけようかな。
「取り敢えず、村への報告を済ませましょ」
村に着くと村長はじめメチャクチャ驚かれたよ。そりゃ半日も経っていないもんな。
他のモンスターもいなかったし、ジョブの効果で楽勝だったもんな。
「ねぇ、エイダン。それでどのジョブにする気なの?」
うん、前の交渉人でもいいんだけど、詐欺師にでもしようかな。口八丁手八丁で惑わすとかさ。
「そんなのダメよ。貴方らしくないわ」
ははは、やっぱりそうだよな。でも説得が上手なジョブをつけるよ。
マデリンはもう既に、俺たちの大事な仲間だもんな。
2月の24日木曜日、夜7時過ぎに、新作をスタートさせて頂きます。(連続投稿で頑張ります)
こちらの作品より読みやすくしたつもりです。
題名
スキルレベル1/神から始まる、従魔なしのテイマーくん~奇跡のユニークジョブなら、その支援効果と従魔が桁違い。最強種族でさえ、僕のチビッ子従魔には勝てないです。それでも追放なんですよね?
よかったら読んでください。




