第50話 ワタシ守護騎士です
2.24(木曜日)新作スタートします。
詳しくはあとがきで。
「困った事だけど、面白いな」
「ええ、カワイイから困るわね」
奉仕の心は尊いものだよ。自分の人生の一部を割いて相手に貢献するんだ。
余裕がある生活じゃないと、まず出来ない。
しかしマデリンは兄弟を探す事や、日々の稼ぎにも苦労している。
その上でリディに尽くそうとしているんだ。
平原から帰ってきた今も、メチャクチャ張り切っていて、街の中でも周囲をジト目で警戒に当たっている。
小ちゃいドワーフ少女の鋭い目つき、それを困り顔で見守る聖女。シュールとしか言いようがない。
「リディ様、この先は安全だよ。キャッ!」
はぁ~、何もないところで転んでいるよ。ロリッ子にプラスして、ドジっ子まで演出なんて、変なファンが増えるからやめてくれ。
う~ん、それと実力が伴っていないのに、本人はそれに気づいていない。それがまたハラハラさせられる。
さっきも平原でDランクに相当する、グラスウルフの大きな群れに、1人で立ち向かおうとするし、危なっかしくて目が離せなかったよ。
「エイダン様もやっと目覚めてくれたんだね。守る盾が2人になれば、リディ様も安全だよ」
え~っと違うよ、俺は君を守っていたんだ。
と言うか、あんなに自由に動き回られては、守れるものも守れないぜ。
「大丈夫、私にはこの盾と防具があるからね。さっきのゴブリン戦でもさ、傷ひとつ負わなかったもん」
しまったな、高い防御力と〝鉄壁〞の防護付与が効いている高級品だった。
親切心が裏目に出て、変な自信を与えちゃったか。
「それに不思議と動きも軽いんだよー。やっぱり人生目標を持つと、人って変わるものだねー」
〝跳躍〞と〝動体視力〞の付与もバッチリか。あの防具屋め、いい仕事しやがって、今度会ったら説教だ。
装備が能力に勝ってしまった悪い例だよ。
「思い込みご激しい子よね。目の届かない所だと、何するか心配よ。どうする、エイダン?」
「いいんじゃないかな、あれだけリディを慕っているし、賑やかになって楽しそうだよ」
それにいつかは守り手を入れたいって、考えていたんだよ。
それには信用出来る人間がいい。マデリンなら、その点はリディも納得できるだろうし、うってつけだよ。
あと、マデリンは戦いとは無縁の農家の子。普通ならビビって終わりなのに、動じていなかった。
才能はまだ分からないけど、悪い子じゃないし、これも何かの縁だ。パーティー加入を、真剣に考えてもいいんじゃないかな。
「うん、私もマデリンちゃんと、一緒に冒険するのが楽しみ」
「本当かい? よーし、リディ様が健やかにお育ちになれるよう、頑張るよ」
憧れの聖女にも認められ、飛び上がって喜んでいる。少女がレディを育てるつもりでいるよ。
「でもね、本当に嬉しいのは、尊敬できる2人と一緒に仕事ができる事なんだよね、へへへ」
嬉しい事言ってくれるよ。よし、そうと決まれば、ギルドにパーティー申請をしに行こう。
「絶対ダメです。認められません!」
へっ? メグミン、この子と組むだけだぞ。
「『だけだぞ』じゃありません」
何が引っ掛かっているのだろう。えっともしかして、マデリンの名前が、メグミンと被っているからダメなのか?
「そんな事いってません。だいたい、王族のパワーレベリングでもないのに、Aランクが12歳の女の子と、パーティーを組むなんて前代未聞ですよ」
言われてみればそうかもな。駆け出しとAランクとでは、こなすクエストのレベルが違う。
もし組むしても、普通なら一時的なことだ。
「メグミンさん、誤解よ。マデリンちゃんには、私の盾役になってもらうの」
「そうだよ、そうだよ。リディ様を守るのは、私しかいないんだよ」
あっ、火に油を注いだな。子供を盾にするなんてと、メグミン発狂しているよ。
でも、こっちはもうその気だしな。それにイキナリ危険な所へって訳じゃないし、そんなに心配するなよ。
「そうさ、私は守護騎士だよ」
いや、ややこしくなるから、マデリンは黙っていな。
「そんなに言うのでしたら、マデリンさんには試験を受けてもらいます」
冒険者の安全を第一と考えるギルド。そのギルドが選んだクエストを、強制的にやらされる事になった。
要は失敗させて、諦めさせるつもりだろう。
「エイダン、変な事になったわ、どうしよう?」
心配するな。もし失敗しても、裏でコッソリやればいいだけ。仮に成功したらしたで、ギルド公認になるし、万々歳さ。
「いいですか、マデリンさん。Fランクの貴女が挑むのは、物真似モンスター、モーガモードの討伐です」
「なんだい、そのモーガモードって?」
てっきりAランクかと思ったら、Dランクのクエストを持ってきたか。
とは言っても、2つも上のクエストだ。マデリンには荷が重すぎる。
つまり、2つ上のDランクのクエストを体験してもらい、〝自分がリディにとって必要な冒険者〞なのかを考えてもらうらしい。
「マデリンさん、これは試験だけど、途中で放棄するのも有りですよ。安全を優先させるのも、冒険者の大事な資質です」
「えへへ、こんな事するまでもないのに。リディ様のためだもん、仕方ないね」
どこからその自信が沸いてくるんだろう。
クエスト自体初めてだし、危険だと理解できないのはしょうがないか。
フォローは入れるとして、ギルドが見つけたこのクエストなら、比較的安全だし無事に帰ってこれるだろう。
だけど肝心なのは、このクエストの難易度だよ。
このモンスターの強さ自体は、Eランクと低めだ。
しかしその特殊能力で手こずり、Dランクに認定されているんだ。
その特殊能力とは、いろんな生物の姿形、大きさまでもマネをし、相手を油断させて狩りをするんだ。
例えば生まれたての子猫であったり、また別のパターンでは出会った動物そっくりに化けて、親しげに近づいてきたりする。
中には知り合いに化けていた例もあり、仕草までソックリで、家族でも見分けがつかなかったらしい。
ただ決定的な間違いが1つある。それは両耳とも耳の穴が2つずつあるんだ。
しかし、髪で隠していたりと何しろ狡猾で、モーガモードと疑ってみない限り、まず気づかない。
その見分ける対策になると、随分と限られてくるんだ。
言葉が通じる相手なら、耳を見せ合うのが有効だ。
初対面だと失礼になったりするので、ちゃんとした説明が必要になってくる。
あとは有無も言わさずぶっ叩く方法もある。その衝撃で変身が解けるんだ。
ただし違っていた場合は、それ相応の覚悟がいるので、マデリンにはお勧めできないな。
「そんな事しなくても、女の勘があるから大丈夫!」
お、おう。(やはり突っ走りそうで怖いな)
(ええ、しっかりと作戦を決めておかないと、後手に回りそうね)
「まず流れとして、私も同行しますので、馬車で現地に向かうことにします。このとき魔除けのアイテムを使い、ザコを寄せ付けないで下さい」
むむむ、やるなメグミン。今回ギルドの目的は、マデリンに自分の弱さというか、実力を知ってもらうためだ。
平地の弱いモンスターに勝って、自信をつけてもらいたくないみたいだな。
現地ではEランク、Dランクのモンスターばかり。
このまま低レベルで向かったら、本命のモーガモードどころか、目的地にすら辿り着くことさえもできない。
「結局のところ、それがマデリンさんのためになるんです」
だけど、これはあまりにもマデリンに不利だ。戦闘は俺たちがする。その過程を判断してくれ。
「ええ、それは構いません」
よし、言質はとった。マデリンは決してバカじゃない。
それにあの思いっきりの良さ。メグミンもきっと納得するはずさ。
クエストの終わりには、笑いながら次は何処に行こうかと、相談しているさ。何の心配もないぜ。
「はい、ペロンとこんなの、やっちゃいますよ」
2月の24日木曜日、夜7時過ぎに、スタートさせて頂きます。
こちらの作品より読みやすくしたつもりです。
題名
スキルレベル1/神から始まる、従魔なしのテイマーくん~奇跡のユニークジョブなら、その支援効果と従魔が桁違い。最強種族でさえ、僕のチビッ子従魔には勝てないです。それでも追放なんですよね?
よかったら読んでください。




