第19話 俺は正直者ですよ
あのギルド長 が、アンタにものを頼むなんてよっぽどのことだな。
「おほん、今回の事件の調査依頼だ。
その報酬として破格にはなるが、ギルドランクが2つも上がるぞ。なっ、すごいだろ」
ニヤニヤ笑って変に愛想がいい。いつもと様子が違うのが気持ち悪いな。
だけどちょっと待てよ。Bランクが必要なクエストに、Fランクの俺をなぜ当てるのか、その理由や内容を聞かせてくれ。
「はは、私を筆頭に、みんなお前の実力は認めているんだ。
十分その力はあるから、安心してクエストを受けてくれ」
副ギルド長が俺を認める? 頭でも打ったのか。マジ怖い。
それとBランクに頼む内容としては、報酬が少すぎるだろ。
「ははははは、これだからモノの価値がわからない庶民は困る。
いいか、1つのランクを上げるのにも何ヶ月も何年もかかるんだぞ。
それをたった数日で2つも上げてやるんだ。それ以上望むのは罰当たりだぞ。
その幸運はここにサインをすれば、お前のモノだ」
いや、100%怪しすぎるだろ。普段ないヨイショをされ、少なすぎる報酬、それにサインって何、ハメる気満々だろ。
「な、な、何を言う。クエストは受けるべきだろう。ボクチンが困るじゃないか」
俺は困らないぜ。
「あーーーー、ダメだ。お前はこれを受けるんだ。決定事項だ、いいな!」
はぁ、以前にも言ったけど、あんたは職員で俺はただの利用者だ。
どちらが偉いっていうこともないし、強制させる権限なんてないんだぞ。
つまり受けるも受けないのも俺次第だ。
「嫌だ、お前がクエストを受けるというまで、この部屋から出さないぞ」
この副ギルマスに、俺を押さえ込める力があるようには見えない。
貴族という血筋に、誰もがひれ伏すと思っているタチの悪さがあるな。
これをどうしようかと困っていると、扉から勢いよくギルド長が入ってきた。
「ガマゲン君、勝手にエイダン君を引き止めているのはどういう事だ?」
ムッチャ怒っている、やっぱりこんなのに仕事を任せるはずないか。
変な契約書もあるし、おかしいと思ったんだ。
「契約書だと? 見せなさい。…………報酬の金貨50枚が書いていないのはどういうことかね?」
「えっ、いや、あっ! 抜けていましたか、気付きませんでした、ははは」
そういうことか。ギルドから出る報酬との差額を懐に入れるつもりだったんだな。
「以前より君の横領の件は問題なっていた。自分から証拠を作るとは愚かだな」
「ま、待ってください。こんなのデタラメです。ボクチンは何も悪いことしていないんだ」
見苦しい言い訳だ。でもノラリクラリと話をそらし、はぐらかそうとしている。
それどころか次第に怒り出し、ペンパル国の実家の伯爵家を通して、抗議をすると脅し始めた。
呆れたヤツだ、少し懲らしめてやるか。
「ギルド長、高潔なガマゲンさんはやましいことは一切していません」
「おお、分かっているじゃないか。
ひひひ、ギルド長、エイダン君は正直者です。彼が真実を話してくれますよ」
ギルド長はまさかという顔で呆然とし、ガマゲンは逆に勝ち誇った様子で煽っている。
うん、副ギルド長のいう通り、真実を話しますので、シッカリと聞いていてください。
「ガマゲンさんは横領どころか、むしろギルドに金を使わせず、自腹で全額を俺に払うとさえ言ってきたんですよ」
「「なにー!」」
ははは! 2人して驚いているな。
さぁガマゲンはどうするかな。
今の俺の言葉を否定するなら、新たな真実を掲示しなくちゃいけない。
しかしそれには無理がある。契約書という現物と俺という証人が邪魔になる。
それともう1つ、俺の証言を否定できない訳があるんだ。
それはガマゲンの出身国ペンパルは、汚職や横領に対して非常に厳しい国なんだ。
もし発覚したら解雇や投獄はもちろん、貴族だと爵位を取り上げられた事例さえもある。
他国でのギルドの事とはいえ、追求され社会的に抹殺されるのは間違いない。
そのリスクが十分わかっているのに、ナゼするのか不思議だぜ。
つまり自分の罪を認める事ができず、報奨金を肩代わりする道しか残っていないんだ。
「う、う、えっと、言ったような、言わないような」
奇遇ですね。俺も記憶が曖昧で、あと1つか2つ、追加で何かくれるって言われた気がするんです。
「いや、い、言ってない。報奨金の金貨50枚だけだ」
そうそう、2人だから100枚でしたね。いやー、思い出して良かったです。
「ぐぐぐっ、この事は忘れんぞ」
俺もこの栄誉は心に刻み込みますよ。
ドアを閉め廊下に出ると、スゲー暴れている音がしてきた。
備品を壊したらもっと出費が増えるのに、たいしたもんだぜ。
ガマゲンの鼻をあかせたけど、いつまでも笑っていられない。
ギルド長、何があったか教えてくれ。
「ええ、私たちなどでよければ力になります」
「すまないな、2人とも。俺は、自分が不甲斐ない」
付き合いは短いけど、この人も好きな人だ。
それに今回のことで、困っている人もたくさんいるだろう。
父様の言葉を借りるぜ。
「何て事ないさ。俺が全て叶えてやる」
並べられた状況やギルド長の表情で、ことの重大さは充分理解できた。
「まずギルドからの報酬の話を確認してくれ。金銭は金貨50枚を用意してある。それとギルドランクもFからDへと昇格だ」
金貨50枚といえば、一般家庭で2年以上の収入。でも、やはりBランクに頼む依頼にしては安いな。
「すまない、規則がいろいろあってな。これが隠し事なしの、最大限出すことができる報酬なんだ」
気にするな、俺に任せろって言ったろ。
普段はドッシリと構えたギルド長なのに、今は大きく目を開き俺を見つめてくる。
「うむ、状況を説明するぞ。
実は薬草採取で有名な山で、事件が起きているんだ。原因は不明だが、魔法災害により山全体が毒に侵されている」
ん?
「それにより大地は汚れ、モンスターも凶暴化していてな、人間が生息出来ない環境が広がっているんだ」
あれれ、これって、どこかで聞いた話だよな。なんか話が噛み合わないぞ。
伸び悩んでいます。もし、面白くないと思われたら、アドバイスをください。
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