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第1話 追放ってなんだよ

2022年2月24日木曜日に新作をスタートさせました。

https://ncode.syosetu.com/n6479hm/


詳しくはあとがきで。

「「エイダン様、おはようございます」」


「みんな、おはよう。今日も忙しくなるから、頑張ろうな」


「「はい!」」


 俺の名前はエイダン·イーグル。カリプス王国の子爵家の跡取りだ。


 だが、両親が突然死んだことにより、〝跡取り〞とノンキに言っていられなくなった。

 王家のため民のため、懸命に働かなければいけない立場となったんだ。


「俺に客? ははは、忙しいな」


 悲しむヒマもない。いや、これも当主の務めか。

 ところが、やって来たのはこの国の法務大臣で、突然おかしなことを言い出したんだ。


「ふん、貴様がエイダンだな。遺産となるもの全てと、その地位をめし上げ、追放処分とする。今日中にここから出て行けよ」


 俺を虫けらでも見るかのように言い放った。俺にとっちゃあ『はぁ?』だよ。

 国の重鎮が、直接出向いてくるなんてただ事じゃないし、ましてや追放だなんて信じられない。


「ま、待てよ。あっ、お待ちください。これは何かの間違いでは? 領地運営も健全ですし、王の不興を買うようのことは、一切しておりません」


 いきなりのことで、全く事態が把握できない。とりあえず、話をきちんと聞いて……。


「なんだ、クズがまだいたのか。この屋敷の中で、お前のものは何1つもないぞ。勝手に触るなよ」


 何だこの人。一方的で話が通じないぞ。

 俺は嫡男だし兄弟も他にいない。それに書類にも不備はないはずだ。


「書類に不備はないだと? お前自身に不備がありすぎだろ。いや、何も持たない【無能者】め」


 まただ、この言葉をなんべん聞いた事か。うんざりだぜ。


「【無能者】とは理解力も乏しいのだな。いいか、この王国に必要なのは、私のように顔の何処かにちゃんと、スキルなりジョブが書いてある【有能者】なのだ」


 そう、大臣のアゴには【執政官】という文字があり、俺の目に飛び込んでくる。


 この世界では、誰もが自分の生きる道しるべとして、才能がアザとなって、顔に浮き出てくるんだ。


 子供が生まれると、このことをすぐに確認し、その子の将来を喜ぶのが(なら)わしだ。


 【勇者】の文字がある者は、その力で人類の光となれるし、【商売繁盛】とあれば、商売人として未来は明るい。


 これは当たり前のことだし、誰もがひとつは持っていて、云わばそのアザが名刺代わりとなる。

 そう、アザがない人間なんて1人もいないんだ。


「国や民も、君には期待していないのだよ。それとも何か、アザもないのに秘めたる力でも持っているのか? えっ、答えてみろ」


 いや、俺にもある事はあるんだ。


 ホクロかと見間違えるほど、ゴク小さく書かれた文字【全てを叶える者】だ。


 いっけん凄そうなコレも、実は何の役にも立たないシロモノだった。

 ステータスを開いてみても、そこにはジョブはおろか、スキルの一つさえも表示されないんだ。


 この落差には、両親と共に打ちのめされたよ。

【全てを叶える者】なのに、自分の将来に何一つ希望を見いだせない。


 そう、俺は世界でただ1人の世にも奇妙な、何も持たない【無能者】なのさ。


 しかしだ! それと相続問題とでは話がちがうぜ。


「私を廃嫡するとしても、他に相続できる者はおりません」


 そうなんだ。王国法がそれを許さない。


 貴族が遺産を相続することは、王家に対する忠誠や義務も引き継ぐことを意味する。一般のそれとは違うんだ。


 とそのとき、扉が勢いよく音を立てて開いた。


「いいや、エイダンよ。それはお前が心配することじゃない。あとの事はこの高貴な英雄、ブレッド様に任せるがいい」


 甲高い声で騒がしく入ってきたのは、金髪の太った男だ。


 この男は母方の遠い親戚で、俺と同い年のブレッド·ゴールドマン。

 【重騎士】のアザを持ち、うちの家より格がある伯爵家の4男坊だ。


 小さな頃から家柄を盾に、嫌がらせをしてくる迷惑なヤツなんだ。


「はぁ~ブレッド、また変なこと言い出したな。いくら従兄弟だとしても、君にそんな権利はないんだぞ。

 後で相手してやるから、いまは引っ込んでいてくれ」


「おめでたい奴だな。遺言状がここにある。しっかりと見て、現実を受け入れろ」


 受け取った内容は、財産すべてをブレッド·ゴールドマンに託す、という内容のものだった。


「お前のクソ親父が、泣きながら頼んでくるからよぅ、しょうがなく受け継いでやるんだ」


 しかし、俺は気付いた。


 父が書類作成のときに、真偽を明らかにする隠し符丁がどこにもない。


 こんな偽物を用意してまで、だまし取ろうとするなんて絶対に許せない。

 ちょうどいい具合に法務大臣もいるし、白黒はっきりつけてやるか。


「父を侮辱するのはやめろ。これは明らかに偽物だ。父の隠し印がどこにもない。この偽装は極刑に値するぞ」


 こういった細工があるの当たり前。この従兄弟は昔っから、あと少しが足りないんだよな。


「ぶひひ、もしこれが偽物だとしても、【無能者】のお前がいる限り、これは本物になるんだよ」


 はぁ~、相変わらずバカは、とんでもない開き直り方をするもんだ。

 このあとはいつものパターンで、自分の間違いに気付き、逆切れ発狂してくるんだよな。


 だけどおかしい、いつもと違うぞ。今回のブレッドは、余裕の表情を見せている。


「ぶひひ、お前は小さな頃から、何1つ変わっていない。どうせまた、正義が勝つとでも思っているんだろう?」


「当たり前だ。大臣もいらっしゃるのだ。法の裁きを受けろ」


 その言葉に大臣は、歪んだ笑顔を浮かべて話し出した。


「愚かだな、エイダン·イーグル。

 その書類を作成するとき、私自身が証人として、立ち会っているのだよ。この意味が解るかい?

 つまり、私がこれを本物だと言えば、これは本物になるのだよ」


「えっ、今なんて?」


「そして、既にこの遺言書は有効とみなし、ただちに権利の移動をしておいてあげたよ」


 言葉を失ってしまった。この偽物を法務大臣自身が作っただなんて。


「やっと気づいたのか? 無能者の存在は偽物よりも軽いのだよ」


 これは出来レースだったんだ。


 父の病気と俺のハンデをよいことに、全てを奪い取る算段をつけていたんだ。


「新領主ブレッド·ゴールドマンよ。君ならお父上も聡明な方だし、期待しているよ。

 さぁ、不遜で役立たずの怠け者を、サッサと追い出すのだ」


 分かっていたけど、貴族社会とはなんて汚い世界なんだ。ウンザリするぜ。


「ぶひひ、2度とこの領地に近づきたいと思わないよう、たっぷり可愛がってやるぜ」


 ガラゥンと鈍い音を立て、ブレッドは大剣をかまえた。マジかよ、本気でやる気だ。


「うまく避けろよ、そりゃ!」


 上段からの迫力ある振り下ろし。当たればひとたまりもない一撃だ。


 だけど、遅い、鍛えた俺には遅すぎる。

 難なく避けていくと、ブレッドの息があがり始めた。


「はぁっ、はぁっ、チョコマカと、くそ。こんな絵まで俺様を馬鹿にしやがって」


 何て事を! イラつくブレッドが父様の肖像画を斬りやがった。


「ぶひひひっ、隙だらけだ《ショルダータックル》」


 ブレットの姿が、視界から消えた一瞬の出来事だった。

 俺は派手にふっ飛ばされ、壁に激突し動けなくなった。


「がはっ! ま、まだだ」


 鍛えていなくても、この威力か。


「おーおー、強がっちゃってよ。だが所詮、スキルのない奴はこんなものだ。ブヒッヒッヒッヒー」


「エイダン·イーグルよ。本日のこの時より、お前の貴族としての権限を全て剥奪する」


「どこへでも行くがいいさ。一般市民のエイダンちゃん。ブヒッヒッヒッヒー」


 こうして俺は貴族としての最後の命令を受け、すべてのものを失ったんだ。


 しかし、これをキッカケに俺の人生は、今までにない方向へ大きく舵を切っていた。

 才能なしで苦しんだ人生。それを脱却する、まさに大逆転の始まりだったんだ。


新作をスタートで、【悔しいですが】こちらより【好評】な作品です。



題名

スキルレベル1/神から始まる、従魔なしのテイマーくん~奇跡のユニークジョブなら、その支援効果と従魔が桁違い。最強種族でさえ、僕のチビッ子従魔には勝てないです。それでも追放なんですよね?


https://ncode.syosetu.com/n6479hm/


ぜひ読んでください。

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