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第六話 テイマー◆BUG 3





第六話 テイマー◆BUG 3




話し合うにも場所が必要。

ということで、モンスターがリポップする場所から離れた美都たちは今、森の入り口まで戻ってきていた。

そして、



「私、カナっていいます。それで、この子はキョロ」



美都の目の前でそう言って頭を下げる少女ーーカナは未だ暴れる鳥のモンスターを抱き締めながら話を続ける。


「森の入り口前までは一緒にいたんです。でも、キョロが途中で虫のモンスターを追いかけていっちゃって」


カナはそう言って、ちょっと怒った顔でキョロに視線を落とすも、当の本人たるキョロは以前と落ち着きない様子でジタバタしており、



「その、本当にごめんなさい!」

「あ、いや、大丈夫だからね。こっちは何もされてないから」



謝るカナにそう返す美都。

本音を言えば、こっちが先に攻撃している分も含めて、謝りたい気持ちで一杯なのだが、


『美都』


するとその時、内心からヒトミの声が聞こえ、


(あ……うん、わかってる)


美都は少し前にヒトミに聞いて欲しいと頼まれていた事を思い出し、目の前にいるカナに向けて、やや控えめに尋ねた。


「あ、それで……ちょっと気になったんだけど、貴女はどうしてこんな場所まで来たの? それも一人で」


本来、この森に入るプレイヤーは基本二人組や三人組とパーティーを組んでから入ることが多い。

というのも、この森に出るモンスターたちは毒やら痺れなどといった特殊攻撃持ちが多く、一度倒れたならばモンスターたちの袋叩きに合う羽目になってしまうからだった。

とはいえ、


「はい。……その、い、一緒にパーティーを組む人が見つけられなくて」


ぼっち、人見知り、などプレイヤーにとってはパーティーを組む自体が難問であるのだが、


『美都と一緒ね』

(……ほっといてくれるかな?)


一体どこの誰かさんのおかげで先行しなくてならなくなったのかな? と眉をピクピクさせながら内心で訴える美都。

そんな彼女の様子に首を傾げるカナだが、


「……でも、このゲームはずっと前からやってみたかったゲームで」

「ずっと前から?」

「はい。あ、でも……その、年齢制限に引っかかって、最近やっとできる年齢になったので」


年齢制限を満たす年齢になった時。

そして、やりたかったゲームができるようになった時。

その時の記憶を思い出しながら、カナは小さく笑いつつキョロを撫で、



「……可愛いモンスターと一緒に旅するのが、私の夢だったんです」



夢叶った今に、カナは満足そうな表情を浮かばせていた。




「…………」




夢だった。

そう言ったカナを見つめる美都は、その内心で、凄いなぁ、と思った。

それは何も特別大きな感嘆をしたわけではなく、ゲームにしろ、夢にしろ、何かをやりたいと、素直に言える。

そんな気持ちを持てていることに美都は感心していたのだ。


……何故なら、自分に何もない、ということを自覚していたから……。

ーーーーすると、そんな中で、




『……フレンドになってみたら?』

(え……?)




深く考えこみかけた美都。

そんな彼女を引き上げるように、ヒトミは美都にそう言葉を投げ掛けた。

そして、一瞬思考が固まった彼女が何かを言う前に、


『大丈夫、この子は嘘は言ってないだろうから。それに何も全部話さなくちゃならないって事もないのよ? だって、これはゲームなんだし』


ヒトミは早口目な言葉で先に美都の言い訳しそうな言葉を黙らせた。

そのため、内心でアタフタする彼女だが、


(え、でも、なんで、そんな、わか)

『嘘ついるかもしれないって? 思ってもないくせに、まったく。後! 私がどれだけ人を見てきたと思ってるの?』


ヒトミは急かすように言葉を繋いでいき、


『ほら、オドオドしない』

(別にオドオドなんかしてないよっ!?)


美都はもう若干ヤケにながら、カナに向けて、その紡いでいた唇をゆっくりと開いた。


「…………ね、ねぇ」

「はい?」

「そ、その。なんだけど…………も、もし、よかったらなんだけど」


その落ち着き具合から、どちらが年上かもわからない、オドオドしていた。

だが、それでも美都は、


「わ、私と。ふ……フレンドになってみない?」

「…………ぇ」


ーーーーーー美都の言葉の後に、漂う沈黙。

や、やらかした……っ! と顔を下に向ける美都は、その一瞬で顔一面が熱を持つかのように赤くなるのが自分でも理解できていた。

そして、すぐさま言い直そうとした。

その時、



「ほ、本当に………いいんですか?」

「え……」



カナもまた顔を伏せた状態で、戸惑ったような声を出していた。


「私、まだ始めたばかりで…………その、弱くて」

「そ、そんなこと言ったら、私もそうだよ。私なんて、まだ始めて二回目だし」


共に控えめな性格もあって、互いに気を遣う。

そんな二人は同じタイミングで顔を上げ、そして、しばらく見つめ合ったのちに、自然と笑いが溢れ出ていた。

ーーーーそして、




「………ありがとうございます。その、よ、よろしくお願いします」

「うん。こちらこそ、よろしく」




こうして、どちらもぎこちなさが抜けないつつも。

初めてのゲームないでのフレンドができたのであった。





◆ ◆





ーーーーその場所は、始まりの街から次の街。

その先にある森林エリアの奥地だった。


「おい、本当にここにレアモンスターがいるって言うのか?」

「ああ、間違いないってよ」


茂みの多いその獣道を歩く三人パーティーの男性プレイヤーたちは、ここに来る前はな聞いたある噂の頼りにこの場所までやって来ていた。

狙いは噂となっているレアモンスターのドロップアイテム。


それを手に新しい防具や武器を作りたい。

そう彼らは思っていた。



ーーーーだが、



「ああ、なんでも、ここに出てく、りゅっーーー



三人の内、後ろに控えていた男の声が途中で消えた。

残りの二人はすぐさま振り返り、武器を構える。

しかし、



「おい! どうしーーー



振り返ったと同時に、今度は前を歩いていた男の声が消えた。

残された一人の男は慌てふためきながら周囲を見渡し、恐怖で体を震わせる。


「ど、ど、どうなってんだよっ!? おい、ぉ、お前らっ!!」


仲間が一瞬でいなくなった事に、怯える男。

そして、遅れて自分たちがパーティーを組んでいた事を思い出し、視界端にある仲間のライフメーターを見た。


ーーーーだが、



「ぇ」



そこにあったのはロストマークのついた仲間の名前があり、そして、その見上げた先で、



「ひっーー



男が見たのは、既に眼前まで迫っていた鋭い牙が生えそろった大口。

そして、




「いやだ、やめ!? やめっーーーーぎゃぐぎぁああああああああああ!!!!!」





ロストしてセーブ地点へと戻ってきた三人プレイヤーたちは、それ以降再び外へと出る事はせずーーーーゲームを辞めてしまったのだった。






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