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第十八話 見据える者 1


第十八話 見据える者 1


刀を抜き、その場に驚き尻込むダレンを見据えるヒトミ。

一瞬の出来事に対し、その場に緊迫とした空気が漂った。


「お、おい、っ! 冗談だろ? こ、ここは戦闘禁止区域内なんだぞっ!?」

「そうね、外とは違うからダメージなんて、特定の条件じゃなければ入らないでしょうね」


その言葉の通り、このジェルダクタスオンラインにおいて、街といった戦闘区域外でのプレイヤーキル基本、ダメージが通らず無効にされてしまう。

だが、特定の条件において無効となるダメージが有効となることがある。

それは、ヒトミが以前、広場で見せた腕試し等といったイベント等が該当とされる。


「なっ、ならッ!」

「まぁ………でも」


しかし、今回においてはそういった該当に分類されたものではない。

だから、従ってダメージなど通るはずがない。

そうーーーそのはずなのに。


「ひッ!?」


ダレンは、その刀に。

いや、ヒトミに恐怖していた。

それはモンスターと対峙した時に感じる緊迫ではない。

まるでバーチャルではない、リアル。本物を向けられているかのような恐怖感を感じていたのだ。

そして、ヒトミもまた、まるでゲーム上の決められたルールすら気にしていない様子で、言葉を紡ぎ、



「それも試してみれば、わかることよ」



腕を振り上げ、刀を振り下ろす。

そして、空気は切り裂かれ、ダレンの体を真っ二つとなる。



ーーーそう、なろうとした、時だった。



「ヒカルなら、崖上エリアにいるはずだ」



背後から、その言葉が出たと同時にヒトミの動きが止まった。

ダレンの頭、後数ミリで接触する寸前で、振り下ろす刃を止めたのだ。

そして、ヒトミはゆっくりと刀を下ろし、後ろにいた男。

鍛治ギルド長のダイアンに振り返る。


「団長っ!!」


ヒトミに斬られそうになったダレンは歓喜の声をあげる。

だが、対するダイアンは気にする素振りすら見せず、ヒトミの隣に立つ、コノハに小さなオブジェクトを投げつけ、


「これに詳細の地点を記しておいた。お前なら追跡出来るだろ?」


コノハはアタフタとそれを何とかキャッチする。

そして、突然投げられた事にコノハは声を出そうとしたが、それよりも早く、ヒトミはダイアンの前に立ち、その顔を睨みつける。

そして、歯を噛み締めた後に、ヒトミは怒りの籠った声で言ったのだ。



「人のことをコソコソ嗅ぎ回ってる暇があるなら、自分のシマぐらいちゃんと管理しときなさいよ!」

「………」



その言葉に対し、周囲にいたプレイヤーたちが困惑した表情を浮かべる。だが、対するヒトミは言い終えた後、直ぐさま、コノハの襟首を掴み、


「コノハ、案内して!!」

「っえ!? ちょっ、まっ!?!?」


有無言わせず、走り去り、その場を後にした。


◆ ◆


ヒトミたちが去ったことで、緊迫していた空気が抜け、その場に通常の空気に戻る中、


「はぁ……」


ダイアンもまた、ヒトミたちが去った事にした対して、大きな溜め息を漏らしていた。

すると、入れ替わるように、さっきまで尻込んでいたダレンが立ち上がり、近寄ってきた。


「助かりました! 団長!」

「ああ、そうだな」


そして、ダイアンに感謝の言葉を言った後、ダレンは走り去っていたヒトミたちを恨むように睨みつけ、


「アイツ、よくも! 掲示板に通報して、レッドプレイヤーリストに登録させてやるッ!」


そう、言葉を口走った。

ジェルダクタスオンラインにおいて、プレイヤーキルといった行為をすると、プレイヤーアイコンに『黒』といった特定の色分けが自動的に記されるようになり、またそういった予備軍プレイヤーなどに対しては『赤』の色分けが記される。


そして、黒とは違い、赤の場合。

予備軍の区別は、掲示板、行動記録、ゲームマスターの監査をへて決まり、それをつけられた者はゲームのシナリオ、またコミュニティにおいても支障となる。

だからこそ、そういった規制が掛からないようプレイするプレイヤーがほとんどだった。


だが、ヒトミが行った、戦闘区域外での武器使用行為は、厳しくも『赤』に該当する行為でもあった。


「……そうだな」


ダイアンはその言葉を肯定するように、相槌を打ち、指先を動かしながら小さなウィンドウを操作する。

そして、開かれたそれをダレンの目の前で展開させ、




「だが、赤以上に。黒になるのはアイツらじゃない………お前たちのほうだ」

「…………は?」



ダイアンは一本の録画映像をダレンに見せた。

手元にあるそのウィンドウには、数分前までに、ここで起きていたヒカルとの会話がしっかりと映し出されていた。

そして、それと同時に崖上でのヒカルが捕まっていた現状までもが映し出されいた。


「な、なんっ!?」

「ここまで証拠がある以上、もう言い逃れはできないだろう」


ダレンの狼狽える姿を呆れた様子で見据えるダイアン。

対するダレンは顔を青白くさせ、慌てた様子で声を振るわせ、


「とっ、盗撮だっ!! こんなの、違法じゃ」


反論の意を唱えようとした。

だが、


「まぁ、普通なら、そうだろうな」


ダイアンはそう言って、もう一つのウィンドウを見せる。

それは、プレイヤーネームの頭に記されたひし形のアイコンであり、アイコンをタップすることで表示される。

特定の特殊アイコンに対し、ダレンの言葉がそこで凍った。


「だが、俺がやる分なら。それは違法じゃねえんだよ」


そのアイコンはこのゲーム上では誰もが知っている物だ。

何故なら公式が堂々と宣言しているものだったからだ。


ーーーそして、それは。

ゲームにおいて監査をする者のみが持つことができる、ゲームマスターを示す特殊アイコン。


「まぉ、というわけで、だ」

「あ……ぁぁ」


ダイアンはダレン肩に手を置き、顔を耳元に近づける。

そして、周りには聞こえない、低く、地声とも取れる声で、彼は言う。



「詳しい話はあっちで聞こうか、若造」



ーーそして、三人の内の一人がゲームマスターの手によって落ちたのだった。



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