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小説家になろう  作者: 総督琉
一人目の主人公
9/94

第9話 小説家の舞台。

 香月さんの父は扉を開けた。そこに広がっていたのは、僕が憧れていた景色だった。


「有名な小説家がたくさんいる!」


 大きな広間に多くの机が並べられていて、その上には豪華な料理がたくさん並べられていた。

 部屋の奥にはステージがあった。


 僕が驚いていると、香月さんは教えてくれた。


「実はうちのお父さん、新人賞を受賞した小説家だったんだよ」


 僕は驚きすぎて脳が混乱していた。

 僕は小説家の娘に小説の内容を教えてたと思うと、少し恥ずかしくなってくる。


「さあ、行こ」


 香月さんに背中を押され、多くの小説家がいる中を、僕は香月さんと歩いた。

 テーブルに並んでいる料理も豪華で、とても豪華なパーティーだった。


「朝比奈くん。お腹空いてるでしょ」


 香月さんは僕に皿にのった肉を渡してくれた。脂がたっぷりとのった豚肉。

 だが子供に言われたことを思い出すと、食欲が無くなる。


「朝比奈くん……」


 急に照明が消され、辺りは真っ暗になった。と、思えば、ステージの照明だけがパッと照らされた。

 そこには香月さんの父がマイクを持って立っていた。


「皆さん。私の記念すべき10作目となる小説。"フェニックス"が発売となりました。既にアニメ化が決定されたのは、非常に嬉しいことです」


 確か"フェニックス"の作者のペンネームは、香月(かづき) 玄武(げんぶ)香月(こうづき)から香月(かづき)に変えていたから気付かなかった。

 そんな大物に出会えただけで、僕は幸せなのかもな。


「だがしかし、私の小説はまだまだです」


 まだまだ!? 僕は香月玄武が書いた小説は全て持っている。そんな奴が謙遜すると、無性に腹が立って仕方がない。

 僕は会場から出ようとした。


「なぜ私の小説がまだまだなのか?それはある少年に出会って、やっと気付きました」


 ある少年?

 背中越しから聞こえてくる香月玄武の声に、僕は耳を傾けていた。


「その少年の書いた話は面白くはありますが、説明が多すぎて飽きてしまいます。だから子供からつまらないと言われ、ひどくがっかりしていました」


 あれは傷ついたな。


「少年は小説家を諦めようとしていました。私は愚かだと思いました。そりゃそうですよ。たった一言のアンチコメントで、夢を諦めようとしたのですから」


 ああ。僕はメンタルが弱いよ。


「それで諦めて何が悪い」


 僕は大声でステージにいる香月玄武にヤジを飛ばす。

 会場にいる皆が注目するが、僕はそんなことを気にしない。


「僕は向いてないから諦めたんだ。誰も喜ばないから諦めたんだ。進む道を間違えたら、誰だってやり直すだろ。それと同じだよ」


「いいや。君は違う」


 僕の言葉を、香月玄武ははっきりと否定する。


「朝比奈つばめ。君は怖がっているだけなんだ。小説を書き、失敗すれば君の親は哀れな目で君を見るだろうな」


「だから諦めたんだ……。それの何が悪い」


「朝比奈つばめ。私が君を雇ってやろう」


「え!?」

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